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本編
ジョアンナ・リーゼルの野望*ジョアンナside*
しおりを挟む私は魔法師のジョアンナ・リーゼル。
スペード王国五大商家のひとつである、バルトフェルト家で、住み込みで家庭教師をさせてもらえる事になった幸運な女魔法師。
バルトフェルト家の当主であるオーガスタス様は氷のように冷たい方だと噂で聞いていたけれど、提示された給金は私みたいな魔法師にとっては破格であったし、その他の待遇も悪くない。むしろめちゃくちゃ良い。
実際話してみると、確かにいつも恐い顔しているし言葉の端々に棘があるけれど、家族に対しては驚く程に優しくて、態度が180度違う。誓約をした後は私への態度も少しだけ軟化した。
しかもこのお仕事では、めちゃくちゃ嬉しくて堪らない事がある。
今現在私が魔法を教えているロゼリア様の存在だ!!
まるで天使なのかと思うほどに、めちゃくちゃ可愛い!!私の事を、あのキラキラしたお目目で見てくれて、抱き締めたくてしょうがない!!!きっと抱き締めたらふわっふわで良い匂いがするに違いないわ!!
でも、私のそんなささやかな望みは、まだ一度も叶えられていない。
ロゼ様の兄である、オリバー様のせいで……!!
なんなの?!いつもいつも邪魔をして!!ロゼ様を褒めたり励ましたりする時、どさくさに紛れて抱き締めようとチャンスを窺っているのに、そーゆう時に限って話しかけてくるのよ!!「先生( ・ω・)∩シツモーン」みたいな!!
嘘つけよ!!
絶対嘘だから!!訊きたい事なんて絶対無いでしょ?!魔法書も気付くとかなり先のページまで読んでるし、魔力操作なんて完璧だもの!!基礎出来てるじゃん!!質問なんてある筈ないじゃん!!!
もおおおおあのシスコン野郎おおおおおお!!!これ見よがしに私の前で愛しのロゼ様をぎゅうぎゅう抱き締めてくれちゃってさあ!!
羨まし過ぎるのよおおおおお!!!
私だって「ジョアンナおねえたん☆」とか言われながらぎゅうぎゅうしたいわっ!!!もおおおおお!!!
「おち、落ち着くのよ、ジョアンナ。大丈夫。きっと今日こそ、ロゼ様をぎゅうぎゅう出来る筈よ……!」
いけないいけない。
うっかり気持ちが高ぶりすぎちゃったわ。ロゼ様の前では、賢くて頼れる優しい先生でいなくては!!
魔法書と、筆記用具と、杖と、魔法アイテムを持って……
「リーゼル先生」
「ひっ?!」
突然、扉の向こうから声がした。
私はバルトフェルト家敷地内の、本邸から少し歩いた所にある、離れに住まわせてもらっている。
故に、ここは一応私のプライベート空間な訳で……
なんで扉の向こうにお前がいるんじゃいっ!!!
しかし、私は平静を装いつつ、大人として笑顔で扉を開けた。
「まぁ、オリバー様。わざわざお迎えにいらして下さったのですか?」
「いつもいつも怪しいと思ってましたけど、声駄々漏れでしたよ」
「え」
「害意は無いみたいですし、確かに僕のロゼはめちゃくちゃ可愛いですからね。仕方ないのでお父様には黙っておきますけど、ロゼをぎゅうぎゅう出来るのは僕の特権ですから止めて下さいね。ロゼが汚れるので」
「~~~っ?!!そんな殺生な!!!そのような悪魔のごとき拷問を私に強いるおつもりですか?!!」
「強いるおつもりです。というか黙れ」
「お願いです!!一度だけでもっ!!!」
「却下。早く準備して来てくださいね。それでは」
……………………
…………
準備して勉強部屋を訪れると、オリバー様がロゼ様をぎゅうぎゅう抱っこした状態で座っていた。
「僕の可愛いロゼ。今日も良い匂いがする」
「そうですか?お兄様の方が良い匂いです!」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
ロゼ様あああ!!そいつは鬼です、悪魔です!!
騙されないで!!!
ちくしょうこのドS野郎!!!
ドヤ顔すんなっ羨ましいいいいいいい!!!!!
* * *
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