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本編

学校に入学します②

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「……その、俺は女の子が苦手でさ。君が男の子なのは制服を見れば分かるけど、笑った顔があんまりにも……その、可愛くて」
「え……」

『可愛い』という言葉。
私は今世では前世の百倍くらい、毎日のように言われている。主にお兄様に。そしてお父様やお母様、使用人達に。ちなみに私の中で危険人物認定されているリアムはノーカンである。
まぁそんな感じで、身内以外では初めて可愛いと言われた訳ですよ。
確かに前世と比べたらめちゃくちゃ美少女だけど、この世界の顔面偏差値はかなり高いと予想していたから、可愛いと言われて正直驚いた。お兄様達のは身内贔屓だと思っていたからね。

それに、今の私はセルジュ・プランドルだ。これは設定上、怒らねばならないところだよね。
でも、ここまで案内してくれた親切な人に、急に怒るのも気が引ける。どうしたものか。

私がどう返したらいいか迷っていると、親切な人の後ろから、よく知っている声が聞こえてきた。

「ノア!」

―――ノア??

今、確かにノアって……
それに、この声はお兄様だ。
お兄様は私達の元へ足早に歩み寄り、私を見て目を見開いた。

「セルジュ?」
「……オリバー!」
「やっぱりセルジュか!だいぶ背が伸びたね」
「成長期ですから」
「あれ?二人とも知り合いなの?」

私とオリバーの会話に、一人ついていけずに首を傾げる親切な人……
いやいやいや、そうじゃなくて。
今、お兄様が言ったノアって。

「セルジュ。彼は私の友人で、ノア・ヴィルターだ」
「……っ」

―――お兄様の友人、ノア・ヴィルター。

この人だ。
この人が、いずれナンバーズのNo.5になる、お兄様の親友。
ダイア公国との戦争で、お兄様を庇って死ぬ人。

「ノア。セルジュは私の従兄弟なんだ。……っと、しまった。後10分で入学式が始まってしまう。セルジュ、入ってすぐの所に先生が居るから、新入生だと伝えて席を教えてもらうといいよ」

お兄様にそう言われて、私はハッと我に返り、二人に「ありがとうございました」とお礼を述べて会場へと入った。
お兄様が言った通り、入ってすぐの所に先生が居て、新入生の席を教えてもらって着席し、私はついさっきまで一緒に居たノアの事を考える。

……普通に良い人だった。
親切で、優しい人。お兄様の親友になるのも分かる気がする。
最初から守るつもりでいたけど、改めて思う。私が死なせない。
一番守りたいのは家族だけど、ノアもちゃんと私が守ってあげるんだから!!……そういえば、関係無いけど女の子が苦手ってどうしてだろ??

私が一人首を傾げている合間にも、入学式の方はどんどん進んでいて、気が付いた時には閉会していた。
慌てて立ち上がり、また迷子になっては敵わないと、私は他の新入生達と一緒に自分のクラスへと向かったのだった。

……………………
…………

セルジュとなったロゼリアが、入学式の会場に入る少し前。新入生達は各々席に着席しながら、女子を中心にヒソヒソと噂話をしていた。

「ねぇ、見ました?さっき門の所で、すっごく綺麗な美少年が居たの」
「見ましたわ!気付いたら居なくなっていたけれど、とっても綺麗でしたわね!アクアブルーの髪と瞳が輝いていて……」
「私、あの方とお友達になりたいですわ……!」
「私もですわ!でも、どうお声をかけたら良いかしら?」

女子が頬を赤らめながら楽しそうに話しているのを横目でチラリと一瞥し、同じ新入生の席に座っている男子二人が、小さく口を開く。

「ロイ、今の聞いたか?美少年だってよ。どんな奴か知らねーけど、顔が良いってだけで実力カスだったら笑えるよな」
「口が悪いぞ、アレク。クラスメイトにどんな奴が居ようと、俺はどうでもいい」

少し乱暴な口調のアレクと呼ばれた少年は、いつも通りの友人であるロイに向かって、頬杖をつきながら面白くなさそうに会話を続けた。

「相変わらずだな、ロイは。仏頂面じゃなければ、ロイだってそれなりに可愛い顔してんのに」
「アレク。次、可愛いと言ったら殺すぞ?」

ロイの周囲に渦巻く冷気。
目は全くと言っていい程笑っていないけれど、口元だけはヒヤリとするような冷笑を浮かべている。

「そんな時ばっかり笑うなよ!!こえーな!!」

思わず声を大きくして抗議するアレクに、新入生を担当している先生が気付いて、二人に注意した。

「そこ!!静かになさい!!」
「「…………」」

ちょうどこの時、ロゼリアが会場入りして新入生の席へと着席していたのだが、アレクとロイは怒られた事で頭がいっぱいで、ロゼリアの事には全く気付いていなかったのだった。


* * *
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