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本編
天然たらしと悪魔の再来
しおりを挟むたーんれん♪たーんれん♪
マックスのきーんにく♪
今日はマックスの鍛練を見学させてもらう日なのです!!休日だから授業は休みだし、朝からいっぱい目の保養をさせていただきます!!
マックスは休日だと、普段魔法実習で使う所とは別の訓練場で鍛練しているらしい。あまり使用されていない訓練場で、ほぼ貸し切り状態だから他の人を気にする事なく鍛練出来るのだとか。
私にとっても好都合。あまり他の人には会いたくないしね。アルには昨日のうちに、朝から出掛けると言っておいたし。
普段着で来たけど、変じゃないだろうか?
シンプルな膝丈までのチュールワンピースで、上は白、スカート部分はパステルグリーンで見た目涼やか!最近少し暑くなってきたしね。私的に結構お気に入り。
……なんか、気合い入ってない?
いやいや、これはほら、侯爵令嬢として恥ずかしくない格好をしているだけだよ。
さてさて、マックスが言っていた訓練場はここかな?確かに雑草凄いな。あまり使われていないのがよく分かる。
あれー?マックスいなくない??
来るの早すぎたかな?
「アリス?」
「ひ、ぎゃっ?!」
「危ないっ!」
後ろから声を掛けられて、驚いた私は足元の石に躓いてバランスを崩してしまった。しかし、私に声を掛けた人物が逞しい腕で抱き止めてくれた為、転ばずに済んだのだが……
あまりにベタな転び方をしてしまって死ぬほど恥ずかしいっ!!
だけど、この逞しい腕は多分マックスだよね?
私は羞恥を堪えながら、恐らく真っ赤になっているだろう顔を上げた。
「……驚かせてすみません。大丈夫ですか?」
やはりマックスだった。
少し焦ったような顔で、心配そうに安否を訊いてくれる。
「だだだ大丈夫、です!私の方こそ、こんなベタな転び方しちゃって……」
「ベタな転び方??」
「ふ、普段はこんなドジっ子じゃないんです!ううう、恥ずかしい」
「っ!」
いやーいやー本当にびっくりしたっ!!まだ心臓が、心臓が痛いっ!!
穴があったら今すぐ入りたい!!
……あれ、なんだかマックスまで顔赤いね。私のが伝染したのかな?本当に申し訳ない。ごめん、マックス。
ああ、でもでも…………
「マックス」
「……どうかしましたか?」
「マックスの腕、逞しいですね……!」
「?!」
はううう!堪らんっ!!
抱き止めてくれたから、めっちゃ分かっちゃう!
なにこの安心感……?
あかん。これあかんやつ……!!
「す、すまない!!ついボーっとしてしまって……」
「全然大丈夫です!」
むしろ抜群の安定感と満足感!!
「怪我をせずに済んで良かった。この訓練場は荒れているから、地面は砂利だし割りと大きい石も……!俺の配慮が足りていませんでしたね。他の訓練場に移動しましょうか」
「え?!いえいえ、私が自分から見学したいとお願いしたんですから!気にせず鍛練を続けて下さい!」
「ですが……」
「大丈夫です!」
私が力一杯そう言うと、マックスは少しだけ口元を綻ばせてから、濃い赤紫色の……ボルドー色の瞳を細めた。
うぐっ。
何その表情!カッコイイ!!
「なら、せめて座れる所までお連れします。いいですか?」
「は、はい」
「では、失礼します」
「え」
?!
ちょ、お連れしますってお姫様抱っこ?!わ、私、歩けますけど?!
「マックス、あの……!」
「先程も言いましたが、この辺りの地面は荒れてますからね。すみませんが、少しだけ辛抱して下さい。アリスが怪我でもしたら、俺がアルに殺されてしまいます」
「で、でも……」
「誰も見てないから平気ですよ。ここには俺しかいませんから」
そーゆう問題?!
むしろマックスにお姫様抱っこされるって事に問題があると言うか……
しかし、マックスはさっさとお姫様抱っこで私を運んで行く。
この訓練場には所々に石で出来たベンチようなものが置いてあって、マックスは私をそのベンチにゆっくりと降ろしてくれた。
「石なので固いとは思いますが……」
「大丈夫です。その、ありがとう、マックス。重かったでしょ?」
「ふはっ。そんな訳ない。……軽すぎてびっくりしましたよ。それに、アリスを運べるなんて役得でした」
なっ?!天然たらし?!
くそぉ笑顔が眩しいっ
笑うと少し幼く見えて可愛いとか何なの?!萌えポイント多くない?!
「あまり面白いものでもないと思いますが、鍛練の続きをしますね。飽きたらいつでも言って下さい。寮まで送りますから」
「は、はい」
加えて紳士っ!!
みーこ、私は断然彼を推すよ!!
あのゲームの一番人気はフィリップ殿下らしいけど、私的にはマックスだなあ。一番の癒しはアルだけども、マックスはそれに匹敵するかも?友達になれて良かった!!
マックスは腰に携えていた剣を抜いて、素振りを始めた。ずっと同じ動作だけど飽きない。いくらでも見ていられる。マックスは鍛練用に動きやすそうな軽装で、防具はつけてないけど何だか勇者みたい。
……フィリップ殿下も逞しいと思ったけど、やはり本職は違いますな。
なんて事を考えながら、あまりの充実した時間に、私は油断していた。
学園に入学してから一度も会っていなかったのに。まさかこんな所であの悪魔に出会すとは夢にも思っていなかった。
「……お久しぶりですね、アリス嬢。まさかこんな所でお会い出来るとは思ってもみませんでしたよ」
騎士団長子息にして、フィリップ殿下の幼馴染。夜空のような髪に金色の瞳をした、レジナルド・ブルストロードがそこに居た。
* * *
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