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《分岐》リアム
三年後③
しおりを挟む騎士団本部にある食堂で朝食を済ませた私とリアムは、予定通り二人でデートに出掛けた。
いつものように、いくつかのスイーツ店を巡り、お腹が十分満たされた後。前世の観光地等でも見かけた、コインを投げ入れる噴水がある所で、リアムがコインを投げまくったりして、それを何とか諌めたりと楽しい時間を過ごした。
『大丈夫だよ、ロゼ。お金なら死ぬ程持ってるから』
いやいや、そういう問題じゃないんだよ。リアムが投げたコイン、金貨だから。普通は銅貨とか投げるところに、金貨投げるっておかしいから。恐らく私達が居なくなった後、金貨だと気付いた人は噴水にダイブするに違いない。
お金って大事だからね?無駄遣い駄目、絶対!
そうしてその後、いつもなら騎士団本部へさっさと帰るのだが、リアムは珍しく私を王都郊外にある森まで連れて行った。魔法を使用したので、森までの道程は一瞬で、着いた場所は森の奥にある小高い丘の上だった。
丘の上には大きな木があり、その周辺には綺麗な白い花が咲き乱れていた。
「……え?」
私は思わず驚愕に目を見開いた。
まさかリアムが、スイーツ店以外で女の子を喜ばせるような所へ連れて行ってくれるなんて、思っても見なかったから。
「ほら、ロゼ。こっちにおいでよ」
リアムは当然のように木の下へ座り、ポンポンと手で叩いて、自分の前に座るよう私を促す。私は少し躊躇いながらも、リアムに背を向ける形でリアムの足の間に腰を下ろすと、後ろからリアムにぎゅっと抱き締められた。サラリとしたリアムの髪が私の頬に触れて、すぐ近くで聞こえるリアムの吐息にドキッと心臓が大きく弾む。
「り、リアム?」
「ロゼはこういう所、好き?」
「こういう所?」
「花が沢山咲いてる所とか、景色が良い所」
どうしてそんな事を訊くのだろうか?嫌いな人なんて居ないのでは??
私は軽く首を傾げながら、リアムに「好きだよ?」と答えた。
「そっか。それなら良かった」
「うん。花とか良い景色って、見てるだけで癒されるし。ここ、凄く綺麗。リアム、よくこんな場所知ってたね」
「魔物の討伐で森に入るからね。私は滅多に参加しないけど」
「リアムが参加する時は、余程の人手不足の時か、災害級の魔物が現れた時くらいだもんね」
「うん。……ねぇ、ロゼ」
「ん?」
「キスしていい?」
その一言で、私の体温は馬鹿みたいに上昇した。
確かに今は恋人同士で婚約者だし、騎士団の寮にある自室でもキスくらいしてるけど。
(いくら他に人が居ないとは言え、外だし、何だか改めて言われると恥ずかしいっ)
私がなかなか答えられず躊躇っていると、私を抱き締めるリアムの腕に力が籠った。ぎゅうぅ。
「……駄目?」
耳元で囁かないで下さい。
リアムの甘い声音が腰に来るから勘弁して下さい。腰砕けになるという表現を私は最近、身を持って体験していた。リアムは年々色気を増していて、言動は子供っぽいのに色々とギャップがあり過ぎて非常に困る。
「駄目じゃない、けど。少し、恥ずかしいと言うか……」
「駄目じゃないなら、しよ?こっち向いて」
「うぅ……」
リアムの手が緩んだので、私は自分の身体の向きを変えた。リアムと正面から向き合う体勢となり、顔を真っ赤にしながら私が少し視線をさ迷わせていると、リアムの手に両頬を包まれてしまった。
「顔が真っ赤だね。未だに慣れないなんて、君は本当に可愛いね」
「だって……」
「……少し、口を開けて」
「え?なんで……んんっ?!」
次の瞬間、私の唇はリアムに奪われていた。いつもの、そっと触れるだけの優しいキスではなく、口内に舌を捩じ込まれた、深く濃厚なキス。
「んっ……ふ、ぁ……♡」
自分の口から漏れる声音に驚いて、私は両手でリアムの胸を必死に押した。けれど、リアムの身体はビクともしない。全然真面目に鍛錬なんてしてないクセに、これは一体どういう事なのか。リアムが攻略対象だから?1ミリでもいいからモブである私にその筋力を分けていただきたい。
「っ!……はぁ……はぁ」
「……何か別の事を考えてるの?今は私の事だけを考える時間だよね?いけない子には、いっぱいお仕置きをしようか」
「な?!り、リアム?ちょっと待っ……んむっ!んっ♡……ふ♡」
そう言って、リアムは私に何度も何度も甘く濃厚なキスを繰り返した。キスしかしてないのに、頭の芯が痺れてくる。お腹の奥が、キュッとして、何故だかとても疼いて、もどかしい。
(だ、め……気持ち、いい……)
キスしかしてないのに。
リアムの舌が、私の口内を動き回っていく。まるで何かを探しているみたいに。上顎や歯列をなぞり、舌をヌルヌルと絡められて、口端から飲み込み切れなかった唾液がツゥっと零れていく。クチュクチュと艶かしい水音が聞こえてきて、私は羞恥心と与えられる快楽でおかしくなりそうだった。
(り、リアムのクセに、こんなにキスが上手いなんて!こんな……!)
こんなの反則だ!!
私は強くそう思いながら、リアムが満足するまで唇を貪られ続け、終わった頃には、私はすっかり腰砕けになってしまっていた。
リアムの馬鹿!!
* * *
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