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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)

不器用なフィル★

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「ヴィクトリア様、お目覚めですか?」
「………フィル?」
「はい。随分とお疲れのようですね」
「…………ええ」

夢渡りでアベルに抱き潰された後、私は精気を沢山食した筈なのに、目が覚めた時にはぐったりしていた。
一晩中、朝まで抱かれていた感覚のせいで、精神的に疲れてしまったのかもしれない。

(なんで乙女ゲームの攻略対象者達は総じて絶倫なの?)

正確に言えば、中には絶倫ではない者もいるのかもしれないが。
……いや、やっぱり絶倫だと思う。
私が普通の人間のままだったら、もうとっくに過労死しているかもしれない。精気だって無限に湧いてくる訳ではないのだし。

「ヴィクトリア様、どうぞこちらを。」
「ありがとう、フィル」

フィルから差し出されたトレイに乗っているのは、良い香りのするハーブティー。私はその香りに思わず目元を緩ませながら、淹れてくれたハーブティーをいただいた。

「美味しい」
「それは良かった」

嬉しそうな笑みを浮かべるフィルに、胸がときめいた。
フィルも、出会った頃はお茶なんて淹れられなかったのに。今ではどんなお茶でも上手に淹れてくれる。フィルは最初から凄く勉強熱心で、自ら進んであれこれ習っていた。だからこの美味しいハーブティーも、彼の努力の賜物だ。

(い、癒やされる……)

エリック様も激しい時はあるし、ジルベール様なんて毎回様々な玩具を駆使してくるけれど……

(激しさで言えば、アベル先輩が一番かも?)

甘噛みだけど毎回噛んでくるし、腰の打ち付け方が一番激しいし。

(それに……)

一番巨根なのはシュティだが、長さで言えばアベルが一番長いかもしれない。
私がいるこの世界はR18指定のゲームだったから、攻略対象者達は皆立派なモノを持っているけれど、最奥をあそこまで押し上げて来るなんて……

巨根……
長さ……
立派なモノ……

(……待って……!私ったら、朝から何を考えているの?!)

うら若き乙女が、朝から自分を取り巻く男性達のソレについて考えているだなんて。しかも自然と。

これは地味にショックかもしれない。


「フィル、ヴィクトリア様は起きたのか?湯殿の準備してきたけど……」

そう言いながらナハトが部屋の扉を開けて入ってきた。ノックをせずに入室してきたナハトに、フィルが鋭く冷たい瞳で睨み付ける。

「ナハト……!」
「そんなに睨むなよ。ノックだろ?」
「貴方は、どうして分かっていながらノックをしなかったのですか?」
「いや、だって……」

ナハトの言葉遣いは、最初の頃は少したどたどしく幼い感じだったのに、私が以前、私の前だけなら敬語じゃなくても良いと許可した頃から、少しだけ粗野な口調となった。これはこれで良い。
私がそんな事を考えていると、ナハトが視線を逸らしつつ、扉をノックしなかった理由を述べた。

「もしまだヴィクトリア様が眠っていたら、起こしちゃ悪いだろ?」
「!」
「……既に私がノックして部屋に入った後なのに、そこを気にしますか……いや、確かに一理あるかもしれない。私も朝はノックをしない方が?」

な、ナハト……!!
ナハトの気遣いに胸をキュンとさせつつ、ノックについて悩み始めてしまったフィルに私から答える。

「朝になれば起きないといけないのだし、いつも通りノックしてくれる?」
「畏まりました」
「それと……」

どうして湯殿まで?

そう思っていると、フィルが「失礼致します」と一言入れてから、私を横抱きに抱き上げた。所謂お姫様抱っこだ。

「ひゃあっ?!」
「気付いてないようですが、今のヴィクトリア様は酷い有様ですよ?なので、湯殿に行って、綺麗にしましょう」
「ひ、酷い有様?待って、とにかく降ろし……」

降ろして欲しいと告げる前に、フィルが瞳を細めて私の耳元に囁いた。


「汗と恥ずかしい蜜でドロドロですよ」


言われた瞬間、私の体温が急上昇した。
起き抜けで気付いていなかったけれど、確かに私の身体は酷い有様だった。
サキュバスとして不完全な私は、夢渡りする時に生身の身体を現実世界に残したままなのだ。夢渡り先で起きた事は、現実世界に残した生身の身体も感じてしまう。つまり、あれだけ絶頂した分、生身の身体の方も………

「~~~~っ」

あまりの羞恥に顔を上げていられず、フィルの首に両手を回してしがみつき、その首元辺りに真っ赤になってしまった顔を埋めた。

今回のような事は初めてではない。
夢渡りすれば、かなりの頻度で起きている事だ。ただ夢渡りする度に、お仕置きと称して、目を覚ますとフィルやナハトに抱かれていたから、目覚めた時の私の有様なんて気にしている余裕が無かった。

(あれ?……でも……)

要するに、今回がいつもと違うのだ。
フィルとナハトからのお仕置きが無い。

少しだけ顔を上げてチラリとフィルを見上げると、フィルは私の視線に気付いて、優しく微笑んだ。

「疲れ切っている主に、そこまで無体な事は出来ませんよ」

嘘つき。

私は半眼ジト目でフィルを見つめた。
一体どの口がそんな事を言うのか。つい最近、エリック様やルカ先生に散々されてヘトヘトだった私を、後2時間は~とか何とかって言ってませんでしたっけ?

私の考えている事に気付いていそうだが、フィルは清々しい程に柔らかな笑みを崩さない。
ナハトより、実はフィルの方が曲者だよね。だって、ナハトはあれでいて凄く純粋で素直だし、押しに弱いもの。

「……お仕置きしない本当の理由は?」

いや、むしろ一応は私が主なんですけどね。

「心外ですね」

フィルは私の額に優しく口付けた後、さっきよりも小さな声で、まるで内緒話でもするかのように言葉を紡いだ。

「本当に何もしませんよ。ただ――――」




“隅々まで、綺麗にして差し上げますから”。




……………………
…………


アルディエンヌ公爵家にある、広々とした湯殿にて。
ヴィクトリアの甘く切ない声が響き渡る。

「やっ……フィル……♡」
「さっきからそのような甘い声を出してどうしました?さぁ、もっと足を開いて下さい」
「あんっ♡そ、そこは自分で洗う、から……っ」

泡のついたフィルの手が、ヴィクトリアの身体中を滑り、両足の間を掌で優しく洗っていく。

「駄目ですよ、ヴィクトリア様。ここは特にデリケートな部分ですから。心配せずとも、私が優しくじっくり、丹念に洗って差し上げます」
「ひゃっ♡♡」
「お豆も皮を剥いて、きちんと洗いましょうね?」

クリクリクリクリ♡♡
コリュコリュコリュコリュ♡♡

フィルが優しく2本の指を遣って、ぷっくりと膨らんだ剥き出しの花芽を摘み、何度も何度も指を滑らせて洗い上げていく。

ヴィクトリアは身体をふるふると震わせながら、じわじわと迫り上がってくる快楽に涙を滲ませた。

「それ、だめ……♡……フィルっ……だめなのぉ♡♡」
「……可愛らしいですね。ですが、きちんと洗わなければいけませんので。ナハト。ナハトは上を……」
「分かってる」

フィルに呼ばれたナハトは、その意図を理解して的確に答えると、フィルと同じく泡の付いた手でヴィクトリアの首筋、鎖骨、肩や腕にその手を優しく滑らせてから、柔らかに揺れるマシュマロのような双丘をそれぞれ掌で包んだ。

「あっ……♡……なは、と……♡♡」
「こっちも綺麗に洗ってやる。柔らかくて弾力があって、触り心地が最高だな。……先っちょが硬く勃ってる」

ナハトに双丘を揉みしだかれ、先端を指で挟まれてクリュクリュと扱かれれば、ヴィクトリアは花芽からの刺激も相まって、堪らずに腰を捩る。

「おや?……洗っているだけなのに、何かがトロトロと溢れてきましたね。我が主は本当にいやらしい」
「ひぅうっ♡♡」

フィルの花芽を弄ってない方の手が、蜜口辺りを掌で滑るように撫でていく。
泡に溢れた蜜が合わさって、ヌルヌルとした滑りが増した。
もどかしい快感に、更なる刺激が欲しくなってしまう。しかし。

「……ここ、ヒクヒクしていますね。ですが、今は本当に何もしませんよ。今朝のヴィクトリア様はだいぶお疲れのようですから。これは一種のマッサージです。たっぷりリラックスして下さい」
「む、無理だから……こんなっ……♡」

きゅう♡♡

「あぁん♡♡」

ナハトに双丘の先端を摘まれて、ヴィクトリアの身体がビクリと跳ねた。
確かに疲れていたけれど、弄るだけ弄ってそのままだなんて、リラックスとは程遠い拷問だ。

「ヴィクトリア……凄く、蕩けた顔してる」

クリュクリュクリュクリュ♡♡

「ナハト………ら、め……っ♡♡」
「蕩けた顔をしちゃうくらい気持ちがいいんだろ?なら、もっとしてやる」
「ひぃんっ♡♡」
「私達も溢れ出ているヴィクトリア様の精気を喰べずに我慢しますから。だから……」
「あっあっ♡♡」

後ろから抱き締めるようにヴィクトリアを抱えているフィルの熱く滾った硬いモノが、ヴィクトリアの腰に当たった。前から向かい合ってヴィクトリアの双丘を弄り続けるナハトのソレも、腰に巻いたタオルをググッと押し上げているのが分かる。

(欲しい……二人の、熱くて硬いのが……♡♡)

けれど、ヴィクトリアがいくらそう願っても、二人は決して挿れてくれない。

くちゅくちゅくちゅくちゅ♡♡

やがて、フィルの掌で撫でていた蜜口から、淫靡な水音が大きく響き出し、ヴィクトリアは顔から火を吹きそうな程に、耳や首までも真っ赤に染めた。

「音、いやっ……恥ずかしい、の……」
「ええ。凄く恥ずかしいですよね?洗っているだけなのに、こんなに濡らして、いやらしい音を響かせてしまうなんて。しかも、夢渡りで散々抱かれてきた・・・・・・・・後なのに・・・・。」
「……ふぃ、る……?」

ヴィクトリアが問うように名前を呼ぶと、フィルではなく、ナハトが答えてくれた。

「俺もだけど、フィルは更に嫉妬が激しい。だから諦めてくれ、ヴィクトリア」
「……へ?」
「ナハト」
「本当のことだろ?」
「…………」

振り向いて見上げると、ずっと笑みを浮かべていたフィルが、少し拗ねたような顔をしていた。
そう。やはりフィルは夢渡りした事を怒っていたのだ。しかし、夢渡りしてしまうのはそれだけ必要な精気が足りないからで、しかも無意識だ。誰のところへ夢渡りするかは、ヴィクトリアの意思とは関係無い。
それが分かっていても、フィルは割り切れず納得出来ないのだ。それ故に、ヴィクトリアが夢渡りする度に、毎回その記憶を上塗りするかのように無理矢理理由をこじつけて“お仕置き”してきた。快楽に弱いヴィクトリアが、そのお仕置きを受け入れてくれるのをいい事に。

しかし、今回はそうもいかなかった。
ぐったりと疲れ切っているヴィクトリアを見て、またいつものようにお仕置きする事に躊躇したのだ。

更なる深い快楽を与える激しいお仕置きが出来ないのなら、記憶の上塗りが出来ない。けれど、ヴィクトリアにこれ以上無理はさせられない。だから。


「……淫魔の私に出来るのは、ヴィクトリア様を気持ち良くする事だけですから」


要するに、本当にマッサージのつもりだったのだ。しかし、専門の知識など無く、とにかく相手を気持ち良くする事に専念した結果、今に至っているわけで。
ちなみに、言葉責めはフィルにとって、息をするのと同義である。

ヴィクトリアは、フィルの意外な不器用な面を知って、胸の内をジンと熱くさせた。

「フィル……っ……」

大好き!!

心底そう思った瞬間だったが、二人が再び手の止まっていた淫らなマッサージを再開した為、ヴィクトリアは堪らずに嬌声を上げた。

「やぁあん♡♡」
「……まだ終わってません。次は中も洗いますから」
「時間ギリギリまで、いっぱいトロトロにさせてやる」


そうして、ヴィクトリアは本当に時間ギリギリまで、フィルとナハトからマッサージと称した気持ち良すぎる拷問に耐える事となったのだった。


蜜壺の中まで丹念に洗われたのにも関わらず、一度も絶頂出来ないまま。


* * *
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