悪役令嬢は双子の淫魔と攻略対象者に溺愛される

はる乃

文字の大きさ
上 下
104 / 113
旧ver(※書籍化本編の続きではありません)

幸せの形㉔やや★

しおりを挟む

――あの後、私は皆に食べられた。

フィルとナハトに限界まで、下手したらそれ以上貪られて。やっと終わったと思ったら、今度はルカ先生とアスモデウスに。…そうして、食べ尽くされた私から、必要以上に増えていた淫魔の力は、全て吸い尽くされた。

「…リア…」

耳に届く、優しい声音。…エリック様。
次いで、ジルとアベル、レオンにも名前を呼ばれて、あの日を思い出した。私の魔力が枯渇し、飢餓状態になってしまった時のことを。
指一本動かすことさえ出来ない身体に、じんわりと広がっていく、甘やかな快楽。よく知っている精気の味。
瞼を上げることさえ億劫で。だけど、決して離れたくなくて。

「傍に…」

必死に言葉を紡げば、より一層快楽が強くなった。怠くて動かせない身体が、次第にビクビクと反応するようになって、背中が仰け反り、堪らずに腰を揺らめかせる。

「……あぁっ♡♡」

横になっていた筈の身体が宙に浮き、誰かに持ち上げられたのだと分かった。そして、身体中にゾクゾクとした衝撃と快楽が走り抜ける。

「リア、気持ち良い?意識が朦朧としていても、リアの舌のお口は欲しがりなままだね」
「…後ろの蜜穴も、とても気持ちが良いですよ」
「ヴィクトリアの身体は、いつ見ても綺麗だ」
「同感だ。…それに柔らかくて、温かくて、堪らない」

前と後ろ、二つの蜜穴に太くて硬い熱杭を穿たれて、身体中を余すことなく丁寧に愛撫していく大きな手と唇、そしてピンと勃ち上がってしまっている双丘を揉みしだき、その頂を捏ね繰り回す指と舌。気持ち良過ぎて、何も考えられない。目を瞑ったままだからなのか、いつもより敏感に反応し、恥ずかしい程に蜜を溢れさせてしまう。絶妙なタイミングで抽挿され、堪らない快楽に抗えず、時間をかけてゆっくりと絶頂へ導かれる。そうして、私が達し、挿入していたエリック様とジルもそれぞれ達すると、今度はアベルとレオンが挿入する側へ交代する。やがて、四人での責めが落ち着くと、今度は二人ずつであったり、一人であったりと、責め方を変えながら彼らは私に精気を惜しみなく与えていく。私は、ただただ気持ち良くて。ひたすら溺れて、それを受け入れ続けた。

――私の存在は、彼らにとって負担ではないのだろうか?

いつもいつも不安が付きまとう。私は優しい彼らに甘えてばかり。
私にできることで、少しずつでも、貰った分だけ返していきたい。
彼らから貰った想いの分だけ、どんな方法でも構わない。彼らに喜んでもらえるような何かを――……

***

「…それで?私と取引を交わしたいと?」

そう言って悪魔であるアスモデウスは、ベッドへと腰かけ、抱き潰されて眠り姫となってしまったヴィクトリアの髪を一房掬ってキスを落とす。眠るヴィクトリアは未だ頬が火照っていて、しっとりと濡れた肌や唇、悩ましく眉尻の下がった姿が何とも煽情的で美しい。

「そうだ。…僕たちは、愛しいリアと同じ時を生きたい。その為であれば、どんな条件であっても呑もう」

エリックはほんの少しだけ、自身の唇を噛みしめる。
本当は、もっと自分たちに有利な形となるよう、どれだけ時間が掛かったとしても沢山の資料を集めて、検討し、考え抜いた上でこの話を切り出すつもりだった。けれど、今回の件でそんな悠長な時間は残されていないのだと悟った。
今回は何とか対処出来たけれど、恐らくこれで終わりではない。年月と共に増えていく魔物の魔力のことを思えば、今後も同じことが何度も起こるだろう。そうして理解した。人間である自分たちには、次に同じことが起こった時、今回と同じ様に対処できないであろうということが。

「リア…様の魔力の総量は元々平均並みです。魔物のなった今も極端に増えているということはないと思われます。ですので、今回のようなことが起こるのは、推察するに数十年単位。エリック様とリア様がご結婚されてから約二十年ですので、恐らくはそれ位のスパンで繰り返されるものと思われます」

ジルベールがそう伝えれば、この場で人間である者たちは皆苦々しい顔をした。エリックはそれ以外でもジルベールに対し、苛立つことを感じたようだが、今は一睨みする程度で追及はしなかった。

「二十年か。人間にとって、決して短くない時間だ。二十年の時が経てば、もうお前たちには糧としての価値がなくなるだろう。今回のように自分たちの精気を惜しみなく与えたとしても、ヴィクトリアを完全に回復させるには足りなくなる。それに人間は脆い。避けられぬ事故に遭遇したり、病に掛かって思いがけず命を落とすやもしれん。この国がずっと平和とも限らないしな」
「…ああ。いざその時になってからでは遅い。人間のままでは、ずっと一緒にいることが出来ないんだ。リアを守り続けることも、精気を与え続けることも出来なくなる。だから…っ」

言い掛けて、思わずその場にいる者たちは口を噤んだ。アスモデウスから放たれる禍々しいオーラ。あまりの威圧感に、身体が震えそうになってしまう。アベルがエリックを庇うように前に立った。彼が己の全てを捧げたい貴婦人はヴィクトリアだが、エリックが主であることも変わらない。アスモデウスを睨みながら臨戦態勢をとる。

「お前たちは勘違いしている。何故私がわざわざお前らと契約を結ばねばならない?人間の変わりなど、いくらでもいる。精気が必要であれば、人間を狩ってくれば済む話だ。それに、お前たちを失って悲しむヴィクトリアを慰めれば、私だけを愛してくれるかもしれぬのだぞ?」
「貴様…!」
「彼女の悲しみにつけ込もうだなんて!」

アベルとレオンハルトが激昂する中、エリックが片手を上げてそれを制する。

「皆、ちょっと黙っていて欲しい」
「エリック?!」
「でも、アイツは…!」
「アベル、レオンも黙って下さい。今はエリック様に従うべきです」
「……っ」
「…分かった」

アベルとレオンハルトが退くと、エリックはアスモデウスに一歩近づき、にこりと微笑んだ。アスモデウスはその様子を訝しむように瞳を細めると、再び口を開いたエリックの言葉に、思わず瞠目する。

「まるでその気がないみたいに話すのは止して欲しい。こんなの時間の無駄だ。そう思わないか?」
「!」
「いつも腹立たしく貴方を見ていた。突然現れたと思ったら、まるで当然のように入り込んで、リアに頼られて。本当に貴方の存在が忌々しいよ。…だけど、僕は知っている。貴方だよね?ただ一人を選べずに悩むリアへ、平等に愛してやればいいって言ったのは」
「「?!」」

他の三人が驚きで目を見開く。アスモデウスは淡々と「だから何だ?」と答えるも、心なしか、先程の禍々しいオーラがほんの少し薄らいだように思える。

「何だかんだとそれらしいことを言いつつも、結局今の貴方は僕たちと同じ。リアを愛するただの男だ。…本当に彼女の悲しむ顔が見たいのか?それならどうして、今まで僕たちを殺さなかった?貴方であれば簡単だろう?人間である僕たちを消し去ることなんて」
「……」
「しかし、貴方がやったことといえば、思い悩むリアの憂いを払い、自らも彼女の夫の一人として支えることだけ。…だからこそ、リアは目に見えて貴方を頼っている。……悪魔である貴方を。」

エリックが口にした通り、アスモデウスはいつだってその気になれば手を下せた。だが、それを実行しなかったのは、ただ面倒だったからではない。ヴィクトリアの為だった。エリックの話を聞いて、禍々しいオーラをすっかり霧散させた彼は、その口元に悪魔らしい妖艶な笑みを浮かべる。

「…そうだ。不思議なことに、私はヴィクトリアの悲しむ顔を見たくない。昔から人間とは愚かな存在だ。愛する男が複数いたり、淫魔の眷属になったり、そういった女は沢山見てきた。だが、ヴィクトリアとその女たちとでは、決定的に違うものがある」
「……決定的に違うもの?」

弧を描いた口元が、愉しげに嗤う。

「――覚悟だ。自身の懐に入れた者たちへの覚悟。従魔を救う為に純潔を散らしたように、ヴィクトリアは己が大事にしている者の為なら、どんなものでも躊躇いなく差し出す覚悟がある。自分自身の命でさえも。……家族の為、恋人の為、仲間の為に同じ様な覚悟をして悪魔を召喚した人間は何人もいた。だからこそ私には分かる。ヴィクトリアはそういった類の人間で、愛する者の為なら、だと。…そんな女から愛されるだなんて、堪らないと思わないか?」
「…っ」

アスモデウスの赤が入り混じった金色の瞳が妖しく光を放ち、ゾクリとした悪寒が背筋を走る。
アスモデウスの求めるものが何なのか、何故その相手がヴィクトリアなのか、その理由の一端が視えた瞬間だった。

「それに、無欲なヴィクトリアが貪欲に欲するものが快楽なのだ。正しく、“色欲の悪魔”である私の為に生まれたかのような女だろう?」


***
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

ヤンデレ義父に執着されている娘の話

アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。 色々拗らせてます。 前世の2人という話はメリバ。 バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。