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本編
内緒だよ
しおりを挟むお兄様にフラれた。
お兄様的には深い意味なんて無かったのかもしれないけどさ。いや、でも、あのタイミングって意図的っぽくない?あえて釘刺されたんだったら立ち直れないかもしれない。
だってあのタイミングだよ??
私が馬鹿みたいに意識してたのがバレバレで、そこを釘刺されたと思うのが普通でしょ。
もうやだ。穴に入りたい。死にたい。どうせ私はモブだし、お兄様は再来年にはヒロインと出会うんだもの。やっぱり私はモブで妹でしかないんだわ。夢見た私、さようなら。
……お兄様の事が大好きなのは変わらないし、例えこの気持ちを『恋』にする事が出来なくても、妹として傍に居られれば……
私の目的はお兄様を救う事なんだし。お兄様の命が助かるなら、それに勝る事なんて無いし、お兄様の心まで望んじゃ駄目ですよね。…………お兄様がシナリオ通りヒロインに恋をしたら、休暇の時、私に相談してきたりして。
あは、本当に泣きそう。
「……ロゼ、どうしたんだい?」
「…………」
明らかにフラれた。
フラれたと思う。
なのに、お兄様はやっぱり宣言通り、私と同じ部屋、同じベッドで私を抱き締めながら眠った。
おかしくない?
ねぇ、おかしいよね?言葉と行動が伴ってなくない?それとも、お兄様にとって私はそこまでお子様扱いなの?だから服も平気で脱がせるし、平気で一緒に眠るの?!この世界の兄妹って関係が濃厚過ぎない?!
前からスキンシップ凄いなあとは思ってたけどさ!!
この世界の兄妹って凄いわ……
前世で恋愛経験少ない私は勘違いしちゃうって。馬鹿馬鹿馬鹿!お兄様の馬鹿!アホ!おたんこなす!色男!イケメン!!優しい!!笑顔が可愛い!!
途中から悪口ではなく褒め言葉になってしまう……
だってお兄様って悪いとこ無いんだもの。頭よし、運動よし、見た目よし、家柄よし。
「ロゼ?」
「……お兄様の馬鹿」
「え?」
「もおお!!心の中で悪口すら言えない程完璧だなんて卑怯です!!」
「悪口?!ちょ、ロゼ?!」
「お兄様なんて知らないです!!」
「ま、待ってくれ、ロゼ!!」
「むぐっ?!」
いくらお兄様に怒ったところで、私達は同じベッドの中。しかも向かい合って抱き締め合っていたので、離れようと思ってもなかなか離れられない訳で。お兄様にぎゅうっと抱き締められて、私が少しくらい暴れても、お兄様は微動だにしない。
くっ!力強くて逞しいお兄様にきゅんとなんてしないんだから!!
「お兄様、離して下さい!」
「どうしてそんなに怒っているんだい?理由を教えておくれ、私の可愛いロゼリア」
そう言ってお兄様が、私の額や瞼にキスをしてくる。もお!!この世界の兄妹はまるで恋人かっ!!
ドキドキなんてしませんからっ!!
「んっ。お、お兄様?昨日も言いましたけど、私はこれでも女なのですよ?!いくら兄妹だからって、そんな風にしては……ひゃあっ?!」
お兄様に耳を甘噛みされて、私は思わず奇声を上げてしまった。
待って下さい!!本当にこの世界の兄妹はこーゆう事をしているんですか?!もしかして、私とお兄様だけなんじゃない?!
「お、お兄様……っ!だ、め……」
「可愛いロゼ。怒っている理由を教えておくれ?」
「私は、怒ってなんか……っ」
「怒っているんだろう?私が何かしてしまったなら謝るよ。ロゼ、お願いだ。……何故怒っているんだい?」
お兄様の低くて甘い声を耳に直接流し込まれて、私はもう何も考えられなくなっていた。
最推しのお兄様にこんな風に問い詰められたら、抵抗なんて出来る筈ない。私は顔を真っ赤にして、身体を震わせながらお兄様に答えた。
「わ、私は、お兄様にとってはただの『妹』かもしれませんけど、私はお兄様の事を、その……」
「うん?」
「と、とても素敵な人だと、思っていまして…………」
「………」
「だから、笑われるかもしれませんけど、お兄様といると、ドキドキしてしまって…………」
「………ロゼ」
「でも、お兄様は全然、平気みたいだから。それが普通なんでしょうけど、だから、私は、その……」
「ロゼ!」
「はっはいぃ!!」
お兄様に愛称を呼ばれて、私は素っ頓狂な返事をしてしまった。恥ずかしいけど、お兄様があまりに熱っぽく私を見てくるから、目を逸らす事が出来ない。
―――どうして、そんな熱っぽい瞳で私を見るの?
お兄様にとって、私はただの『妹』なんでしょう?なら、そんな瞳で見ないで。私、また変な勘違いしちゃう。これ以上私を惑わさないで。
そんな私の願いとは裏腹に、お兄様は優しく私の手を取って、そっと自分の胸に私の手を当てた。
お兄様の心臓の鼓動は、私が思っていたよりも全然早くて。私は思わず目を見開き、お兄様を見上げた。
「私の鼓動が分かるかい?」
「は、い。……とても早く、感じます……」
「ロゼと一緒に居るからね」
「え?……でも、お兄様……」
お兄様は私の手を口元へと引き寄せて、私の指先にキスをした。
そして、私の耳元に、小さな小さな声で囁いた。
「内緒だよ。今はまだ、誰にも。……だけど、知っていて欲しい。ロゼと居る時の、私の鼓動を」
* * *
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