かわいいあやかしと残念強いお兄さん

ウィル・テネブリス

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こんにちは、赤いお狐様

ようこそ、あやかしの街。

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 鳥居を超え神社を離れ、揺れる赤毛の尻尾をたどる。
 はたから見てしまえば珍妙なやつの(デカくて揺れる)尻を追いかけてどんどん森の深みにハマっていく遭難者への道筋かもしれない。
 けれども、こいつの言ってることは本当だと思った。

「~♡ ――♪ ~♡ ――♪」

 道を示してくれる狐耳のお兄さんはなぜだかご機嫌だ。
 着物越しに浮かぶきゅっとした身体の曲線と重たげに揺れる下半身がどうしても目に入るが、男とは思えない鮮やかな鼻歌がずっと聞こえる。
 だが、今までと明らかに風景が違う。深いモミジの茜色に挟まれた道がまっすぐ続いてるのだ。

「……なあシズク? 俺たちどこに向かってるんだ?」

 まるで誰かが踏みならしたような、落ち葉のかかった道の上で思わず尋ねる。
 主成分は人の世をますます離れてくような不安だ。こんな人里からシャットアウトされた森の奥で人の作った道が続いてるんだぞ?
 そんな物言いを敏感に感じ取ったのか、先行くシズクの耳がピクっとして。

「心配しなくても大丈夫。山奥に妖怪たちが集う場所があって、ボクたちはそこに向かってるんだよ」

 大きな着物姿が艶のある尻尾と一緒にくるりと翻る。
 美人な顔立ちがとても嬉しそうだ。俺はたぶん、こんなにきれいな笑みを浮かべるやつを人生で初めて目にしたと思う。
 だが男だ。気を抜けば美女と間違えそうなほどの……なんかこう、オーラがある。

「モンスターハウスにご招待する割にはずいぶん嬉しそうだな、捕まえて食ったりはしないよな?」

 だからこそ本能的に警戒心も生まれる。
 こいつがマジモンのバケモンだとして、人をだまして変なところに連れ去り頭からばりばりむしゃむしゃ食らう可能性だってある。
 その時はまあ物理で抵抗するが。ところがシズクは頬を小さくむすっとさせ。

「もー、そんなことしないよ? だってキミはボクの恩人なんだよ?」

 こっちに距離感を縮めてきた。具体的に言えば仲良く隣歩きだ。
 しかも手を出してきた。握って欲しいらしい。
 不覚にも少しドキっとしてしまう。なんなん?と見上げれば、お次は親しみいっぱいの表情がこっちを見てて。

「……だから食べたりなんかしないからね? キミともうちょっと、仲良くなりたいなーって?」

 現代社会がどこかに忘れてしまったような、超純粋な笑顔が浮かんだ。
 妙に色っぽい声のせいで脳の認識がバグる。というか眩しすぎて俺の闇が消滅しそうだ。

「お友達からスタートってことか?」
「うんっ♡ ……ダメかな?」
「24歳ニートで良ければ」
「えっと……就職、がんばろっか? な、何か事情があってお仕事がないんだよね、キミ……?」

 ということでさっそくお友達になった。身の上の説明込みで手を握る。
 しかし手が重なるとふわっと柔らかい肉の肌触りを感じた。
 じんわり温かくて、指が「もう離さない」とばかりに硬めに包んで。

「ん……みさごくん、大丈夫? 手がすごく冷えてるよ……? 寒くない?」

 隣を歩くシズクが心配そうに伺ってきた。表現豊かな顔立ちは本気で人の体調を気遣ってくれてる。

「そりゃずっと秋の山で遭難してたからな」
「この季節は冷えるんだから、ちゃんと手袋とかしようね? 風邪ひいちゃうよ?」
「軍手あるしいいやって思ってた。山舐めてごめんなさい」
「ダメだよ、手が冷えると体調不良につながるんだから? ふふっ、そんな悪いキミにはこうだー♡」

 背丈とお尻の大きさに恵まれたお兄さんの温かさにあやかってると、今度は手を持ってかれた。
 大切そうに掴んでた24歳ニートの手をそっと引っ張り、着物越しの胸元へと当てられる――やわらかい!?
 男とはいえいきなりそんなことされて思わず顔色を伺うも、おっきい狐様はとても楽し気なもんで。

「たどり着くまでボクがあっためてあげる。助けてくれたお礼だよ~?」

 ちょっと子供っぽさのある、それはもう可愛らしい笑顔で人の手のひらを温めはじめた。
 じわじわ熱が行き渡る。いやそれにしたって、なんなんだこいつは。
 男なのは確かなのに、そうは感じさせない魔力的なものがある。そういう気があるような奴が襲いかねないほどの何かが。

「……あの、ちょっと、距離近いです」

 現に俺も何か当たったんだと思う。直視できなくて顔をそらしてしまう。
 このままだとなんか目覚める。こいつはやばいぞ、魔性の男だ。

「……ご、ごめんね……? 嬉しくてつい、ボクだけ盛り上がっちゃって……」

 ところがそうすると今度は手から力が抜けた。見直せばしゅん、と伏せた耳もろとも切ない表情がそこに。
 そして沈黙の行進が始まる。胸の柔らかさが離れたかわりにシズクはしょんぼり手を引いてくる。
 分かったよ握ってればいいんだろ。申し訳ないので逆にぎゅっとすると、今度はぴこっと耳が立った。

「なんていうかにぎやかだなお前。誰に対してもそうなのか?」
「あっ……ううん、別にそういうわけじゃないんだけど。なんだかキミと話してると、すごく楽しいんだ」
「そんな喋ってないだろ俺」
「えーと……なんていえばいいのかな? その、ボクを見ておかしいと思わない?」
「ああ、狐の耳と尻尾が生えてるな」
「んん、そうじゃなくてね……? ほら、君より背がおっきかったり、なんだか男らしくないとか、気にならないの?」

 ざっざっざ。砂利道を歩きながらも、隣の狐のお兄さんは尋ねてくる。
 確かに背は俺より大きいし人を狂わす謎の色気があるものの、現時点では親切にしてくれる奴にしか見えないな。
 こいつは気にしてるんだろうか? でも俺は気にしない、24年間の悲惨な人生の賜物だ。

「全然? それに人を差別するときは見た目じゃなくそいつの心にしとけってのが俺の信条だ」

 心配そうな顔つきになってたのでぶんぶん手を上下させた。
 引っ張られたシズクは最初はきょとん、としてたものの。

「…………ふふっ♡ キミってやっぱり変わった人間くんだね。そう言われてすごく嬉しいよ、みさごくん」

 また手をぎゅっとされた。よっぽどのことがない限り離しませんとばかりの包容力だ。
 今日は日だな。遭難して変なやつを助けて、そいつが人外でどこかに連れ去られてるんだぞ?
 でも不思議と俺も楽しくなってきた。
 二人で進む秋の道にはいつのまにか、子供の頃に置き忘れた未知への期待感があったからだ。
 それに親切な妖怪がいる。24年ものひどい人生だったけど、手元には心地よい温かさがある。

「……それにしても妖怪か。世知辛い現代社会なのにほんとにいたんだな」
「驚かないんだね、みさごくんって。肝が据わってるなあ……」
「色々あったんだよ。まあそれに、こうして親切にしてくれる方がいるんだ。妖怪ってのはいい奴だと思ってるところだ」
「あ、大丈夫だよ? キミたちの知ってるそれとは違って、意外と親切なひとたちでいっぱいだから……危ないのもいるけど」
「やべえと思ったら物理で抵抗するさ」
「キミがいうとなんだか本気で成し遂げそうだね……」
「山の寒さと怖さに勝る妖怪さんが出ないことを祈ろう」
「そうだ。里についたら何かごちそうしてあげるね? あたたかい茶とお菓子とかどうかな?」
「そりゃ助かる、お茶はカフェイン抜きのやつで頼む」

 俺は新しい友達と一緒に道を歩んだ。
 砂利道はやがて石畳に変わる。森の形は段々と変わって、秋のもみじの色に彩られながらも道なりを遠く遠く作っていた。



 進んで進んで、山奥の起伏は平たい土地に変わっていた。
 石の道はしっかりとした幅と奥行きを持ち始め、なんとその先に見えたのは巨大な鳥居だ。
 その大きさを言い表すなら、旅客機を突っ込ませてもどうにか通れるほど。
 赤と黒の名もなき門は「どうぞご自由に」とお客様を広く受け入れてる。

 相変わらず手を放してくれない狐耳のお兄さんに連れられてそこを通り抜ければ、今度は階段だ。
 作ったやつの正気を疑うほどの途方もない段を登れば、先ほど同様のクソデカ鳥居が待ち構えており。

「――いや里っていうか都じゃねーか」

 それをさらに超えた先、俺たちの目にはとんでもないものが映ってた。
 遠く見える山の高さを背景にしたまま、唐突に温泉街が広がっているのだ。
 神道的なつくりの混じった風情のある街並みは一体どういうことだろう。綺麗な赤をたずさえる山々に負けない明るさがある。
 流れる川の上に作られた観光地のような見てくれはどう考えたって非現実的だ。山奥にあり得ない存在が確かにあった。

「みてみてみさごくん、ここが妖怪の里だよ? すごいでしょー?」

 そんなぶっとんだ光景を前に、シズクは尻尾をふりふりしながら平然と近づく。

「すごいってレベルじゃないからな!? どこから現れたんだよこの街!?」
「ここってね、何百年もずっと栄えてるんだ! ボクについてきて!」

 異様な光景だが、俺の気持ちはいろいろだ。
 人里(妖怪だが)の姿がある嬉しさ、常識の範疇を超えた何かへの驚き、あと温かいお茶への期待感。
 母さん? 知らん、きっと生きてるはずだ。

「……あ、そうだった……」

 尻尾と大き目な尻を追いかけていくと、シズクはぴたっと止まる。
 そこそこの川が横切る街中の一歩手前というところだ。和風建築の建物が左に右に奥深くまで佇んでる。
 が、よく見ると川沿いに何か――連なる提灯に示された屋台がずらっと並んでた。
 そこになんだかいろいろな顔ぶれが行き交ってるようにも見えるが、そんな有様を前に。

「……祭りでもやってんのか?」
「うん、秋祭りの季節なんだ。ちょっと待っててねみさごくん、すぐ戻るから」
「どうしたんだ急に」
「いきなりキミが入ったら、みんなびっくりしちゃうでしょ?」

 そういってシズクはすたすたと街中へと入ってしまった。
 知らない場所に一人取り残されたわけだ。人の営みを前にして寒くて心細い。
 目で追いかける分には屋台のどこかに向かったらしいが、すぐにあいつは戻ってきて。

「は~いお待たせ。これつけて!」

 明るい顔でにっこり何かを突き出してきた。
 よくある狐のお面だ。環境的にそういう店から調達したんだろうか。

「俺もお祭り気分に浸れってことじゃなさそうだな」
「このお面を着ければ人間くんだってばれないんだ、外しちゃだめだよ?」
「なるほど、変装用か。でもこんなんで騙せるのか?」
「大丈夫だから信じて。それじゃ行こ? ちょっとびっくりするかもしれないけど、落ち着いてボクについてきてね?」

 さっそく被った。息苦しいが意外と前は良く見える。
 こうして祭りのムードにあやかってお面をかぶるなんて、考えてみれば生まれて初めてかもな。
 シズクはまた手を伸ばしてきた。掴んでついていくと、やがて妖怪の里とやらの中に俺たちは紛れてくわけだが。

「……うわあ」

 落ち着けとは言われたものの、ちょっと無理だと思った。
 近づいて分かったが人間の姿がないからだ。シズクみたいに獣の耳やらが生えてたりだとかそういうレベルじゃない。
 百鬼夜行だ。人っぽい姿はあれど、二足で歩く犬猫、骨ばかりの誰か、しまいには大きな蜘蛛やヘビといったものが浴衣姿で跋扈してる。

「やつらめどこへいった、はぐれてしまったではないか!」

 服に筋肉を浮かべる、角を生やした鬼(本職)がやたらでかいヤキトリ両手に彷徨ってるし。

「よおそこの兄ちゃんたち、俺の作った刀はいらないか? 刃はついてないよ」

 一つ目の職人気質な姿をしたおっちゃんが出店で刀を雑に売っていれば。

「なんかヨーロッパから来た奴ら多くない? せっかくの風情台無しなんだけど」
「仕方がありませんよ、外の者たちが来れる唯一の観光地なのですからな」

 ……浴衣をまとった長い耳のエルフっぽい男女が街をふらつき。

「ちょっとコンビニ行ってきますわ~!」
「おっ、降ろせ! 私は行かないぞォォォ!」

 ――そんな上空をとんがり帽子をかぶった魔女が箒で飛んでる。しがみつく喋る黒猫を添えて。
 温泉街に妖怪が和洋折衷という、なんだかカオスなお祭りだ。

「……和風な雰囲気なのに西洋も混じってないか?」
「外から来たゲストの方々も迎え入れてるからね。だからこんな風に賑わってるんだよ?」
「楽しい場所ですこと。つーか魔女とかエルフとかマジでいたんだな……」

 しかし慣れてしまえば案外楽しいもんだ。
 二人でそこまで入り込むと、お面の効果があるのかすぐに溶け込んだ。
 いろいろな外見に伴って無数の香りが漂ってくる。左右から感じる屋台に至っては美味しそうな香りすらして。

「おうシズクちゃん、あんたがお祭りに来るなんて珍しいじゃないかい?」

 歩き続けてしばらくしないうちに、横から声をかけられた。
 シズクを呼ぶそれは屋台からだった。
 店に記された良く分からない文字の下で、串にささった料理が温かく売られていて。

「こんにちは、カダラさん。ちょっといろいろあったんです……」

 そんな名前を告げる先で、とんでもないのが店を司っていた。

「なんだい、また自前の色気で野郎どもをたぶらかしたのかい?」

 2mはある巨体、こんな季節なのにへそを丸出しにした筋肉多めな姉ちゃんが売り物に手を加えてる。
 が――店越しに見える下半身は巨大な蛇だ。なんなら腕は左右に何本もあって、きりっと尖った良い顔には長い舌がちろちろ覗き。

「ち、ちがいます! えっと……この人にちょっと助けてもらって」
「じゃあお礼のデートってとこか、やっと彼氏ができたのかお前さん」
「かれっ……そうじゃなくて、口では言いづらいんですけど……」

 人間目線ではかなりヤバイ何かを感じる見た目だが、シズクはおろか周りは「いてあたりまえ」みたいに接してる。
 正直いってかなり恐ろしいが、シズクのもつれた口ぶりに腕を組んで良く話を聞いてる。
 なんだか俺と話すよりどぎまぎしてるなこいつ。代わりに説明してやろうか。

「三色の狐耳の奴らに襲われてたから助けた、それだけだ」

 言いづらそうな友達に変わってそう伝えた。
 すると一瞬、人間離れしたそれはぎろっとこっちを見る。しかし何かあったのか少しの間を置いて。

「まさかとは思うがあのチャラ男三人組かい、お前さん? あまつさえあいつら、シズクちゃんに手出したってことか?」

 屋台で調理中の何かに目もくれず、それでいて余った手でてきぱき適切に串をひっくり返しながらも尋ねてきた。
 蛇っぽい眼はキレ気味だ。縮こまるシズクを見れば青筋すら浮いていて。

「そこにお邪魔したら喧嘩売られたから野に帰ってもらった」

 そこへそう伝えて、俺はうまそうな料理を見やる。
 ワーオ。ダイナミックに焼かれたステーキや鶏肉、お好み焼き串があるぞ。
 しかし彼女は静かに怒りを整えてる。今すぐにでもあいつら探してボコすぞぐらいの勢いで。

「お前さんが妖狐三人に勝ったっていうのかい? なんの冗談だい」
「ちゃんとごめんなさいはさせたぞ」
「う、うん……そうなんです、この人がボクを助けてくれたんです、ちゃんとあの人たちにも謝らせて……」

 更に説明、シズクの言葉も加われば、店主は関心するような頷きをした。
 表情もだいぶ柔らかい。なんだったら店も黒く染まりかねない気迫も薄れて。

「大した奴じゃないかあんた、あのタチの悪いクソガキどもをやっつけたってかい?」

 ニヤっと頷いてくれた。信じてくれたらしいな。

「なんか術とか言いだしたからその隙に物理でこう……」
「やるじゃないかい、気に入った。シズクちゃん、そいつと末永くお幸せにな」
「ま、まだそういう関係じゃないです……! えっと、とにかく助けてくれたんです、そのお礼がしたくて……!?」
「いい相手に出会えたじゃないかい。よしあのクソガキどもはあとで私がしばいてやる、もう大丈夫だ」

 なんだか冗談の感じられない方面でのカップルとして認められてるが、まあいいか。
 いい笑顔の店主が俺たちを見てくるものの、シズクはあせあせしてる。
 横から見ると――なんでこいつ赤面してるんだろう。おいマジか、そういう趣のやつだったのかこいつ。

「あ、そうだ、みさごくん!? 何か食べたいものとかない!? ぼくがおごってあげるから好きな物選んでいいからね!?」

 挙句の果てにぐるぐる目で屋台の商品をさしてきた。おいしそうだ。
 肉と炭水化物のラインナップには値段もちゃんと表されてる。ちゃんと日本円だ。
 着物からこれまた現代的な財布を取り出す姿に、それじゃ何もらおうかと吟味すると。

「……しかし珍しいねえ、このご時世に人間かい」

 やっぱり気になるソースいっぱいのお好み焼き串300円に目をつける最中、俺たちにしか聞こえないボリュームが伝わる。
 はっと見上げればさっきと変わらぬ表情の店主だが、おいさっそくバレてんぞシズク。

「……バレないんじゃなかったのか」
「ば、バレちゃってるけど……この人は大丈夫だからね?」
「そんじょそこらの若いのにはバレないが、私たちみたいなベテランには見え見えさ。まあだからなんだって話だが」

 だが意外なことに「そうか人間か」みたいな態度だ。
 なるほど、ある程度理解してくれる妖怪もいるみたいだな。そうじゃない場合のことはあんまり考えたくないけれども。

「こういう時は「騒ぎを起こすつもりはありませんからどうぞよろしく」っていえばいいのか?」
「うちでは「これください」一択だ。別に食ってもヨモツヘグイにはならないから安心しな、そう言うのはもう古い」
「ヨモツヘグイってなんだ、病気かなんか?」
「そんなことも知らないのかい、これだから現代人は……」

 ヨモツヘグイってなんだろうか、とにかくシズクのおごりで何か頼むことにした。
 言われた通りに「これください」と串刺しお好み焼きをさせば。
 
「ああそうだ――あたしからのサービスだ。食う時は口だけ出して食いな、そうすりゃバレないさ」

 下半身ヘビの多腕女性はそっと串を渡してきた。
 熱々の関西フードだ、でかい。横ではシズクがフランクフルトをいただいている。

「ありがとう、ええと……」
「カダラ、フルネームがあるけど聞いたら呪われるよ」
「カダラさんか、ごちそうになります」
「ありがとうございます。ふふっ、おいしそうだなあ」
「この街にかわって言うが「ようこそ人間」だ、シズクちゃんと楽しんでおいで」

 ……遭難したはずがなんだかお祭りを楽しんでる気がする。
 気さくなカダラさんに見送られて、俺はシズクと一緒に温かい街の中に紛れていく。
 一口食べたお好み焼き串の味は、こんな状況もあってか言葉に出ないほどうまかった。

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