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本編
魔力タンクへ他者の魔力を溜めるには
しおりを挟む「えええええ?!あ、悪用防止って……確かに大事な事だけど、ちょ、えええええええーーーーー?!!」
グリードの言葉を聞いて、思わず私は取り乱してしまった。
ユベール先生。確かに悪用防止って大事だよ?セキュリティの“セ“の字も無さそうなこの世界で、ロックを掛けた専用魔導具を作るなんてめちゃくちゃ凄いと思う。思う、けど……!!
じゃあ、いざという時は魔力量の多い人にお願いしよー♪とか思っていた私の思惑は完全に無理じゃないですか!!私の魔力量だと、一本満タンにするのに二十日掛かるんだよ?!敵にバルトロみたいな奴が居たらどーするのさ?!あの試験の数十分で魔力タンク一本無くなったんだよ?!むしろ足りなくて、もう一本も三分の一くらい減ってたんだよ?!
なのに、ロックって……他の人の魔力は受け付けませんて、いつ開戦するかも分からないのにぃぃぃぃ!!!
私が絶望に打ちひしがれていると、グリードが何気無く提案してきた。
「……直接は無理だが、一度ロゼの身体を通り、魔力が混ざれば問題ない筈だ。魔力回復の要領でやれば、魔力を溜められると思うぞ」
「え……」
確かに、昨日寝る前にも魔力タンクへ魔力を注いだけど、いつも通り注げていた……と、思う。あまり量は変わっていなかったけど。昨日はグリードに魔力回復してもらっていたから、魔力の大半はグリードのものだったのに。
「……やってみるか?」
「そうですね。やって…………………………いえ、ちょっと待って下さい。魔力回復の要領でやるという事は……」
私はグリードにしてもらった魔力回復を思い出して、再び顔を赤くした。……なんというとばっちり。乙女ゲーム制作スタッフの陰謀が、こんなにも私の妨げになるなんて!!
要するにアレでしょう?グリードにずっと魔力回復してもらいながらじゃないと無理って事なんでしょう?!またアレを味わうのかっ……!死ぬほど恥ずかしいのにぃぃぃ!!
私がそう思って口を噤んでいると、グリードは何をどう思ったのか、少し控え目に見当違いな事を口走った。
「心配せずとも、魔力をケチったりはしない。何本でも協力する」
いやいやいやいやいや!!
違うから!違いますから!!そんな事、全く心配していませんから!!というか、何本でもって!!!
おち、落ち着け、私。とりあえず、一旦落ち着こう。そして、この話は保留にしよう。少し考える時間が欲しい。別にやらしい事をしている訳じゃないのに、こんなに恥ずかしいなんて完全に想定外。協力する気になってくれているグリードには悪いけど……
「あ、あの、グリード」
「なんだ?」
「さっき言っていた魔力を溜める方法自体は有効だと思うのですが、とりあえず今日は大丈……」
『大丈夫』と言おうとして、私の視界が急に真っ暗になった。別に倒れた訳でも、意識を失った訳でもない。お兄様とは違う匂いが私の鼻孔を擽る。
安心するような良い匂いと、温かなぬくもり。私は何故だか、グリードに抱き締められていた。
「……え?」
「有効かどうか、一応確認しておいた方がいい」
「??」
何?どゆこと??
突然の事についていけず、私が目を丸くしている内に、グリードは私の手に魔力タンクを持たせて握らせた。そして私を抱き締めたまま、私の首筋の魔道管に触れて、魔力を流し始めてしまったのだ。
「―――っ?!」
「魔力タンクにちゃんと魔力が注げるかどうか、試してみてくれ」
「待っ……」
「…………ロゼ?」
……………………
…………
グリードは、先程自分が言った方法が有効かどうか試そうと思っただけで、他意はなかったのだろう。
しかし、完全なる不意打ちで、何の心構えもしないまま、力の抜けた状態で魔力を流され、ロゼリアは耐える事が出来なかった。
* * *
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