88 / 105
旧ver(※書籍化本編の続きではありません)
幸せの形⑨
しおりを挟む「……はぁ。とりあえず、今はもう訊かないでおくよ。意地の悪い訊き方して悪かった」
そう言って謝るノア様は、年相応に幼い少年の顔をしていて、思わず私は目元を綻ばせた。
「大丈夫ですよ」
こんな風に素直に謝るところは、ヴィクトリア様とよく似ている。
(今夜は晩餐会か。……私とナハトが必要なのは明日だな)
そう心の中で独り言つ。
モヤモヤとしたものを感じている筈なのに、これも仕方がないと諦めている自分が居る。
彼等はヴィクトリア様にとって、最も上質な糧であると頭で理解しているからだ。
「私はこれで失礼します。……いつものように、後処理はしておきますので」
「ああ、悪いね。頼むよ」
ノア様が喰い散らかしたメイド達の記憶を完全に消しておかなければ。
ノア様自身も彼女達に幻惑魔法を掛けているけれど、まだ完璧じゃない。掛かり方が甘いのだ。
それに、メイド達は恐らく、ノア様が部屋まで直接連れてきたか、誰かに頼んで呼び付けたのだろうし、他に目撃したかもしれない使用人の記憶もまとめて操作しておかなければならない。
ヴィクトリア様のお耳に入る事は、決して許さない。
あの方はまだ、ノア様の実情に気付いておられないのだから。
……………………
…………
そうして、私はミスを犯した。
まさかノア様がメイド達を部屋から帰す時に、彼女達に悪戯をしていたとは知らなかったのだ。
後処理は深夜に行っていた。
それなりに時間が掛かり、もうすぐ明け方だろうという頃。
私は仕方無く、最後のメイドの記憶を消し、意識の無い彼女のショーツを脱がし、秘処をタオルで拭っていたところ……
「……フィル……?何をしているの?」
「――――っ?!」
違う。
そんなまさか。
ヴィクトリア様は、今夜は糧である彼等に抱かれている筈だ。
いつも彼等との濃蜜な時間は長く、一晩中、朝方まで掛かっているのに。
「……ヴィクトリアさ……」
名前を呼ぼうとして、被さってきた彼女の言葉に、私は戦慄した。
「その子の精気を……喰べていたの……?」
* * *
応援ありがとうございます!
21
お気に入りに追加
2,998
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。