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本編

ガーディアンナイト達の円卓会議

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騎士団本部にある『ガーディアンナイト』専用区域内にて。
豪華な派手さはないが、この区域だけは荘厳な造りになっており、騎士団の中でも彼等が『特別な存在』なのだと窺える。そんな『特別な存在』である彼等は、会議室に集まっていた。

現在、会議室内には『ガーディアンナイト』の【エース】【クィーン】【キング】【ジョーカー】が居り、円卓を囲んで席について居る。
今回初参加の【エース】であるグリードは、珍しく感情を露にしていて、不機嫌そうに眉間にシワを寄せていた。【ジョーカー】のリアムが、そんなグリードを見て可笑しそうに笑いを堪えている。見かねた【クィーン】の称号を持つ、フードを被った銀髪の美青年が、小さく溜め息をつきながらリアムに問い掛けた。

「リアム、今度は何をしでかしたのですか?新しく入ったグリード君、でしたっけ?彼の纏うオーラがピリピリと痛くて、肌に穴が空きそうなのですが……」
「ぶふっ!!止めてよ、ジェラルド!!必死に堪えていたのに笑いが……あははははっ!!」
「………………はぁ。グリード君?私は【クィーン】のジェラルド・アダリーです。リアムが何をしたのか知りませんが、もう少し気を収めてもらっても良いでしょうか?」

【クィーン】のジェラルドは黒いローブを着たリアムとは対照的に、全体的に白い印象を受ける。白いローブを身に纏い、フードの下からはふわりとした柔らかそうな銀色の髪と、アイスブルーの瞳、雪のような白い肌が覗いている。グリードやオリバーは美形であっても明らかに男だと分かるが、ジェラルドは中性的で、美人という言葉が当て嵌まる顔立ちをしていた。フードと前髪で、何故だか右目は隠れてしまっている。
ジェラルドの言葉を聞いて、グリードが姿勢を正し、自らも挨拶をした。

「先日の昇格試験で【エース】となったグリード・ルフスだ。呼び捨てで構わない。本来ならば俺の方から名乗るべきだったのに申し訳ない。ジェラルド殿」
「いえいえ。『ガーディアンナイト』同士で、上も下もありませんよ。私の事も、ジェラルドと呼び捨てで構いません。それで、何をされたのですか?」
「………………この間の昇格試験で、リアム殿は俺の試験官だったのだが」
「え?……すみません、もう一度お願いします。誰が試験官だったと?」
「…………だから、」

グリードがジェラルドの質問に答えようと再び口を開こうとした時、リアムが得意気な笑みを浮かべて「私だよ!」と話に割り込んできた。

「私が試験官を務めたのさ!それで、私から合格点を取れたら『ガーディアンナイト』の【エース】か【ジャック】にしてあげるって言ったんだ。それで彼は……」
「俺は【ジャック】を望んだ。なのに、【エース】にされた」
「え……」

グリードがリアムを鋭い瞳で睨み付けると、リアムは上機嫌にニコニコと笑った。

「確かに私は【エース】と【ジャック】が空いてると言ったけど、どちらか好きな方にしてあげるとは、一言も言ってないけど?」
「ならば、何故試験終了後にどちらが良いか訊いたんだ?」
「ん?どっちでも申請出来たから♪」
「貴様っ……!!」

グリードがリアムに対して声を荒げそうになった瞬間、ずっと沈黙していた黒髪の厳つい強面の男が顔を上げた。

「煩い。少し黙っていろ、お前達。……グリード、俺は【キング】のレオンだ。呼び捨てでも、キングでも、団長でも、好きに呼べ。それと、『ガーディアンナイト』はスペード王国騎士団最高位の役職だ。それ故、一度決まってしまったら変更は有り得ない。【キング】だけは、条件が揃えば変更可能だがな」
「……そうですか」

グリードは苦々しげに顔を歪めた。
レオンはそんなグリードを見て何かを少し考えていたが、会議室の扉を誰かにノックされて思考が引き戻される。

「私です。入っても良いですか?」
「どうぞ、お入り下さい。王太子殿下」

会議室の重厚な扉が開き、金髪碧眼のいかにもといった感じの、この国の王子が中へと入って来た。
騎士団の者達程ではないが、普段から鍛えているという事が分かる美丈夫で、爽やかな笑顔を浮かべている。

「遅れてしまって申し訳ありません、ガーディアンナイトの皆様」
「お気になさらず、殿下」
「ありがとうございます。では、この間の事件に関与していたと思われる赤髪の男……ダイア公国第三王子・・・・の事について会議を始めましょうか」


* * *
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