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本編

ロゼが可愛すぎて死ぬ*オリバーside*(改稿しました、1/1)

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その日。
学校から家に帰り、湯殿に入った後。私は廊下でロゼと出会った。嬉しくなってすぐに近寄ると、ロゼの顔色がいつもより優れない事に気付く。

ロゼに訊いてみると、特訓で魔力を使いすぎたのだと言われた。前に2人で特訓していた時も、ロゼは度々魔力を使いすぎる事があった為、その時の私は然程不自然に思わなかった。
魔力不足になると、目眩や吐き気を起こしたり、身体に力が入らず一時的に動けなくなったりしてしまう。私は身体が辛いだろうと思い、ロゼを横抱きに抱き上げた。ロゼも嬉しそうに微笑んで、私に柔らかな頬を寄せて、くっついてきてくれる。

ロゼ、ロゼ。なんて可愛いんだ。
私の胸が温かく満たされていると、不意に気付いた。
それは偶然だった。横抱きにしていたから、偶々私の手が膝裏の魔道管に触れたのだ。

(―――なんだ?)

ピリリと感じる違和感。
学校に入学するまで、私は毎日ロゼと魔法の特訓をしていた。だからこそ、ロゼの魔力を幾度となくこの身で感じ取って来た私には、すぐに気付く事が出来たのだろう。
魔道管に微かに残る、ロゼとは別の、力強い誰かの魔力。そして、首筋からも知らない匂いがした。
明らかに、ロゼの匂いじゃない。

私はその匂いを今すぐ消したくて、自分の部屋のベッドに、ロゼを運んだ。可愛くて柔らかいロゼの上に跨がって、私はロゼを問い詰めた。

「……ロゼ、正直に答えて。今日は一体、誰と一緒に居たんだい?」
「お、お兄様?」
「ロゼから、知らない匂いがする。しかも、誰かから魔力を貰ったね?」
「?!」

ロゼの大きな瞳が見開かれた。
やはり、誰かから魔力を貰ったようだ。私はこの身が焦げそうな程に、その『誰か』を憎らしく思った。

「……ロゼ、まさか男から貰ったのか?」
「えっと、その……ごめんなさい」

謝るロゼが、上目遣いで私を見てくるから、あまりの可愛さに思わずドキリとしてしまった。我ながら重症だと思う。恐らく私は、例え記憶喪失になってロゼの事を全て忘れてしまっても、再び出会った瞬間にロゼを好きになるだろう。断言出来る。

そんな可愛い顔をしたって駄目だと話していたら、更に雲行きが怪しくなった。どうやらロゼは、邸の外へ抜け出し、見知らぬ誰かから魔力を貰ったらしいのだ。なんて危ない。知らない人に飴を貰っては駄目だと、あんなに教えた筈なのに、まさか飴ではなく魔力を貰ってくるなんて。悪意のある奴だったらどうするんだ。

しかし、ロゼはとても反省しているようで、『嫌わないで』と泣き出してしまった。

ロゼを嫌うなんて有り得ない。
けれど、私に嫌われたくないと泣いてしまうロゼが、あまりに愛しくて。私はこれ以上この話をするのは止めようと思った。
ただ、また“うっかり“ロゼが約束を忘れないように、お仕置きをする事にした。これで“うっかり“忘れて、一人で邸の外へ出る事は無くなるだろう。

だけど―――

「ロゼの魔力回復をした男が誰なのか、いずれ探し出してやる」

ロゼの身体の中に魔力を流すなんて、嫉妬で気が狂いそうだ。いくらロゼを助ける為であったとしても…………

魔力回復はかなり高度な技だ。魔道管を傷付ける事なく魔力を流していくのは、相当に難しい。だから、特定する事はそんなに難しい事ではない。

私が、あのピリリとした力強い魔力を忘れずに覚えていれば…………
いずれ分かるだろう。


* * *


翌々日の夕方。
本邸の私の部屋では、ロゼが追い詰められた小動物のように、私のベッドでその身を震わせて座っていた。羞恥心からか、ロゼの顔はリンゴのように真っ赤で、私はついつい美味しそうだな、なんて思ってしまう。

「あの、お兄様?お母様達にはもう見せたのに、まだ、その、この格好をしていないと、駄目なのですか……?」
「これはお仕置きだからね。さぁ、今日は可愛い猫姫のロゼ。猫みたいに鳴いてごらん?」
「にゃ、にゃあん。……うう、恥ずかしい」
「ふふ、可愛い。ロゼ、大好きだよ」
「わ、私も、お兄様が大好きです」
「………………………………っ」

駄目だ。
ロゼが可愛すぎて、私は今日死ぬかもしれない。
いや、明日はクマで、明後日は天使。死ぬ訳にはいかない。
ロゼの隣に座っていた私は、ロゼを抱き締めながら、首筋にそっと唇を寄せた。ロゼからは、ロゼの匂いと、私の匂いしかしない。それが堪らなく嬉しくて、私は更にぎゅうぎゅうとロゼを抱き締める。

「んっ。お兄様、くすぐったいです」
「これもお仕置きだよ。だから、頑張って耐えてね。私のロゼ」
「ひゃ、あっ……!」
「ほら、ロゼ。もう一度、可愛く鳴いてごらん?」
「~~~っ」

涙目で顔を赤くしながら必死に耐えるロゼが可愛すぎて、私は暫くの間、夢中でロゼを独り占めした。
ああ、私のロゼ。私だけの、愛しいお姫様。
本当はもっと沢山、身体中にキスをして、私のものなのだと『証』を残したい。

―――けれど、それは許されない。

(……これは、あくまでお仕置き)

私は自分自身に、心の中でそう言い聞かせる。
『証』はつけられない。つけてはいけない。
だからロゼへのキスは、優しく、触れるだけ。少し潤んだ瞳のロゼに、私は今にも溢れそうな想いを込めて、ロゼの可愛い耳にそっと流し込んでいく。

「大好きだよ」

私がそう囁く度に、ロゼは恥ずかしがりながらも、「私も大好きです」と応えてくれる。
それがとても嬉しくて。嬉しいのに。全然足りない。

「……明日も、お母様達にお披露目した後、私の部屋においで」
「は、はい。お兄様」

お仕置きを言い訳に。
もっと沢山、ロゼから『好き』を貰おうとする私は狡い。


* * *
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