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本編

通気口

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……とりあえず、逃げなきゃ。
よく考えてみたら、犯人達の言っていた事を鵜呑みにするなんて…………
いや、うん。
本当かどうかは、今は考えない。
お母様やお父様の無事も気になるし、今は逃げる事が最優先!!

「魔法は使えるかな?……部屋に魔法封じとか、してなきゃいいけど。【エアカッター】」

風で縄が切れるようイメージすると、縄がブツンブツンと切れた。

やったね。魔法が使えるならこっちのものだ。
立ち上がろうとして、自分がヒラリとしたワンピースを着ている事を思い出した。そこまで長くもないけど、ヒラヒラしていたら邪魔だよね。切るか。というか、晩ご飯食べてないからお腹空いてきた。何か持ってなかったっけ……?
そう思ってポケットなり自分の身に付けている物を確認してみると、ワンピースの下、右の太股に魔力タンクとナイフを装備していた事を思い出した。
こう見えて私、飛び道具得意ですから!!
まさか屋敷内で襲われるとは思ってなかったけど、格好いいなと思ってナイフ装備してた私、グッジョブ。魔力タンクは魔力を溜める為だけに持ち歩いていたもので、セットする専用魔導具は着けてないからなあ。一応割れば使えるけど、一回こっきりだし、本当に危ないと思った時に使おう。……早くしないと、さっきの奴等が戻ってきちゃう。

私は少しでも動きやすくなるように、ワンピースの裾を切って短くした。今世では初のミニスカート状態となった訳だが、緊急事態ですからね。鍵のかかった扉以外に、どこか出口は無いのだろうか?

「……アニメとかなら、こーゆう時って通気口とかから出たりするよね。んーと、これか。…………うわ、通気口なのに凄い埃。アニメの人達はよくこんな中に入ろうと思ったよね。【浄化】」

私が『生活魔法』の一種である浄化を発動させると、埃や蜘蛛の巣なんかが一瞬で消えて、通気口の中が綺麗になった。

「……綺麗過ぎてバレないかな?まぁいいや、とりあえず入ろう。狭いけど、匍匐前進ならいける……!」

こうして私は、何とか通気口の中を進んで行ったのだった。

……………………
…………

ロゼリアが通気口を進みだしてから、およそ二十分後。
ロゼリアが捕らわれていた部屋へ、先程の犯人達が魔力測定魔導具を持って戻ってきた。ガチャリと鍵を開けて、中に足を踏み入れる。そこで犯人達は、初めてロゼリアが居ない事に気付いた。

「あの娘が居ないぞ?!どこへ行きやがった?!」
「縄が切れてやがる!くそっ!!あのガキ、間違いなく魔力持ちだ!!魔法で縄を切りやがったんだ!!」
「探せ!!他の奴にも連絡しろ!!閣下達が来る前に捕まえねーとヤバイぞ!!」
「分かってるよ!!あのガキ、捕まえたら痛い目をみせてやる!!」

バタバタと部屋から走り去る犯人達。通気口の中を地道に進んでいたロゼリアにも、彼等の声は僅かに聞こえていて、ビクリと肩を揺らしながらも必死に己を奮い立たせる。

「大丈夫。大丈夫。……恐くない、恐くない。…………お兄様…………」

視界が涙で滲みながらも、ロゼリアは独り、前へと進んだ。



* * *

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