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本編
分かるまで何度でも
しおりを挟む「アリス?」
「……アリス嬢?」
二人が目を見開いて私を見てる。
理由は明白だ。私がバカみたいにボロ泣きしているから。
分かってる。分かってるのに、涙が止まらない。
「ごめ……でも、私……っ」
「アリス、どうしたんだ?……俺が泣かせてしまったのか?」
そう言って、マックスが心配そうに私の顔を覗き込む。
……違う。マックスのせいじゃない。
悪いのは全部全部この悪魔の…………
「すまない!悪かった、アリス嬢!」
―――は?
「流石にやり過ぎたようだ。マクシミリアンが絡むと、いつもの癖でついムキになってしまって…………泣くとは……思って、なかった。……本当に悪かった」
え。
ちょっと待って。
誰これ。本当にあの悪魔のレジナルド様??
それに、マックスが絡むとって、どゆこと?
「……詳しくは後日話そう。今は、俺が居ない方がいいだろうからな。マクシミリアン、アリス嬢を頼む」
「あ、ああ。分かった」
「……ああ、それと。俺とアリス嬢には共通の秘密なんて無い。さっきのは、俺のデタラメだ」
「デタラメ?」
「そうだ。俺が妙な事を言い出したから、アリス嬢は混乱してしまったのだろう」
「そう、なのか」
「ああ。…………本当にすまない。だから、早く泣き止んでくれ」
本当に急にどうしたのこの悪魔。
信じられない。謝っただけでなく、フォローまでするなんて。
なんか、本気で狼狽えてるっぽいし。
あ、レジナルド様が訓練場から出て行った。……まさかドSのクセに、女の涙に弱いなんて設定じゃないよね?涙目にさせられた事は前にもあったし、本当にどーゆう事??
そう考えていた私の思考は、次の瞬間、何も考えられなくなっていた。
未だ涙の止まらない私を、マックスが抱き締めたからだ。
?!
マックス?!
「……涙が止まらないのであれば、こうしておきましょう。嫌なら言って下さい。すぐに離れますから」
「い、嫌だなんて!全然、その、嫌じゃない……です」
「なら、良かった。……泣かせてしまってすみません」
「ま、マックスは悪くないです!」
「いえ、原因はレジーかもしれないが、実際に泣かせてしまったのは俺でしょう?」
「それは……」
「……教えて下さい。どうしてそんなに、涙が出るのか」
優しく抱き締められながら、目元をそっと指で拭われて。すぐ近くに、マックスの整った顔があって。
どうしよう。
頭が全然働かない。
「……マックス、に……」
「俺に……?」
「マックスに……誤解されたく、なかったの」
「誤解?」
「私、レジナルド様と親しくなんかない。マックスの方が親しい」
「……っ」
「マックスの方が好き。マックス、誤解しないで。私、やだよ。マックスと親しくなりたいのに」
そこまで言うと、マックスが私を抱き締める手に力を籠めた。私も、マックスの服をぎゅっと手で掴む。
恥ずかしいけど、何だか嬉しい。
「俺にレジーとの事を誤解されるのが、泣くほど嫌だったと……?」
「うん」
「レジーより、俺の方が、好き?」
「うん」
「…………………………」
「マックス……?」
マックスが急に黙り込むから、私は少し不安になって顔を上げた。すると、すぐに頭を押さえられて、見上げる事が出来なくなってしまった。一瞬だけ見えたマックスは、首から上が茹だったように真っ赤だった。
「…………アルに撤回しないといけないな。いや、でも……」
「え?」
「……なんでもないよ。アリス。そんな簡単に、男に好きって言っては駄目です」
「でも、好きだもの」
「……勘違いします」
「勘違い?……よく分からないけど、好きなものは好きだもの。こうしてるのも好き」
ちょっと頬ずりしてみたり。
すりすり。
「……っ?!や、止めて下さい。俺の理性が保てなくなる……っ」
「理性?」
「ああ、でも…………」
「マックス?」
「すみません。……やっぱり、その、もう一度言って下さい。アリスは俺の事、好きですか?」
どうしたんだろう?
信じてないのかな?確かに、まだ友達になって日も浅いし。
でも、こうゆうのに長い短いは関係ないよね。
恥ずかしいけど、ちゃんと分かってくれるまで何度でも言おう!
「うん。マックスが好き」
「本当に?」
「好き」
「……そんなに?」
「好き」
「ちょ、待って下さい。アリス?」
「大好き」
「アリス?!ま、待て!俺が悪かった!もう一度聞きたいなんて出来心で……」
「マックス、ちゃんと分かってくれた?分かるまで言うからね。好きって」
「~~~っ?!」
「マックス?」
「……アリス。もし俺以外に男の友達が出来たとしても、そんな風に好きって言っては駄目ですよ?」
「どうして?」
「男はバカなので、すぐに勘違いするからです」
「??」
「ちなみに、俺もバカです。……だから駄目ですよ」
「マックスにも、言っちゃ駄目なの?」
「ええ、駄目です。……いや、でも、たまになら…………いや、やっぱ駄目だ」
「マックス??」
「ああもう!俺は一体どうすれば……」
ちょ、マックス?さっきより更に手に力が籠ってるけど。
そんなにぎゅうぎゅうされると嬉しいけど、ちょっとドキドキし過ぎて苦しい。
マックスー?おーい?
「耐えろ、俺の理性。耐えてくれ……!」
もう涙止まってるけど……
ぎゅうぎゅうされるの嬉しいから、もう少し黙っとこうかな。くふふ。
* * *
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