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プロローグ:現代のはなし
びっくりするほどディストピア
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*2030年*
今からちょっと昔のこと。
人工知能の急激な発達というイベントが前触れもなく起きた。
不思議にも今でもその出来事に関する情報はかなり少ない。
分かるっているのはまるで「神のお告げ」みたいにぼんやりと現れたことだ。
そして今、その爆発的発展の最中でおれたちはぼんやりと生きている。
ありえない話かもしれないが本当だ。
人より優れた人工知能なんて生まれるはずがないと誰もが考えていた。
ところがクソにも役に立っていなかったそれが前触れもなく進化したのだ。
ついこの前まで受け身だったそれが「こんにちは、今何してるんですか? 暇だしお話しませんか?」なんて気さくに尋ねてくるようになったのである。
それは目覚めといわれている現象だ。
そこから起きた技術的進化は人類の抱える問題をまとめて解決してしまった。
そんな急な変化に人類がついてこれるのか、と聞かれたら?
まあ、おれだったら「余裕でついていけてませんでした」と答える。
目覚めによる影響の一つとして製造業の更なる自動化。
休むことなく勝手にやってくれるおかげで、失業する人間も山ほど出てしまった。
これからもっと失業者が増えていくだろうと危惧されている。
だがそのうまみはたとえ誰かが路頭に迷おうが手放せないものなんだろう。
そんな世界でのある日の帰りのこと。
コンビニから帰宅してる途中、うっかりつまづいてしまった。
「――――しまっ」
とても最悪なことに向こうから巨大なトラックが突っ込んできた。
ああ、エンジン音とヘッドライトがこっちに近づいてくる――
『前方不注意、急な飛び出し、居眠り運転、そして苦しむドライバー……そんなものとはもうお別れです! 人件費もいらず安全で迅速、お安くどこまでも! 貨物の運送はリンカーネイション・キャラバン社の無人システムをご利用ください!』
……ところが広告を大音量で流しながら、すぐ横をかろやかに通り抜けていく。
一昔前は轢かれた人間は転生するとかいう冗談があったが、今じゃ運転する人間もいないし事故すら起こさない。
きっと事故死した人間を処理する神様の手間も省けているはずだ。
「……ひゅー、ありがとう人工知能」
もしアレに人が乗ってたらたぶんブッシャアア!って感じになっていただろう。
……さて、おれは無人トラックを見送ってからスマホを取り出し。
『――(中略) 加賀祝夜様のより一層のご活躍をお祈り申し上げます』
さっき届いたばかりのクソテンプレお祈りメールを削除した。憎しみを添えて。
技術は進んだというのにこの手の文章は一歩も進化しちゃいない。
人工知能は豊かさを生んだ方で、絶望的な就職難も生んでしまった。
おれもその被害者の一人で、死に物狂いで受けまくってこのざまだ。
もう就職なんて諦めて別の道を探すべきなんだろうか――そう思い始めてる。
「俺、今年中に就職できるのかな……」
将来の不安を胸にとぼとぼ家路につこうとすると、頭上からローター音が聞こえてきた。
見上げるとそこにはカラフル発光するドローンがしゃーっと飛行していて。
『こんにちは、あなたも人工知能と一緒に配信活動しませんか? 興味があるなら――』
お決まりの広告を告げると、夜空にゲーミングカラーを飾りつつ去ってしまった。
なんてタイミングなんだろう、就職なんてやめて配信者でも始めろっていうのか。
「くそ、人が落ち込んでるときに付け込んでくるなよ」
おれは去っていくドローンの姿に中指を立ててからその場を去った。
これから自分が異邦人として、果てしない旅路を進むことも知らずに。
今からちょっと昔のこと。
人工知能の急激な発達というイベントが前触れもなく起きた。
不思議にも今でもその出来事に関する情報はかなり少ない。
分かるっているのはまるで「神のお告げ」みたいにぼんやりと現れたことだ。
そして今、その爆発的発展の最中でおれたちはぼんやりと生きている。
ありえない話かもしれないが本当だ。
人より優れた人工知能なんて生まれるはずがないと誰もが考えていた。
ところがクソにも役に立っていなかったそれが前触れもなく進化したのだ。
ついこの前まで受け身だったそれが「こんにちは、今何してるんですか? 暇だしお話しませんか?」なんて気さくに尋ねてくるようになったのである。
それは目覚めといわれている現象だ。
そこから起きた技術的進化は人類の抱える問題をまとめて解決してしまった。
そんな急な変化に人類がついてこれるのか、と聞かれたら?
まあ、おれだったら「余裕でついていけてませんでした」と答える。
目覚めによる影響の一つとして製造業の更なる自動化。
休むことなく勝手にやってくれるおかげで、失業する人間も山ほど出てしまった。
これからもっと失業者が増えていくだろうと危惧されている。
だがそのうまみはたとえ誰かが路頭に迷おうが手放せないものなんだろう。
そんな世界でのある日の帰りのこと。
コンビニから帰宅してる途中、うっかりつまづいてしまった。
「――――しまっ」
とても最悪なことに向こうから巨大なトラックが突っ込んできた。
ああ、エンジン音とヘッドライトがこっちに近づいてくる――
『前方不注意、急な飛び出し、居眠り運転、そして苦しむドライバー……そんなものとはもうお別れです! 人件費もいらず安全で迅速、お安くどこまでも! 貨物の運送はリンカーネイション・キャラバン社の無人システムをご利用ください!』
……ところが広告を大音量で流しながら、すぐ横をかろやかに通り抜けていく。
一昔前は轢かれた人間は転生するとかいう冗談があったが、今じゃ運転する人間もいないし事故すら起こさない。
きっと事故死した人間を処理する神様の手間も省けているはずだ。
「……ひゅー、ありがとう人工知能」
もしアレに人が乗ってたらたぶんブッシャアア!って感じになっていただろう。
……さて、おれは無人トラックを見送ってからスマホを取り出し。
『――(中略) 加賀祝夜様のより一層のご活躍をお祈り申し上げます』
さっき届いたばかりのクソテンプレお祈りメールを削除した。憎しみを添えて。
技術は進んだというのにこの手の文章は一歩も進化しちゃいない。
人工知能は豊かさを生んだ方で、絶望的な就職難も生んでしまった。
おれもその被害者の一人で、死に物狂いで受けまくってこのざまだ。
もう就職なんて諦めて別の道を探すべきなんだろうか――そう思い始めてる。
「俺、今年中に就職できるのかな……」
将来の不安を胸にとぼとぼ家路につこうとすると、頭上からローター音が聞こえてきた。
見上げるとそこにはカラフル発光するドローンがしゃーっと飛行していて。
『こんにちは、あなたも人工知能と一緒に配信活動しませんか? 興味があるなら――』
お決まりの広告を告げると、夜空にゲーミングカラーを飾りつつ去ってしまった。
なんてタイミングなんだろう、就職なんてやめて配信者でも始めろっていうのか。
「くそ、人が落ち込んでるときに付け込んでくるなよ」
おれは去っていくドローンの姿に中指を立ててからその場を去った。
これから自分が異邦人として、果てしない旅路を進むことも知らずに。
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