【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

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《分岐》グリード・ルフス

故に貴様は神に祈れ*グリードside*

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ダイア公国のコールリッジ公爵家別邸にて、拐われた少女達の救出作戦が実行された日。騎士団の極秘任務で、俺は警備が手薄となったコールリッジ公爵家の本邸に忍び込んでいた。目的は公爵とダイア公国王家の悪行の証拠だ。別邸の方はルークとフェリクスが探している。

(あれが執務室か。寝室の方は特に何も見当たらなかったからな。何か隠しているなら恐らく執務室だろう。……見張りも居ないが、鍵は空いているのか?)

俺は素早く執務室の扉に触れ、鍵が掛かっているか確認した。普通ならば、魔導具の防犯設備があったりするのだが、ダイア公国は魔法関係のものが全てにおいて他国よりも遅れている。案の定、この公爵邸で使用されているのは旧式の魔導具のようだ。

(これなら無いも同然だ)

旧式の魔導具の施錠を難なく解除して、執務室の中へ足を踏み入れる。使いやすい機能性よりも、見た目ばかり重視された豪華な室内で、書類等が隠せそうな所をしらみ潰しに探していくと、一ヶ所だけ音の違う床を見つけた。

(ここか。……罠も掛けられていない。この部屋の扉に掛けてあった旧式魔導具オモチャで万全だと思っているなら傑作だな)

床下に隠されていた書類を確認して懐へと仕舞い込んでいると、突然誰かの気配を感じた。俺が警戒しながら執務室の扉を開けると、同じ様に辺りを警戒しながら此方に向かって走ってくる男が居た。隠れようかとも思ったが、赤みがかった茶髪の、少し幼い顔立ちの男は、いつの間にか俺の背後へと移動していた。

(特異能力?!)

俺は直ぐ様その男へ攻撃しようとしたが、その男が俺の格好を見て「ロゼリアの仲間か?」と言った。
その瞬間に、ざわりと俺の纏う魔力が膨れ上がり始める。俺はその男を睨み付けながら、スラリと短剣を抜いた。

「何故ロゼリアの事を知っている?貴様、事と次第によっては……!」
「待ってよ。俺もアンタ達と一緒。潜入して、拐われた子供を救出しに来たんだよ」
「何?」
「俺は帝国から来たグレンだ。……一応伝えておくけど、ロゼリアは今、公爵家別邸に…………」

グレンの話を聞いている最中に、俺は驚いて言葉を失った。今まで一度として使用された事の無い、魔通石に反応があったからだ。一方から魔力を込められれば、例え身体の何処に身に付けていようとも、相手の声を念話のように聞く事が出来る。学生時代にロゼリアに渡した魔通石の対となる魔通石は、俺の上着の内ポケットだ。

(……ロゼリア?)

そうして聞こえてきた内容に、俺は自分でも信じられない程の、抑えきれない怒りを感じた。
俺の様子が変わった事に驚いて、グレンと名乗った男が「どうかしたのか?」と声を掛けてくる。

「……一つ訊きたい。別邸へ繋がる転移魔法陣は何処にある?」
「この邸の隠し部屋だ。書庫の奥にある本棚の仕掛けを動かせば開くけど……」
「分かった。礼を言う」
「おい!一体どうしたんだよ?!」

俺はグレンの問いには答えずに、真っ直ぐ書庫へと向かった。魔通石からは、ロゼリアの他に、いつかのあの男・・・の声が聞こえてきた。二年前、ロゼリアを泣かせた男が、またしてもロゼリアに迫っている。

『な、に……?』
『まずはこの汚ならしい服を脱ぎましょう。ナイフで切れば早いですからね。……私が貴女を綺麗にして差し上げます』

ロゼリアの、息を呑む音が聞こえた。俺は拳を握り締め、殺気を迸らせながら、身体強化で限界まで速度を速め、書庫にあった隠し部屋へと飛び込んだ。固定転移魔法陣を発動させる為の稀少な時空石に魔力を流し込み、別邸へ移動すると、魔通石の反応を頼りにロゼリアの居る部屋の扉をぶち壊した。

その間もずっと聞こえていた、あの男の声とロゼリアの声。
俺の初撃を躱してベッドから後方へと飛び退いた男から視線を外さずに、俺はロゼリアを抱き起こした。

「遅くなってすまない、ロゼリア」
「……グリード……?」

ロゼリアのズボンはナイフによって引き裂かれ、雪のように白く美しい両足が露になっていた。男が俺に気付いて、魔力を高め、ニヤリと口角を上げる。

「貴方が来て下さるとは嬉しいですね。戦場で捜す手間が省けました」
「相変わらずの減らず口だな。最初会った時に忠告した筈だ」
「そういえば、何か戯れ言を仰っていたような?すみません、ど忘れしてしまいました。どうやら、私にはいらない忠告だったようですね」
「……ならば、教えてやろう」

俺は脱いだ上着をロゼリアの足元に掛けてから、ゆっくりと立ち上がった。相手はあくまで他国の王子だ。例えどれだけのクズだったとしても、殺したら色々と問題が出るだろう。だから。

「俺が一生口のきけない死体身体にしてやる。故に貴様は神に祈れ。俺がロゼリアと居なくなった後に、奇跡的に息を吹き返すように」


* * *
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