上 下
26 / 245
本編

ロリショタ男装令嬢爆誕!!

しおりを挟む

お母様に条件を出され、男装の練習を始めてから二ヶ月経ちました。お母様に貸していただいたメイドさんはメルという名で、本当に化粧がめちゃくちゃ上手で、私は沢山やり方を教わり、かなり仲良くなっていた。ちなみにメルは19歳だ。

「メル、どうかな?完璧?」
「ええ!とてもお上手になられました!!完璧です、ロゼリアお嬢様!」
「ありがとう、メル!」

よっしゃ!!
これなら何とかいけるのでは?!

自室の鏡に映る自分を見て、私は自然と笑みが溢れた。
私は今、男装している。クラシックな感じのブラウスに黒のハーフパンツ、落ち着いた色合いの上品な紺色のベストを合わせて着用し、足元は黒のブーツだ。
頭にはカツラを使用。今世では初めてのショートヘア。髪色は少し明るめのアクアブルーだ。瞳の色も耳につけた魔導具の効果で、髪と同じアクアブルーに変えている。後はメルに教えてもらったお化粧を目元に少しだけ、自然な感じで施すと…………

なんという事でしょう!!
可愛いらしい普通の少女から、クールな見た目の美少年に!!
うん!本当に別人!!
これなら絶対にバレないわ!!

私はメルとガシッと手を合わせて、笑顔で頷き合った。
メルに頼んで、男装が完成した事をお母様に報告しに行ってもらうと、すぐにお母様が私の部屋へとやって来た。
お母様は勢いよく扉を開いて部屋に入り、驚いている私を余所に、男装姿をマジマジと眺めてから瞠目した。

「あらあら!本当に男の子みたいだわ。貴女、本当に私の可愛いロゼリアなの?」
「はい、お母様!私はロゼリアです!私のクールな男装、どうですか?」
「……完璧ね。貴女がここまで本気だったなんて。ちょっとお化粧が上手くなるくらいで、女の子な感じは消えないと思っていたのだけれど。これなら合格よ」

やった!!!
お母様から合格出ましたーーーーー!!!!!

「ありがとうございます、お母様!!」
「……もう少しでオリバーが学校から帰って来ます。その格好のまま、オリバーとお茶をしなさい。私から貴女を甥っ子のセルジュ・プランドルとして、オリバーに紹介します」
「きょ、今日この後ですか?!」
「ええ。こういうのは早い方がいいでしょう?紹介した後、私は席を外しますから。……そうね、一時間は頑張りなさい」

い、一時間?!

「それと、声はロゼリアのままなのだから気を付けなさい。メル、声を変える魔導具は無かったの?」
「はい、奥様。そういった魔導具自体は存在しているらしいのですが、王都にある魔導具店全てで品切れでした。どうやら需要が無いそうで、再入荷の予定は無いとの事です。一応取り寄せて欲しいと頼んではあります」
「そう。それなら仕方ないわね」

お母様はそう言って扉の方へと踵を返した。部屋から出る間際、一度だけ振り返り、私に向かって「健闘を祈っているわ」と言って微笑んだ。

バタンと閉まる扉。

私は逸る鼓動を落ち着かせる為に、瞳を閉じて深呼吸する。
絶対にお兄様にバレないようにしなくては!私は……

「いや、今から僕はセルジュ・プランドルだ!!」

* * *

「クール?あの子、そういえばクールって言ってたような……」

ロゼリアの母であるローズは、自分の部屋に着いてから、ロゼリアが言っていた言葉を思い出して首を傾げた。
確かにロゼリアの男装は完璧だった。少しだけ中性的だったけれど、どこをどう見ても美少年にしか見えなかった。
だが―――

「……どう見ても可愛い系よね。クール?あの子、どうしてクールだと思ったのかしらねぇ」

悲しきかな、クールだと思っているのはロゼリア本人だけであった。
ロゼリアの見た目は、クールではなく、明らかにロリショタ美少年だったのである。
なので。
今日この日、バルトフェルト家にロリショタ男装令嬢が爆誕したのであった。


* * *
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

処刑回避で海賊に就職したら、何故か船長に甘やかされてます。

蒼霧雪枷
恋愛
アレクシア・レーベアル侯爵令嬢はある日前世を思い出し、この世界が乙女ゲームと酷似していることに気づく。 そのゲームでアレクシアは、どのルートでも言われなき罪で一族郎党処刑されるのである。 しかも、その処刑への道の始まりが三日後に迫っていることを知る。自分だけではなく、家族までも処刑されるのは嫌だ。 考えたアレクシアは、黙って家を出ることを決心する。 そうして逃げるようにようやって来た港外れにて、アレクシアはとある海賊船を見つけ─ 「ここで働かせてください!!」 「突然やって来て何だお前」 「ここで働きたいんです!!」 「まず名乗れ???」 男装下っぱ海賊令嬢と、世界一恐ろしい海賊船長の愉快な海賊ライフ!海上で繰り広げられる攻防戦に、果たして終戦は来るのか…? ────────── 詳しいことは作者のプロフィールか活動報告をご確認ください。 中途半端な場所で止まったまま、三年も更新せずにいて申し訳ありません。覚えている方はいらっしゃるのでしょうか。 今後このアカウントでの更新はしないため、便宜上完結ということに致します。 現在活動中のアカウントにて、いつかリメイクして投稿するかもしれません。その時見かけましたら、そちらもよろしくお願いします。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...