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《分岐》リアム

朝起きたら、隣にリアムがいた件について①

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この状況はどういう事なんですか?

「ロゼリア……?」

リアムに名前を呼ばれて、私は僅かに肩を揺らした。サラリとした艶やかな漆黒の髪に、薄っすらと開いた漆黒の瞳。その瞳に吸い込まれてしまいそうな錯覚を起こしそうになって、私は思わずリアムから目を逸らした。

「リアム、目が覚めました?一体どうして、私のベッドに居るのです、か?……っ?!」

ぎゅう。

驚く私をよそに、リアムは私をいきなりグイッと引き寄せて、ぎゅうっと力強く抱き締めた。

ちょ、待って。待って下さい。
なんでリアムは私を抱き締めるの?というか、本当になんでここにいるの??

「……リアム?」

不審に思って、眉根を寄せながらリアムの名前を呼ぶと、リアムはその端正で美しすぎる顔を綻ばせた。その笑顔が、実年齢よりも幼く見えて、不覚にも私は可愛いと思ってしまい、胸をときめかせてしまう。

(スペード王国騎士団で一番の危険人物にときめいてしまうなんて……)

私がそんな事を考えながら瞳を泳がせていると、リアムは笑みを浮かべたまま、私の頭上近くで口を開いた。

「ロゼリア、私の名前をもっと呼んでよ」
「へ?」
「ロゼリアに名前を呼ばれるのって、なんでか心地好い。ほら、もう一回」
「え、と…………リアム?」
「うん。もう一回」
「リアム」
「うん」
「…………リアム??」

一体何なんだ。
私が顔を上げてリアムに視線を向けると、リアムも私に視線を向けていた。気まずくて咄嗟に顔を背けようとするけれど、リアムにがっちり抱き締められている為、体勢を変える事が出来ない。それ故、やはり視線だけを逸らしていると、リアムが何故だか私の耳につけている魔導具を外した。

「ちょ?!……返して下さい!」
「ちゃんと後で返すよ。ねぇ、ロゼリア」
「なんですか?」
「ちょっと私と息抜きをしようよ。……一緒に買い物へ行こう?」
「へ??」

今、なんて?買い物??
あの人嫌いで引き籠もりのリアムが??

私が驚いて絶句していると、リアムは抱き締めていた私を解放して、膝を片方立てて、ゆっくりと上体を起こした。サラサラと溢れるリアムの髪が私に触れて、私は少し擽ったく感じた。

「あの、後で団長に任務の報告をしないといけないので……」
「大丈夫。買い物に行ってお茶をしたら、すぐに帰って来るから。……いいよね?」
「…………」

リアムから発せられる、有無を言わさぬ雰囲気。これ、拒否権皆無なやつですよ。嫌だと逆らったらどうなるんだろう?久々にリアムから恐怖を感じる。私は前世の記憶により、リアムがどんな人物なのか知っている訳で、ただのモブである私に選択肢等無い。

「わ、分かり、ました」
「よし。じゃあ早く行こう?」
「え?!いやいやいや、あの、今すぐにですか?!」
「善は急げって言うだろ?……おいで、ロゼリア。美味しいお菓子のお店に連れていってあげるよ」
「!」

こうして何故だか私は、リアムと共に街へ繰り出す事となった。なんで??というか、これってもしかして…………

(……リアムとデートって事??)


* * *
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