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本編
特別講師のユベール先生
しおりを挟む「特別講師として来た、ユベールです。宜しくお願いします」
ロイが言っていた通り、今日の魔法の授業から特別講師の先生がやって来た。ユベール先生は魔法師らしいローブを着ていて、フードを目深に被っていた。そのせいで顔がよく見えなかったけど、先生の授業は様々な魔法式や魔導具の話が聞けて、とても面白かった。授業が終わった後、私は意気揚々と先生の元へと走り寄って話し掛けた。
「先生!ユベール先生!魔導具について質問してもいいですか?!」
あまりに私が嬉しそうに話し掛けたせいか、ユベール先生は少し驚いたようで、ピシッと数秒固まってから私に答えてくれた。
「……そんなに嬉しそうな顔で質問をしに来る生徒は珍しいですね。魔導具作りは地味ですし、私自身もあまり身形を気にしませんから、話し掛け難いと言われるのですが……」
「魔導具は便利で凄く画期的ですよ!全然地味なんかじゃないです!それに、先生は魔法師なんですからローブを着てるのなんて普通でしょう?」
「………………確かに、ローブは普通ですね。君、魔導具作りに興味があるのかい?名前は?」
「セルジュ・プランドルです!質問してもいいですか?!」
「ちょっと待って下さいね。この後、学校長に呼ばれているのです。お昼休憩の時でもいいですか?」
「是非!!」
「ふふ、分かりました。ではお昼休憩になりましたら、第2魔法教材室まで来てください。魔導具好きさんは大歓迎ですから、昼食もご馳走しましょう」
「ありがとうございます!!」
「それでは、お昼休憩にお待ちしてますね」
……………………
…………
ユベール先生、めっちゃいい人なんですけど!!それに顔は分かんなかったけど、思ってたより若そう。これはアレですね。フード取ったらイケメンでした的なやつでは?!
魔法師団の人なら攻略対象者じゃないし、機会があったら覗いてみよう。
お昼休憩楽しみ~~!!
これで魔力タンクが実現可能かどうか訊けるし、もしかしたら既に存在してるかもだし!それに、魔導具作りって実際面白そうだしね。いっぱい訊いちゃお♪
私は上機嫌でお昼休憩の時間がやって来るのを待った。その時の私は、今朝グリードに言われた忠告なんて頭からスポンと抜け落ちてしまっていたので、私と目が合う度に、ロイが鼻を押さえるのを不思議に思っていた。
後になって、アレクに「セルジュ、お前今日は笑顔振り撒きすぎ。犠牲者凄いぞ」と言われて気付いた。
おかしいな。今の私は化粧やら何やらで一応美少年な筈なのに、笑うとそんなに酷い顔なの?それなら、普段の私の笑顔もヤバイんじゃない?お兄様の前だとつい嬉しくて口元緩んじゃうけど、ずっとヤバかったって事??何それ恐い。
…………帰ったらお兄様に聞いてみようかな。
* * *
いよいよお昼休憩の時間がやって来ました!!私はアレクとロイに、今日は一緒に昼食が食べれない事を伝えて、第2魔法教材室まで向かった。
途中、女子生徒達や研究会の人達に捕まりそうになったけれど、何とか無事に逃げ切る事が出来た。
「第2魔法教材室…………あった!」
目当ての第2魔法教材室に辿り着き、私は一度呼吸をしてから、教材室の扉をノックした。
「セルジュです」
「ああ、入っていいですよー」
「失礼します」
扉を開けて中へ入ると、沢山の魔導具や魔法書があちこちに置かれていて、奥にある机の上だけが綺麗に片付けられていた。
魔法使いや学者さんあるあるな、お約束的お部屋だなあ。でもこーゆうのって好き。見るだけで楽しいし。
「すみません、まだ片付け済んでいなくて……」
「いえ、全然大丈夫です!」
「今お茶を淹れますね。それと、昼食は学食で作って貰った特製サンドウィッチですよ」
「ありがとうございます!」
「苦手な食材はありますか?サンドウィッチで大丈夫でしたか?」
「大丈夫です!サンドウィッチ、好きですから」
私がそう答えると、ユベール先生は安心したように、口元に笑みを浮かべた。フードのせいで瞳は見えないけど、何となく優しく細められているような気がした。
「それは良かった。ゆっくり昼食を楽しんだら、魔導具についての質問をお聞きしましょう」
* * *
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