32 / 245
本編
アレクとロイ
しおりを挟む*アレク・ユードリヒside*
「セルジュ・プランドルです。宜しくお願いします」
クラスに着いて、各自自分の席に座った後。生徒達は自己紹介するように担任の教師から言われて、端の席の奴から順番に自己紹介が始まったのだが……
俺はセルジュとかいう奴が、自己紹介の為に椅子から立ち上がった時、あまりの整った顔立ちに瞠目した。
女子が話していた美少年とは、間違いなくコイツの事だろう。ただ立っているだけなのに、姿勢が良いせいか、それだけで様になっている。席は俺の斜め前の席だ。コイツの隣の席になったロイなんて、驚いた表情のまま固まっている。ロイの奴、大丈夫か??
その後、担任が一言付け加えて、セルジュが飛び級入学してきたのだと分かり、俺は尚更驚いた。自分から進んで勉強するなんて、俺には考えられない。自宅での家庭教師との勉強時間は、俺にとって拷問以外の何ものでもなかった。世の中色んな奴がいるもんだと、つくづくそう思った。
しかし。
昼休憩で俺は更に驚く事となる。
まさかロイの奴が、あんな風になってしまうなんて。
* * *
*ロイ・シャロッツside*
―――なんだ?この生き物は。
俺の隣に座っている、めちゃくちゃ綺麗な、この生き物は何なんだ。
今まで見てきた女子の誰よりも綺麗だ。これが入学式で女子達が密かに騒いでいた美少年か?……少年??
俺はセルジュと名乗った隣人を、上から下までマジマジと見て確認した。二度見三度見四度見したが、着ている制服はどう見ても男子用だった。当然、女子特有の膨らみは無い。
くっ、確かに少年だ。
少年。少年か…………
少年というからには、まぁ恐らく性別は男だろう。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………男???
本当に?
大きなアクアブルーの瞳も、形の良い鼻も、薄い唇も、白く透き通った肌も…………
男?これで男だと??
女だったら即求婚していたのに。
本当に男なのか?間違って男の制服を着ちゃったドジっ子な女の子じゃないのか??
とりあえず、是非とも昼休憩をご一緒したい。
* * *
前世では、入学式の後って簡単な説明会とかがあって、大抵昼前には帰れたよね。
でも、ここだとお昼休憩でご飯を食べた後も、まだしばらくかかるらしい。午前中は自己紹介と、この学校―――正式名は王都シィヴァルリィ魔法学校の成り立ちや歴史を簡単に学び、明日からの授業内容の説明、学校案内。昼休憩後には学校案内の続きと各研究会等を自由に見学して今日の日程は終了らしい。
「ここが君達が昼食を取る学食となります。……ちょうど時間ですね。今から1時間、昼休憩となります。1時間後、教室に集まってください。では解散」
担任の先生がそう言ってその場から居なくなると、数人の女子生徒達が、私に群がってきた。
「セルジュ様、私達とお昼をご一緒致しませんか?」
「いいえ、私達とご一緒致しましょう?」
「ちょっと貴方達、セルジュ様が困っていらっしゃいますわ!!下がりなさい!!」
な、なに?!美少年効果?!
というか、みんな積極的過ぎじゃない?!確かにみんな貴族とかじゃないし、積極的な事に問題は無いのかもしれないけどさ!
驚いて少し引いてしまったが、クールな美少年キャラを確立するべく、私は断固拒否の姿勢で口火を切ろうとした。
けれど―――
「皆さん、すみません。僕は落ち着いて昼食を取りたいので、皆さんとは―――」
「セルジュは俺達と先約があるので無理だ。諦めてお引き取り願おう」
え?!
この人は、隣の席のロイ??
先約って、まだ一言も喋ってないんですけど……
「ロイ?俺そんなん一言も聞いてねーんだけど…………痛っ?!あ、ああ、そう!そんな約束してたよな、確か!な?!セルジュ!!」
いやいや。「な?!」とか言われても。
この人は斜め後ろの席のアレク?
ちょっと待って、本当にどうゆう事?!
「さあ、行こうかセルジュ。聞いた話だが、ここの学食は美味しいらしいぞ」
「え、あ、ちょっ……?!」
……こうして私は、何故だかロイとアレクと三人で昼食を取る事になったのだった。
* * *
21
お気に入りに追加
3,821
あなたにおすすめの小説
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
処刑回避で海賊に就職したら、何故か船長に甘やかされてます。
蒼霧雪枷
恋愛
アレクシア・レーベアル侯爵令嬢はある日前世を思い出し、この世界が乙女ゲームと酷似していることに気づく。
そのゲームでアレクシアは、どのルートでも言われなき罪で一族郎党処刑されるのである。
しかも、その処刑への道の始まりが三日後に迫っていることを知る。自分だけではなく、家族までも処刑されるのは嫌だ。
考えたアレクシアは、黙って家を出ることを決心する。
そうして逃げるようにようやって来た港外れにて、アレクシアはとある海賊船を見つけ─
「ここで働かせてください!!」
「突然やって来て何だお前」
「ここで働きたいんです!!」
「まず名乗れ???」
男装下っぱ海賊令嬢と、世界一恐ろしい海賊船長の愉快な海賊ライフ!海上で繰り広げられる攻防戦に、果たして終戦は来るのか…?
──────────
詳しいことは作者のプロフィールか活動報告をご確認ください。
中途半端な場所で止まったまま、三年も更新せずにいて申し訳ありません。覚えている方はいらっしゃるのでしょうか。
今後このアカウントでの更新はしないため、便宜上完結ということに致します。
現在活動中のアカウントにて、いつかリメイクして投稿するかもしれません。その時見かけましたら、そちらもよろしくお願いします。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる