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本編
ロゼの魔力暴走*グリードside*
しおりを挟む『また後で会おう』
別れ際、俺はオリバーとセルジュ―――ロゼリアにそう言った。
隊長に訊いてみたところ、ロゼリアはもう明日には王都へ帰ってしまうらしい。故に、ロゼリアが泊まっている部屋まで会いに来た訳だが……
―――この魔力は何だ?
部屋の扉がガタガタと激しく揺れている。壊れないのは結界が張ってあったせいか。しかし、その結界も、もう限界らしい。俺は眉間にシワを寄せながら扉をノックするけれど、中から返事は無い。
「……まさか、魔力が暴走しているのか?」
考えている時間は無さそうだ。
俺は身体強化してから、部屋の扉を思い切り蹴破った。すると、扉が開いたと同時に激しい風が吹き荒れて、室内の家具があちこちに飛んでいく。時々何かが壁に当たって、ガシャン!!と割れる音が聞こえてくる。どうやら結界は完全に壊れてしまったようだ。
渦巻く強風の中心に居るのは、この部屋に泊まっているロゼリアだった。どうやら意識は無いようで、床に倒れている。けれども、巻き上がる割れた食器類の欠片や、暴走によってエアカッター等の風魔法も発動しているのか、それらの影響でロゼリアの白い肌にはいくつもの傷がついていく。
赤い血。
ロゼリアの―――
「ロゼリア!!」
俺は身体強化したまま、中心に居るロゼリアの元へと勢いよく飛び込んだ。その際、手足や顔に切傷が出来ていくが、構うものか。素早くロゼリアを抱き起こし、魔力が暴走を引き起こしている原因を探る。
「ロゼリア!ロゼリア!」
呼び掛けても、ロゼリアの意識は戻りそうにない。仕方無く、暴れ狂っている魔力を抑えようと、魔道管に触れた。
―――バチッ!!
「……っ!」
触れた瞬間、指先にバチバチと雷のようなものが走り、俺の指先に次々と切傷が出来ていく。
だが、構わず俺の魔力を流していくと、部屋の外からバタバタと誰かの走ってくる音が聞こえてきた。
「ロゼ!……これは一体……?グリード?!」
走ってきたのはオリバーだった。しかし今はオリバーと話している余裕はない。俺は少しずつ少しずつ慎重に魔力を流し、暴れているロゼリアの魔力を俺の魔力と同調させていく。
本来ならば、魔力暴走を引き起こしている本人の意識を断つなり、本人が自力で正気を取り戻すなりが一般的で安全なやり方だ。だが、今の時点でロゼリアに意識は無い。既に意識の無い者の魔力暴走となると、無理矢理他者の魔力で抑え込むしかないのだ。
「……大丈夫だ。落ち着け、ロゼリア。ほら、お前の知っている魔力だろう?」
「う……」
意識は無いが、ロゼリアがいつかのように俺の首に腕を回してきた。俺はほんの少しだけ苦笑しながら、魔力を流し続ける。
「……暴走のせいで、既に涸渇していたようだな」
魔力涸渇した状態で無理に魔力を使い過ぎると、魔道管が塞がって魔法が使えなくなってしまう。それだけならまだいいが、最悪の場合、生命力を全て魔力に変換させてしまい、死に至る事もある。今回は発見が早かったのか、そのどちらも大丈夫そうだ。
魔力回復は、自分と相手の属性の数が近しい程、抵抗なく魔力に馴染む。以前にも思った事だが、俺の魔力と馴染むだなんて、やはりロゼリアの属性の数は―――……
「……い、たい……」
「!……そうか、気が回らなくてすまない。回復もしておこう。ヒール」
「う……」
魔力を流しつつ、傷も一緒に治していく。
ロゼリアが、魔力を欲しがっている。こんな状況なのに、俺は何故だかそれが嬉しくて―――
「好きなだけ俺の魔力を持っていけ。お前になら、いくらでもくれてやる。―――ロゼ」
……オリバーから殺気を感じる。
けれども、俺は気にしなかった。俺の胸の内は、ロゼリアへの想いで満ちていたから。
* * *
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