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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)

幸せの形⑨

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「……はぁ。とりあえず、今はもう訊かないでおくよ。意地の悪い訊き方して悪かった」

そう言って謝るノア様は、年相応に幼い少年の顔をしていて、思わず私は目元を綻ばせた。

「大丈夫ですよ」

こんな風に素直に謝るところは、ヴィクトリア様とよく似ている。

(今夜は晩餐会か。……私とナハトが必要なのは明日だな)

そう心の中で独り言つ。
モヤモヤとしたものを感じている筈なのに、これも仕方がないと諦めている自分が居る。
彼等はヴィクトリア様にとって、最も上質な糧であると頭で理解しているからだ。

「私はこれで失礼します。……いつものように、後処理はしておきますので」
「ああ、悪いね。頼むよ」

ノア様が喰い散らかしたメイド達の記憶を完全に消しておかなければ。
ノア様自身も彼女達に幻惑魔法を掛けているけれど、まだ完璧じゃない。掛かり方が甘いのだ。
それに、メイド達は恐らく、ノア様が部屋まで直接連れてきたか、誰かに頼んで呼び付けたのだろうし、他に目撃したかもしれない使用人の記憶もまとめて操作しておかなければならない。

ヴィクトリア様のお耳に入る事は、決して許さない。
あの方はまだ、ノア様の実情に気付いておられないのだから。

……………………
…………


そうして、私はミスを犯した。

まさかノア様がメイド達を部屋から帰す時に、彼女達に悪戯・・をしていたとは知らなかったのだ。

後処理は深夜に行っていた。
それなりに時間が掛かり、もうすぐ明け方だろうという頃。
私は仕方無く、最後のメイドの記憶を消し、意識の無い彼女のショーツを脱がし、秘処をタオルで拭っていたところ……


「……フィル……?何をしているの?」

「――――っ?!」


違う。
そんなまさか。
ヴィクトリア様は、今夜は糧である彼等に抱かれている筈だ。
いつも彼等との濃蜜な時間は長く、一晩中、朝方まで掛かっているのに。

「……ヴィクトリアさ……」

名前を呼ぼうとして、被さってきた彼女の言葉に、私は戦慄した。


「その子の精気を……喰べていたの……?」


* * *

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