【R18】ボロボロの“ぬいぐるみ”に転生したけど、騎士様に溺愛されてます!

はる乃

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本編

初めてのキス

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まさか、自分から男の人にキスをするだなんて。
だけど、これしか方法が思い付かなかった。形は全然違うけれど、いつも魔力は口から摂取していたし、マリアムさんも“食べればいい”って言っていたから。

「……っ」

クリストファー様が、苦しそうに眉根を寄せつつ、私の行動に驚いて瞳を見開いている。
まぁ、驚くよね。
というか、痴女だと言われてもおかしくない行動だわ。でも、クリストファー様は物凄いイケメンだし、きっとキスなんて初めてじゃないよね?私は今世初めてだけど……

覚えてないけど、もしかしたら前世でも経験なかったかも?
そんな私のファーストキスをあげちゃうんだから、許して欲しい。……いや、逆に何か申し訳ない?


そんな事を考えながらも、私は触れるだけのキスを、ちゅっ、ちゅっと繰り返す。

(は、恥ずかしい……これで合ってるのかな?)

本当に食べる方法はこれで合っているのか不安になる。
けれど、少しずつ、本当に少しずつだけれど、触れた唇からクリストファー様の魔力が流れ込んで来るのを感じて、私はこの方法が間違っていなかったのだと確信した。

「……くっ……」

クリストファー様はとても苦しそうで、端正な顔を歪めている。
額に汗が浮き出ている。こんなんじゃ駄目なんだ。もっともっと早く、魔力を吸収しなくちゃ。
でも……

(どうしよう。これ以上どうしたらいいのか分からない。どうしたら、もっと早く魔力を吸収できるの?)

気持ちばかりが焦り、最悪の結末を想像してしまう。
けれど、次の瞬間。

(……え?)

私の視界が勢いよく反転した。
そして、唇の間を割って私の口腔内に無理矢理侵入してきた何かが、熱く激しく中を蹂躙し始めたのだ。

「んぅぅっ?!」

それはクリストファー様の舌だった。
私の唇を、口腔内を、まるで獣のように貪り蹂躙する様は、最初に受けた穏やかで優しげな彼の印象からはかけ離れている。

(…どうして舌を入れるの?何だか、頭がぼうっとする……)

次第に訪れる、じわじわと甘く痺れるような不思議な感覚。

(だめ……気持ち、いい……)

舌を絡め取られ、吸われ、歯列をなぞられた後、上顎の内側を何度も舌でなぞられて、ゾクゾクと身体中に甘い快感が走り抜けていく。
触れるだけのキスの時よりも、魔力が沢山流れ込んできて、温かく心地が良い。まるでクリストファー様に抱き締められ、全身を包み込まれているかのよう。

「は、ぁ……♡ふ……んん♡」

何度も角度を変えて、飽きることなく続く、深く激しい濃厚な口付け。

(なに……?何だか、むずむずする……?お腹の奥が熱いし、何かが溢れてきてるような…?)

何故だか無性に、足を閉じて、太股を擦り合わせたい衝動に駆られる。
でも、私の両足の間にはクリストファー様がいるから、擦り合わせることができない。
クリストファー様の魔力を吸収しなきゃと思って私からキスをした時、馬乗りになるような形で組み敷いてしまったから。だから、体勢が反転してしまった今も、両足の間にはクリストファーがいて。身動きが取れないのだ。

(やっ……どうしよう?……これ、何?)

何かがトロリトロリと溢れてくる感覚。
力を入れたくても、気持ち良すぎる口付けのせいで、溢れてくる何かを止められない。

もしや、粗相してしまった?
どうしよう。恥ずかしくて堪らない。そして、何故なのか恥ずかしいと思えば思う程、余計にトロリとした何かが溢れてきてしまう。

顔が、身体が、沸騰してしまいそうな程に熱い。視界が滲んで、涙が出る。ぬいぐるみのままでは、絶対に感じられなかった熱さに戸惑っていると、クリストファー様が漸く唇を離してくれた。視界が滲んでいるのでハッキリとは見えないけれど、魔力が暴走寸前だった時に比べて、だいぶ顔色が良さそうに見える。

「はっ……はふ……」
「……ごめん、エマさん。だけど、もう少しだけ良いだろうか?」

じっと見つめてくる彼の瞳が、何故だか熱を帯びているように見える。
きっと気のせいだろう。
それか、本当に魔力を吸収してしまう私に感心してくれているのかもしれない。

こんな私でも、誰かの役に立てた。

それが嬉しくて、肯定のために頷いたのだけど、再び始まった口付けが、あまりに激しく情熱的で。

(頭、ふわふわ、する……)

これもマリアムさんから頼まれた仕事のひとつ。
そう思うのに、ぴちゃ♡、くちゅ♡、と聞こえてくる水音はやけに恥ずかしく感じてしまって。
何故だか逃げたいと思ってしまう。
けれど、いつの間にか私の両手にはクリストファー様の指が絡められていて、しっかりと握られている。

(クリストファー、さま……)

ドキドキと高鳴る鼓動。
元がぬいぐるみである私には、人の形になっている今も、本物の心臓は無い。

けれど、確かに高鳴る鼓動を感じて、自分が前世と同じ本当の人間になったかのような錯覚に覚える。


――次第に甘さを増していくキスは、いつまでも終わらなくて。

キスを始めた頃は、まだ随分と明るかったはずなのに。気付けば、差し込む陽の光が随分と傾いてしまっていた。



* * *
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