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本編

属性の適性検査*オリバーside*

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―――僕は見た。
魔法の先生として我が家にやって来たリーゼル先生が、ロゼを見て頬を赤らめていたのを。
まさかとは思うけど、僕のロゼに手を出したりしないよね?一応警戒だけはしておこう。

「いいですか?魔法は自然界の力によって成り立っています。火、水、風、土、光、闇、時、この七属性です。どの属性の魔法も使用出来ますが、それぞれ相性というものがあり、相性が良ければより強い魔法を行使する事が出来、相性が悪ければ弱い魔法しか行使出来ません。まずは適性検査で、自分がどの属性と相性が良いのか調べます」

「はい!」
「分かりました」
「では、まずはロゼリア様から……」
「いえ、僕からお願いします」

僕はリーゼル先生をしっかりと見据えながら、そう言った。先生は少しだけ眉根を寄せたが、すぐに笑顔を浮かべて「では、オリバー様からどうぞ」と答えた。

やっぱりこの先生、少し怪しい。
ロゼはロゼで、僕が割り込んだ事に目を丸くして焦っている。小さな声で「まさかお兄様、年上が好みなの?」等と言っているけど、全然違うから。というか、僕には全部聞こえちゃってるからね??
本当にロゼは可愛いなあ。

「この水晶玉に手を翳して下さい」
「はい」

リーゼル先生が水晶玉を僕の机の上に置いた。僕は言われるままに、水晶玉に手を翳してみる。すると、いくつかの色が浮かび上がり、それがピカッと輝いた。

「青、緑、紫ですね。青は水、緑は風、紫は時を現しています。ですので、オリバー様は相性の良い属性を3つお持ちという事です。3つお持ちというだけでも大変珍しい事なのですが、中でも時属性持ちは非常に稀ですので驚きましたわ!素晴らしいです!」

へぇ、時属性は珍しいのか。
水属性持ちは氷まで扱えるというし、使い勝手が良いかもしれない。

僕が自分の魔法属性について思考を巡らせていると、リーゼル先生はいそいそと水晶玉をロゼの机の上に置いた。
明らかに目が違う。ロゼがいくら美少女だからって、そんなうっとりした目でロゼを見るな。ロゼが穢れる気がして腹が立つ。

「さぁ、今度はロゼ様ですよ!!」
「は、はい!」

ロゼが慌てて水晶玉に手を翳す。
リーゼル先生を警戒しつつ、ロゼの属性も気になるので、僕も水晶玉をじっと見つめた。すると、まもなく僕の時と同じ様に複数の色が浮かび上がってくる。

複数の…………

あれ?さっきリーゼル先生は、3つでも大変珍しいと言っていたけど。ロゼの属性は3つどころじゃない。

「これは―――?!」
「まぶしっ!」

ピカッと光った水晶玉を見てみると、浮かび上がっていた色は5つ。
ロゼはまさかの、5属性持ちだったのだ!!


* * *


流石にこれは非常事態だ。
僕達の勉強部屋に、お父様が呼ばれてやって来た。少し急いで来たのだろう。額には汗が滲んでいる。

「ロゼ!5属性持ちとは本当かい?!」
「お父様!」

水晶玉の光はまだ消えておらず、ロゼの属性を現したまま光っている。それを見て、お父様は目を見開いた後、額に手を当てて「なんてことだ……」と呟いた。

「これが世間に知られたら一大事だぞ」
「お父様、それってどれだけ大変なのですか?」
「……オリバー。5属性持ちも全くいない訳ではない。だが、現在国内で確認されているのは3人で、その内の一人はスペード王国最強と言われている魔法師、ジャネット・バーグ卿だ」
「?!」

そんな……
これが世間に知られれば、確かにとんでもない事になりそうだ。
しかも、ロゼは女。ただでさえ五大商家のひとつである我がバルトフェルト家には、現段階でもロゼに対して婚約の申し込みが後を絶たないのに。加えて5属性持ちだなんて知られたら、他の五大商家は勿論、王家から婚約の話がきてもおかしくない。

ロゼは僕の、僕だけのお姫様なのに!!


* * *
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