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本編
事情聴取
しおりを挟む『内緒だよ。今はまだ、誰にも。……だけど、知っていて欲しい。ロゼと居る時の、私の鼓動を』
ど………………
どーゆう……意味?
お兄様、それってどーゆう……?!
駄目駄目駄目。落ち着いて、ロゼリア。顔が緩んでる!緩んでるからね?!
これから事情聴取だから。
こんなニヤニヤしながら事情聴取とかおかしいから!でもでも……
―――ぎゅっ。
「?!」
「ロゼ、落ち着かないのかい?隊長が来るまで、私が抱き締めていてあげるよ」
「お、お兄様!」
「ふふ、駄目だね。騎士団に入団してから昨日まで、一度もロゼに会えていなかったから。……本当は、私がロゼを抱き締めていたいだけなんだ」
ぐはっ!!
本当の本当にどーゆう意味なんですか?!ストレートに受け取っても宜しいんですか?!
フラれたと思って意気消沈していたところに、あの内緒話やお兄様のこの態度。いや、態度の方は通常運転、かな?
あれですか?お兄様は相手を落としてから上げるタイプなんですか??
でもでも、どうやら私はまだお兄様を諦めなくても………………
いやいやいや、そもそも諦めるとか諦めないとかじゃないからっ!あまり期待しちゃ駄目。お兄様にはいずれ好きになるヒロインが居るんだから。ヒロインが………………
「ロゼ、ロゼ。私の可愛いロゼ」
「…………」
…………本当にお兄様は、脱シスコン出来るの?こんな調子で、本当にヒロインを好きになるの??
確かにこの世界はあの乙女ゲームの世界だけど、今回の事件だってシナリオより早く起きてるし、お兄様がヒロインを好きにならない事だって有り得るんじゃ……
―――コンコン。
「オリバー・バルトフェルト。ロゼリアへの事情聴取に来た。入ってもいいか?」
部屋の外から、騎士団第三部隊隊長の声が聞こえてきた。砦に来た時、私とお兄様を出迎えてくれた、あの隊長さんだ。お兄様がすぐに返事をして、隊長さんを迎え入れる為に、部屋の扉を開けに行く。
私は思考を中断させて、これから行われる事情聴取に向けて気を引き締めたのだった。
……………………
…………
隊長さんを部屋に招き入れた後、お兄様がお茶を淹れてくれました。「私が淹れます」と言ったけれど、お兄様が「今の私は見習い騎士だから」と言って譲らなかったので、お兄様の申し出に甘えさせてもらいました。
私と隊長さんは、テーブルを挟んで向かい合うように、各々ソファーに座った。お兄様もお茶を淹れ終わってから、私の隣にやって来て、スッと腰を下ろす。お兄様が座ったのを確認すると、いよいよ隊長さんが本題の事情聴取を開始した。
「改めて名乗ろう。私はスペード王国騎士団第三部隊隊長のルイス・アーノルドだ。ロゼリア、質問には出来るだけ答えてもらいたいが、無理はしなくていい。では、事情聴取を始めさせてもらう」
「はい」
「まずは拐われた時の事から話してもらえるかな?」
「分かりました」
そうして私は、屋敷内で拐われた時の事、気付いたら国境近くの倉庫に連れて来られていた事を話した。屋敷内で私を拐ったのは、恐らくメイドのメルだ。きっと他の犯人達と一緒に捕縛されているだろうと思って、メルの事を訊いてみた。
けれど―――
「あの、隊長様」
「ルイスで構わないぞ」
「ありがとうございます。では、ルイス様。訊いても宜しいでしょうか?」
「なんだい?」
「捕縛した犯人達の中に、メイド服を着た女性がいらっしゃいますよね?」
私の質問に、ルイス様は目を見開いた。
そして眉間にシワを寄せ、難しい顔をする。
あれ?私、何か変な事を言ったかな?
「……メイド服の女性が犯人側に居たという事か?」
「はい。……あの、もしかして……?」
「ああ。そのような女性は捕まえていない。捕まえた犯人達の中に、女性は居なかった」
「?!」
「そのメイド服の女性の事を教えてくれ」
「はい。名前はメルと言います。……我がバルトフェルト家で雇っていた住み込みのメイドです」
「なんだと?!」
「そんな!ロゼ、本当にメルが?」
「はい。本当の名前はメルカだと思います。犯人達の一人にそう呼ばれていたので。メルが言っていました。自分は、誘拐出来そうな魔力持ちの少女の、情報収集係だったのだと。元々ダイア公国の人間なのだと、そう、言っていました……」
……メルは、捕まっていなかった。
訊けば、貴族風の壮年の男性も居なかったそうだ。どうやって逃げおおせたのか……
私は赤髪にされた事を思い出し、身体に僅かな震えが走った。あの壮年の男性は、赤髪の男に次いで、一番捕まえておかなければならない人だ。
せっかく助かったのに、私の胸の内は不安でいっぱいになってしまった。奴等は、きっとまた私の前に現れる。何故だか私はそう確信していた―――……
* * *
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