上 下
72 / 245
本編

なかなか誤魔化せない相手

しおりを挟む


「グリード?」
「……久しぶりだな、セルジュ」
「!?」

この時ほど、私は自分の迂闊さを呪った事はない。

ロゼリアがグリードを知っている筈ないのに、名前を呼んじゃ駄目じゃんんん!!!やらかしたっ!!!しかも、グリードにも普通にバレてるし!!
ロゼリアとセルジュって見た目結構違うのに、なんですぐにバレたの?あああああ?!お兄様が、お兄様がすごい顔してるううう!!!

「ロゼ。これは一体どういう事なんだい?」
「いえ、あの、その………………」
「本当の名はロゼというのか?まさかオリバーの妹だったとは」
「いやいやいや!!あの、その、人違いです!私はロゼリア・バルトフェルトと申しまして、セルジュは従兄弟なのです!似ていますが、別人なのですわ!!」
「別人?そんな筈はない。その声は間違いなくセルジュだ」
「なっ……」

何その自信?!数える程しか話した事ないのに?!
……でも、確かに声は魔導具使ってないもんね。使ってない、けど。セルジュの時はなるべく意識して低くしてるつもりなのに。そんなに分かっちゃうものなのかな??

そう考えつつ、私をお姫様抱っこしていたお兄様が、何となく状況を察してくれたようで、助け船を出してくれた。……けれど。

「グリード。確かにロゼとセルジュは見た目も声も、とてもよく似ているんだ。でも、似ているだけで同じじゃない。髪色や瞳の色も違うし、何より、セルジュは男でロゼは女の子だ」
「……オリバー、別に俺は誰かに喋ったり等しない。だから、安心しろ」

安心出来る訳ないでしょ!!
というか、信じて!!最初にやらかしたのは私だけど、お兄様の言葉を信じて、誤魔化されて下さい!!
またお兄様に叱られちゃうでしょ?!もう動物姫シリーズは勘弁して欲しいの!!もう少しで私、13歳なんですよ?!

「あの、私、本当にセルジュではないんです……!」

私が困った顔をしている事に気付いたのだろう。グリードはじっと私を見つめてから、少しだけ気落ちしたようにしゅんと肩を落として、視線を逸らした。

「…………分かった」

分かってくれましたか?!

私が期待しながらグリードを見ていると、グリードは不意に何かを思い出したようで、私とお兄様の前に暗器用のベルトを差し出した。

「ああ、うっかりしていた。暗器用のベルトを拾ったのだが……」
「それは……!」
「やはり、貴女のものか?」
「はい。……私の、です」

赤髪の男に外されたベルト。
太股を舐める舌の感触を思い出してしまい、ベルトを受け取るのを躊躇ってしまう。すると、私の様子に気付いて、お兄様が私の代わりにベルトを受け取ってくれた。ナイフと魔力タンクも。

「……妹の物を届けて下さってありがとうございます」
「なんだ?また敬語に戻すのか?」
「まだ見習いで年下なのにすみません」
「気にするな。敬語より、さっきまでのように普通に話してくれ」
「……分かった」

あれ?
お兄様とグリード、意外に仲良し??

私が会話する二人を交互に見ていると、お兄様がふわりと私を持ち上げて、馬の上に乗せてくれた。次いでお兄様も、慣れた動作で馬に跨がり、私を後ろからしっかりとホールドしてくれる。

「グリード。すまないが、私は妹を早く休ませたい。先に砦へ向かわせてもらう」
「ああ、分かった。また後で会おう」
「…………ああ」

お兄様が軽く馬のお腹を蹴って、馬が緩やかに走り出した。行きは光属性持ちの騎士様達で馬に回復魔法をかけながら来たらしく、ビュンビュン飛ばして来れたみたいだけど、私とお兄様は光属性を持っていないので、少し時間をかけながら砦へと向かった。


* * *

しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...