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本編

第二会議室②

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『セルジュ君のナンバーは、No.2でいいでしょう?』

バルトロにそう言われた瞬間、一気に血の気が引いて、心臓が凍りついたかと思った。No.2は特異枠。

(まさか、属性数がバレてる?)

私はすぐに隠している属性数の事を思い浮かべた。今は男装してセルジュとなっているのだから、属性数がバレる事自体は大丈夫だろうと思う。けれど、問題はその後だ。下手に注目を浴びて色々と調べられてしまったら、それが一番困る。学校に入学する前の記録は何も無いのだから。不審に思われてバルトフェルト家にセルジュの事を尋ねられてしまったら、もうアウトだ。私が魔法師団ではなく騎士団に居るのだとバレたら、騎士団を辞めさせられて、邸に連れ戻されてしまう。

(それだけは避けないといけない。何をしてでも)

バルトロは鍛練がしたいと嘆いている。相手はお兄様のようだけど、何故私を特異枠にしようとするのか、バルトロに訊いてみなければ。

私がどう聞き出したらいいか思考を巡らせていると、グリードがバルトロに対して不機嫌そうに口火を切った。

「バルトロ。セルジュは硬いだけではない。恐らく試験官がルーク辺りならば良い勝負になった筈だ。欠点とも言えるべき魔力不足も、自ら対策し、魔導具で補っている。特異枠ではなく、No.3となれるだけの実力はあると思うぞ」
「No.3?まぁ、今空いてる席はNo.3とNo.7ですからね。……ルーク……ルークですか。彼は、僕とはあまりにタイプが違うので、そもそも興味が無いといいますか……。怒っている彼は多少面白いですけど」
「大体、判断基準がおかしいだろう。お前が面白いかそうでないかで、ナンバーを決めるな。きちんと相手の実力で判断しろ」
「実力と言いましても。…………ああ、そうでした。オリバーが来た事で忘れていましたが、セルジュ君のお見舞いに行こうと思っていたのでした」
「え?」

バルトロはそう言うと、ゆっくりと起き上がって私の傍へと歩み寄ってきた。それを見たグリードとテオドールがガタンと椅子から立ち上がり、鋭い眼差しをバルトロへと向ける。バルトロは仲間達に信用されていないのだろうか?

(明らかに危険人物扱いされているような……)

「バルトロ。セルジュに何をするつもりだ?」
「別に?ただ、昨日気付いたんですよね。……ほら、僕とお揃いでしょう?」
「お揃い……?」

バルトロは一体何を言っているの?

バルトロが私との距離を詰め、私の座っている椅子の背凭れ部分に左腕を乗せて、私の顔を覗き込むように上体を屈めた。耳元で囁くように聞こえるバルトロの低い声音に、私の肌がぞわりと粟立つ。

「お揃いですよね。この耳飾り・・・
「―――っ?!!」
「後で僕の部屋に来て下さると嬉しいです。昨日は門前払いでしたから」

それは―――
拒否権なんて無い、有無を言わさぬ圧倒的な威圧感。息を吸うことさえままならない。

私が完全に青褪めて凍りついていると、いつの間にかグリードが私とバルトロの間に割って入って来ていた。一瞬の間を置いて、テオドールもバルトロから私を庇うように前に立っている。

「バルトロ。セルジュに何を言った?」
「……セルジュセルジュと、貴方達もセルジュ君を気に入っているのですか。リアム様に、グリード君。テオドールも。ふふ、いいですねぇ。まるで炎に群がる蛾のようです。セルジュ君と仲良くすれば、リアム様だけでなく、貴方達とも、いつでもヤり合えるという訳だっ!!」

そう言いながら、眉根を寄せて歪んだ笑みを浮かべるバルトロに、グリードが怒りを露にして語気を強めた。纏う魔力が膨れ上がり、周囲の景色が揺れて見える。

「バルトロ、貴様……!」
「何なら今ここでヤり合いますか?僕は何処でも大歓迎です!!」
「セルジュに何かするようなら、容赦しないっ……!」
「どう容赦しないのでしょうか?楽しみですね。グリード君とヤり合うのは!……テオドールはNo.8でしたね?お望みとあらば、君とも、いつでもヤり合いま……」
「―――そこまでだ」
「「?!」」

次の瞬間。
団長であるレオンの声がしたと思ったら、グリードとバルトロが各々第二会議室の端へと吹っ飛んでいた。


* * *
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