【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

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《分岐》オリバー・バルトフェルト

『魔核』と『禁術』

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倒しても倒しても魔物が湧いて来ていた。団長であり、ガーディアンナイトであるレオンやジェラルド、ナンバーズのNo.9、オリバーの実力は凄まじく、一度の攻撃でかなりの数を一掃していくのに、直ぐ様一掃されたのと同程度の魔物達が増えていく。その様子に、レオンが忌々しそうな顔をして舌打ちした。

「チッ!どこかで『魔核』が生まれたか!ジェラルド!!」
「分かってますよ!ですが、流石にこの速さで増えられたらレオンだって抑えきれないでしょう?!オリバー!!」

ジェラルドは少し離れた位置で先陣を切り、魔物を次々に倒しているオリバーへ向かって声を張り上げた。

「オリバー!『魔核』を見付けて破壊して下さい!」
「了解!!」

今スペード王国騎士団が戦っている相手は、大きさは大小様々で、通常の魔物より遥かに強く、強力な魔物達。その数、数百。しかも、レオンやジェラルドの強大な攻撃で一度にかなりの数を一掃しても、魔物は次々に湧いてくる。魔物が沢山居れば、それだけこの場所の瘴気は濃くなる。瘴気の濃い場所には、必然的に『魔核』が生まれるのだ。

オリバーはジェラルドからの命を受け、魔物を凍らせながら、その間を縫うように駆け抜けた。『魔核』を探し、魔物達の群れる中心部へと進んでいく。足にかけた属性特有身体強化を駆使して、物凄い速さで中心部へと到達し、禍々しい瘴気を放ちながらボコンボコンと魔物を生み落としていく『魔核』を、幸か不幸か、オリバーはすぐに見つけた。跳躍し、一気に距離を詰めて、オリバーは『魔核』へ剣を突き立てる。
しかし――――

「なっ……?!」

いつもの『魔核』より、遥かに硬い。剣が突き刺さらない。ならばと、オリバーは『魔核』に向けて魔法を唱える。

「【氷の槍アイススピア】!!」

すると、『魔核』にピシリと僅かな傷がついた。だが、直ぐに周囲の濃すぎる瘴気によって、その僅かな傷さえも修復してしまう。
こんな『魔核』は初めてだった。
しかも、オリバーが居るのは魔物達の中心部。次々に魔物に襲い掛かられて、オリバーは中心部からの離脱を余儀無くされた。

「クソッ!!」

オリバーは唇を噛み締めつつ、周囲の魔物達を倒し、何とか中心部から後退していると、魔物で溢れ返るその場で、オリバーはギクリと何かを感じ取った。

(なんだ?この感じ……)

そうしてオリバーは顔を上げて、空へと視線を向けた。 
スペード王国側の国境付近遥か上空に、赤い魔法陣が見える。オリバーの思考が、一瞬停止した。

「……駄目だ。あっちは、ロゼが居る」

赤い魔法陣が輝きだした。
もうじき、魔法陣が発動してしまう。オリバーの顔が、みるみるうちに絶望へと染められていった。

「駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!ロゼっ!!!」

次の瞬間。
赤く輝く巨大な魔法陣から、轟音と共に魔法が放たれた。
国境一帯に降り注ぐ、凄まじい火力の炎の雨。ダイア公国側の狙いは、初めから後方に居る治癒師達だったのだ。

……………………
…………

突然、かなり離れた前線の方から急ぎの通達があった。ダイア公国側から、人ではなく魔物の大群が攻めてきたと。しかも、普通の魔物より遥かに強く硬い上位種。スペード王国騎士団は、この大陸にある四ヵ国で最強と謳われており、それは正真正銘真実である。高い魔力を持ち、魔法と剣技を兼備えた魔法剣士の強者達。それがスペード王国騎士団だ。

半人前の中位騎士ならば少し手子摺るかもしれないが、上位騎士であれば上手く連携を取り、魔物などすぐに倒してしまう。……それが普通の魔物であったなら。
数百年と平和が続き、魔物の上位種など、滅多に現れなくなった昨今で、突然数百を越える数の魔物の上位種との対峙。それは例えスペード王国騎士団であっても、苦戦を強いられるのは必至であった。

「魔物が攻めてきた……?でも、どうやって…………」

ロゼリアはハッとした。
ゲームの終盤で、再びダイア公国との戦争が再開した時、彼等が禁術を使用していた事を思い出したのだ。
ダイア公国の王であるカエサルは、魔法師達に奴隷や罪人達を生け贄に捧げて古代魔法を使用させるのだ。
ゲームの中では禁術と言っても、そこまで大掛かりなものではなかった。あくまでメインは騎士団同士の戦いで、そこにゲームでは悪の道に堕ちてしまったオーガスタスが死の商人として暗躍し、非人道的な武器・・戦略・・が使用されるという内容だった筈だ。

戦争はまだ開戦したばかり。
けれど、シナリオが大きく変わって、ダイア公国は武器や戦略ではなく、禁術をメインに仕掛けてきたって事?

ロゼリアが頭の中で、そう答えを導きだした時。その答えが確信に変わった。
治癒師の誰かが、空を指して悲鳴を上げたのだ。
ロゼリアが視線を空へ向けると、遥か上空に赤い魔法陣あり、今まさに輝きを放ち始めていた。

――まずい。
これはまずい。

ゲームの序盤、ヒロインが騎士団の診療所へ配属された時、優秀な治癒師達が殆んど殺されてしまっていた事を思い出した。
ロゼリアは左手を空へと掲げて、左手首を右手で支える。このままでは手遅れになる。この場で防御魔法を展開すれば、前線にいる騎士達や魔物達も巻き込んでしまうだろう。魔物を追い出す事は出来ないが、防御魔法結界の外側に居る魔物は中には入ってこれない。

(時間稼ぎくらいにしかならないかもしれない。だけど、無いよりはマシでしょ!)

手持ちの魔力タンクは、装着済みのものを合わせても六本だ。
ロゼリアは赤く輝く巨大な魔法陣から炎の雨が降り注ぎ始めた瞬間。
最上位防御魔法を展開させた。
学生時代に嫌という程練習に練習を重ねた五属性複合魔法。

――――【絶対防御パーフェクトシールド】を。


* * *
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