【R18】乙女ゲームの悪役令息の妹に転生しました!お兄様の処刑フラグを全力で叩き壊します!!

はる乃

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本編

時の流れはあっという間

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あれから二年経ちました。

お兄様は、本当は辞めて欲しいと言いながらも見逃してくれた。お母様にも何も言わずにいてくれて、私とお兄様はいつも通りの毎日を送っている。

そして、最近スペード王国では原因不明の失踪事件が多発していた。噂では、ダイア公国が絡んでいるとかいないとか。これはいよいよシナリオ通りに、開戦に向けて何かが動き出してしまったのだろうか?
私は不安を抱えつつ、腕に試作品の魔導具をつけて、魔法の訓練場へと向かっていた。

ユベール先生は、あの一件でかなりお兄様に睨まれてしまったけれど、元々良い先生だし、あれは安易にお願いしてしまった私が悪かったので、今でもユベール先生は普通に良き先生として私達に魔法と魔導具の事について教えてくれている。
そして、私が訊いた魔力タンクの事も、落ち着いてからきちんと教えて下さいました!!既に大型の魔力タンクは存在していたけれど、小型のものは無かったので、現在は試作品を作りお試し中なのです。大型の魔力タンクより、小型の魔力タンクの方が魔力を圧縮するのが難しいらしい。圧縮する、というイメージが上手く出来ないようだ。だけど、前世の記憶がある私は、こっちの世界の人より圧縮するイメージが出来る。と思う。
なので、今週に入ってからユベール先生に試作品を貸してもらい、今日は試し打ちしてみます!!

「第三訓練場。ここの個人用スペース!予約入れといたから、二時間は使い放題!!」

三年生になった私は、運良く上位成績優秀者に入れたので、自分に合った鍛練をする為の時間があるのだ。上位に入れたのは弓と暗器、そして魔法。あははー見事に飛び道具オンリー。剣術や槍術は短期戦なら何とかなるんだけど、長期戦になると体力が保てないのでギリギリ上位には入れませんでした。アレクとロイは剣術の上位に入ってます。
……ちなみに、今現在お兄様は14歳で最終学年。今年15歳になるから、来年には騎士団に入団しちゃいます。グリードは今年卒業して、もう騎士団に入団しちゃいました。グリードはこれから伝説的な早さで【ガーディアンナイト】の【エース】になっちゃう訳です。時が経つのは早いね。

卒業式の時に貰っていた魔通石を返そうとしたら

『いい。セルジュが持っていてくれ。……本当に助けが必要な時は、俺を呼べ』

と言って、結局私が持ったまま。いいのかな?というか、後から思い出したんだけど、魔通石ってヒロインに渡すアイテムだった気がするんだよね。ヒロインが攻略対象者と仲良くなっていくと、攻略対象者が自分のイメージカラーの石をヒロインに渡していくの。
お兄様は夜空のような深い群青色。グリードは深い緑色。
なので、私が持っていたら駄目な気がするんだけど……
まぁ、いいか。とりあえず、試し打ちだ。

「今週中、ずっと魔力を溜めてたからね。……きちんと発動しますように」

私は個人用の訓練スペースで、外からは何も見えないように訓練場に備わっているマジックカーテンと音の遮断魔法を使用し、空に向けて右手を掲げた。左手は、右腕につけている魔力タンクに添えている。

「イメージ。皆を守れる防御結界。…………【絶対防御パーフェクトシールド】!」

* * *

私は瞠目し、ただただ魅入っていた。唱えた瞬間に五つの巨大な魔法陣が空中で組上がっていく。その光景があまりにもファンタジーそのもので、幻想的で、カシャンカシャンと重なる魔法陣から目が離せない。

途中で弾ける事なく、綺麗に完成された巨大な魔法陣。そして―――【発動】


「?!!」


攻撃系ではない為、訓練場に害は無い。けれど、【絶対防御パーフェクトシールド】はかなりの広範囲魔法で。ソレは訓練場いっぱいに広がって、更に外へ出ようとする勢いで、ぱんぱんに膨れ上がってる。
そうして私はまたもや瞠目した。試作品の魔導具に【絶対防御】の範囲数値が表示されていたからだ。精々数百メートル位かと思っていたのに、表示されている防御可能範囲が、半径七キロメートル。もっと魔力の出力を上げれば、王都の半分は守れる。溜めた魔力を全部使って七キロメートルなら、更に今ある魔力を上乗せすれば―――

「……っ?!」

私の視界が揺れた。
寸でのところで魔力制御を行い、魔力涸渇ギリギリで抑えた。少しだけフラつきながらも、倒れるまでには至らない。

良かった。これなら少し休めば、すぐに動けるようになる。
そうして私は、歓喜に打ち震えた。

「やった……!!!」

絶対防御パーフェクトシールド】を、無事に発動させる事が出来た。一瞬で消えてしまっては意味がないから、範囲の他、より長く魔法を持続させる為にかなりの魔力を要するが、魔力タンクさえあれば解決出来る。七日分で七キロメートル。今回は範囲にばかり気を取られてしまったけど、次は持続時間の検証もしないといけない。

……時間かかるなぁ。生れつき魔力量の多い攻略対象者達が羨ましい。

「でも。……私はモブだけど、何とか出来そう。きっと上手くいくよね」

私は訓練場の草の生えた地面に寝転がり、青く澄み切った空を仰いだ。

大丈夫。きっときっと上手くいく。
後は無事に、騎士団に入れれば何の問題もない。私は、私の家族の未来を変えられる。

私はついつい安心してしまって、残り時間は眠ってしまった。次の授業には遅刻してしまうのだが、それでも私は嬉しさを抑えるのに必死で、先生のお説教など、まるで耳に入って来なかった。



* * *

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