70 / 245
本編
一番安心出来る場所
しおりを挟む「お兄様っ……お兄様ぁ!」
私は漸く動くようになった身体で、お兄様の首に腕を回した。ぎゅっとしがみつきながら、お兄様を何度も何度も呼ぶと、そんな私に応えて、お兄様も私を強く抱き締めてくれる。
「ロゼ、もう大丈夫だから。恐かっただろう?」
「お兄様……!」
ああ、お兄様だ!お兄様が助けてくれた!お兄様お兄様……!!
私はお兄様の温もりを感じて、漸く安心する事が出来た。やっぱりお兄様が一番安心する。ピンチの時に駆けつけてくれるとか、ヒーローそのものね!私が甘えるようにお兄様に頬擦りをすると、お兄様が少しだけ私を抱き締める力を緩めた。
「落ち着いたかい?」
「はい、お兄様のお陰です。こうしてお兄様に抱き締めてもらうと、とても安心して落ち着きます」
「……それは嬉しいな。ロゼ、痛い所や、どこか違和感を感じるような所はあるかい?」
「大丈夫です。痺れ薬を嗅がされていたけれど、さっきの騎士様の魔法で治りましたから。……ああ、でも……」
「ロゼ?こんな時に遠慮なんてしてはいけないよ?私に出来る事なら、何でも言って欲しい」
お兄様の心配そうな瞳を見て、私は言い難いと思いつつも、少しだけ瞳を伏せてから、右の太股の事を話した。
「さっきの赤い髪の男に、太股を…………その、舐められて。気持ち悪いので、洗いたいです……」
「なっ?!」
「変なお願いをしてしまってごめんなさい、お兄様。だけど、私……………………お兄様?」
お兄様の身体が少しだけ震えている。寒いのかな?夜だしね。
私はお兄様が寒くないように、なるべく密着する。服着てるけど、この方が少しは暖かいかもしれないし。
すると、お兄様の震えが止まった。
やっぱり寒かったんだね!
「怒りでどうにかなりそうだった。……ロゼ、砦に行ったら湯殿を借りて、私が洗ってあげるよ。ちゃんと綺麗にしてあげるから、安心するといい」
え?!
「お、お兄様が洗って下さるのですか?」
それは流石に色々と宜しくないような?!
「大丈夫だよ。洗うのは太股だけだし、私は目隠しをしておくから。それに、ロゼには濡れてもいい服を着ていてもらうし」
「!」
私は服を着たまま入ればいいんですね!その上で太股を見ないように目隠しまでするだなんて、流石はお兄様!!なんて紳士なの?!
聞きましたか、赤髪野郎っ!!私のお兄様は貴方とは比べ物にならないくらい格好いいんだからね!!
月とスッポン、美女と野獣なんだからっ!!
「お兄様大好き!!」
「私もだよ、ロゼ!……太股以外は大丈夫かい?」
「はい、太股以外は大丈夫です。一度逃げ出した時にお腹を殴られたりしたけど、身体強化していたからそれほど痛くなかったですし……」
「は?……ロゼを殴った?ロゼのお腹を?」
「え?ええっと、はい。……殴られました。あんな生身の男に殴られるなんて、情けないですよね……」
私が少し気落ちして言うと、お兄様が「どいつだ?それもさっきの赤髪か?」と訊いてきた。
……何かお兄様、瞳孔開いてない??
私は、私とお兄様の居る位置からは少し離れた所に居る捕縛された男達を眺めて見るが、どうにも私を殴った男が見当たらない。一人だけ背格好の似ている男を見つけたが、流血し過ぎてて顔の判別が不可能だった。
「えっと…………背格好的には、あそこで倒れてる人が似てますけど。顔がちょっと…………」
「ああ、あいつか……」
「お兄様??」
私が不思議そうに首を傾げると、「あいつはここに来て最初にオリバーに殴られた奴だな」とお兄様ではない別の誰かが答えた。
聞き覚えのある、低くてよく通ったこのイケボは…………
「グリード?」
* * *
11
お気に入りに追加
3,828
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる