【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

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《分岐》オリバー・バルトフェルト

追手の騎士達

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トラプラの町から転移魔法陣で移動した先は、国境付近に聳え立つダイア公国東の砦だった。私とお兄様は、そのままお忍び貴族風を演じて、東の砦にある厩舎から馬を一頭貸してもらった。
そもそも、貴族が国境に何の用があるというのか。私とお兄様はめちゃくちゃ怪しいと思う。しかし、お兄様がチップを渡したら厩舎の管理人さんは快く馬を貸してくれた。この国の人達は貴族に対して本当に甘過ぎるよ。馬って高級品だよ?

(下手に貴族へ楯突いた方が面倒なのかもしれないけど……)

ある意味順調に、私とお兄様は馬に乗って国境沿いを進んだ。周辺の景色は木々が少なく、荒れた荒野ばかりが広がっている。そして、スペード王国の砦を遠目で確認出来た地点で、私達は馬から降りた。正確に言えば、私はよく分からないまま馬から降ろされた訳だが。

「お兄様?」
「ロゼ、一戦交えるぞ。流石にダイア公国の連中も、私達を怪しんで後を追ってきたらしい」
「!」

後ろを振り返ると、ダイア公国の紋章が描かれたマントを身に纏っている騎士達が、馬に乗って数十人駆けて来ていた。ある意味、ホッとしたかもしれない。もしも本当に、私達を微塵にも疑わず、このままスペード王国へ帰れたなら、ダイア公国の人達と戦えなくなってしまうかもしれない。そう思ったから。

「ロゼ、お前は下がっていなさい」
「いえ、お兄様。私も戦います。公爵邸での事、挽回させて下さい!」
「……分かった」

追手の騎士達は二十人程。
彼等は馬に乗ったまま、槍を構えて突っ込んできた。私とお兄様は左右に分かれて、槍を回避しつつ攻撃態勢に入った。敵も二手に分かれ、ちょうどいい。ちょうど………………いい、のかな?私の方に来てる奴の方が多い。

「その動き、やはり貴様ら貴族ではないな?!」
「どこの国の者だ?!」

彼等が槍を構えながら、そう叫んでいると、お兄様が苛立ちを露に冷気を纏い始めた。周囲の地面がピシピシと凍っていく様を見て、ダイア公国の騎士達が数歩後退する。お兄様はそんな彼等を見て、魔法を発動させていく。

「私より小さな身体の者から倒そうとするとは、騎士の風上にもおけないな。早々に駆除してくれる!」
「うわっ?!」
「こいつ、魔法師か?!」
「人間の理を超えた悪魔め!!」
「?!」

(――――ダイア公国が魔女狩りをしていた時代は、かなり昔の筈。それなのに、未だ魔法師を差別し、蔑む奴が騎士の中に居るだなんて……)

お兄様はそんな奴等の声には答えず、向かってくる騎士達を素早い動きでどんどん倒していく。その様子を私がチラリと気にしていると、私の前にいる騎士達が「貴様、どこを見ている?!」と怒り始めた。

「子供だからとて、容赦はしない!!」
「待て。まさか、こいつも魔法師じゃあるまいな?」
「仮に魔法師だったとしても、まだガキだろ?それに、この子供を先に捕まえれば、もう一人も大人しくなるかもしれん」
「殺さず生け捕りにしろ!!」

十四人の騎士達が、一斉に私に向かって攻撃してきた。要するに、私の見た目が子供だから、完全に舐めきってる訳ですね。私は属性特有身体強化を発動させて、近くに居た騎士の馬にトンッと乗って、槍を一瞬で奪って見せた。そして元々の槍の持ち主である騎士の首に手刀を入れて気絶させ、馬からポイッと放る。

「?!」
「子供子供と、僕を軽く見すぎじゃないですか?」
「なっ……?!」

私はニヤリと口角を上げ、槍をくるくると回し、馬の背を蹴って跳んだ。空中なら避けられまいと、騎士達が私目掛けて突き出して来た槍を全て横薙ぎに薙ぎ払い、【闇の鎖シャドウバインド】を唱える。魔力タンク内の魔力を使用している為、十四人全ての騎士と馬を余裕で拘束した後、私は彼等から少し距離を取って、身動きの取れない彼等へ【闇の矢ダークアロー】を連射した。

「うわああああっ!!」
「ひぃぃっ!!」
「この化け物……!!」

ダイア公国の騎士達が叫び声を上げるけれど、私は思ったより取り乱す事なく冷静だった。公爵邸でお兄様の覚悟を見たからかもしれない。
全ての騎士を沈めてからお兄様の方を見てみると、お兄様はとっくに終わっており、騎士達が持っていた縄でぐるぐる巻きに縛っていた。

「お兄様、お待たせしてしまい、申し訳ありません!」
「いや、鮮やかな勝利だったよ。学生時代もあまりロゼの戦っているところを見る機会は無かったが、ロゼも随分と強くなったんだね」
「!」
「それに、戦っている時は一人称が無意識に変わるらしい。それほどに、セルジュとして頑張って来たんだな」

お兄様が、私の頭を優しく撫でてくれた。私には、それがあまりに嬉しくて、少しだけ涙が滲んでしまった。お兄様が、今までのセルジュを認めてくれた。確かに、全てを話した時にも認めてくれたけれど、その時とは少し違う感覚で。

私は上機嫌のまま、お兄様と一緒に沈めた騎士達を縄で縛り、再び馬へと跨がった。騎士達の馬をもう一頭いただいたのだ。お兄様は何故だか少しだけ不服そうな顔をしていたけれど、私達は気を取り直して馬を走らせ、スペード王国国境の砦へと向かったのだった。


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