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本編
【絶対防御】発動
しおりを挟む「…………やっぱり、私の事を知っているね?」
【ジョーカー】である、彼―――リアムの言葉にビビってしまった私は、思わず走り出していた。待合室を飛び出し、回廊を走り抜け、目についた庭園へと猛ダッシュで逃げ込む。
そうだ。確かリアムには特殊なスキルがあった筈。相手の感情を、色で読み取る能力。
どうしよう?何だかめっちゃ恐い!!あの嘘くさい、綺麗過ぎる笑顔が恐いいいいい!!!
うわあああん!!
お兄様お兄様お兄様あああああ!!!
助けて下さああああああいいい!!!!!
私は死物狂いで走った。未だかつてないくらい、必死に走りまくった。けれど、私はまだ6歳の子供で、当然逃げ切れる筈もなく、すぐに追い付かれてしまった。
こっちは汗だくでゼェゼェ肩で息をしているのに、リアムは汗ひとつかいておらず、涼しい顔で笑みまで浮かべている。
「気は済んだかい?別に取って食べたりしないよ?」
「……ケホッ」
「でも、なんで知っているのかは教えて欲しいかな。私は普段、人前にはほとんど出ない。私に君と会った記憶はない。……それなのに、君はどうして私を知っていたの?」
「それは……」
「……嘘をついたら、怒るよ?」
「む」
無理無理無理無理無理!!!!!
前世の乙女ゲームの説明書と攻略サイトのキャラクター紹介で見ましたなんて、本当の事を言っても絶対に信じてもらえなくない?!
怪しすぎて絶対怒られるよ!!というか、怒られるってやばくない?怒られる=死(デス)じゃない?!
もしくは拷問?!
ヤダヤダヤダ!!!私には家族を救うっていう大事な使命があるんだから!!普通のゴーレム見に来ただけで死亡フラグとか無いから!!!
しかし、何を思ったのか、リアムは私に向かって手を伸ばしてきた。
恐い。誰か……ううん、何か助けになるもの。魔法とか、何か―――
『ロゼ、確かにこの魔法は凄いけど、かなりの魔力量と集中力が……』
その時、私の頭の中には『ソレ』しか思い浮かばなかった。
防御系の最も優れた最上位魔法。
気付いた時には、私はその魔法を唱えていた。
「【絶対防御】!!!」
* * *
庭園に見たこともない魔法陣が展開したと思ったら、バチン!!!という大きな音と共に、魔法陣は弾けて消えた。
消えた瞬間に、私の視界がグラリと揺れる。
身体から一気に力が抜けて、立っていられない。そのまま崩れるように倒れかけたけれど、傍に居たリアムが咄嗟に私を抱き止めてくれた。
リアムはとても驚いた顔をしていて、目を見開いている。
「絶対防御だって?……信じられない。今、確かに魔法陣は発動していた。魔力が足りなくて弾けてしまったけれど……」
「う……目が回る…………」
「……魔力が一気に涸渇したんだ。しばらくは起き上がれないだろうね。でも……」
「……お兄……さま…………」
「ロゼリア。君は一体何者なの?」
……私はただのモブですよ。
前世の記憶があるだけの、本編に1ミリも登場しないモブ。
そう心の中で答えて、私は意識を失ったのだった。
* * *
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