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本編
ロゼリア・バルトフェルト
しおりを挟む「ロゼ、ロゼ。僕の可愛いお姫様」
そう言って、ぎゅうぅっと私を抱き締めているのは3歳上の私のお兄様。私も大好きなので、ぎゅっとお兄様を抱き締め返す。
「お兄様、私もお兄様がだいすき!!」
私の名前は、ロゼリア・バルトフェルト。
中身アラサーの6歳児である。
そう、私には前世の記憶があるのだ。ちなみに赤ん坊の頃から記憶があった、とかではない。身体も上手く動かせず言葉も喋れず、産まれたばかりの時は目だってよく見えていない。そんな状態で自我があったらストレス半端ないもんね。私がハッキリと前世の事を思い出したのは、幸いにもここ最近の事だ。
そして私は気が付いたのだ。
私の名前と、可愛すぎる天使のようなお兄様を見て、この世界が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だという事に!!
それと同時に、どうしてもへし折らなければならないフラグを思い出した。
それは乙女ゲームの転生小説あるあるの死亡フラグである。
ハッキリ言おう。
私は死なない。
私はどう転んでも死なないポジション。
所謂モブなのだ。本編に全く関係ないモブ。
けれど、どう転んでも死んでしまう人を知っている。
私の大好きなお兄様だ!!!
この乙女ゲームでは、悪役令嬢ではなく悪役令息が出てくるのだ!!
その悪役令息が天使のように愛くるしい私のお兄様、オリバー・バルトフェルトだ。
お兄様は家族をとても愛している、心優しいお兄様なのだが……
数年先に起こるダイア公国との戦争によってお母様が亡くなり、まずはお父様が悲しみから悪に染まってしまう。そして、続けてお兄様の親友も、お兄様を庇って亡くなってしまう。その結果、お兄様はお父様と一緒に悪の道へと進んでしまうのだ。
この乙女ゲームのスタートはヒロインが15歳になってからだ。確か、季節は雨期の終わり頃。
その頃、お兄様は既にスペード王国騎士団へ入団していてナンバーズの一員になっているのだ。一方でヒロインの方は、見習い治癒師として騎士団に配属される。
そうして、どんな相手にでも分け隔てなく治癒を施し、諦めなければ絶対に助かると言い切る綺麗事ばかりのヒロインを、お兄様は憎んでしまうのだ。お母様と親友の死は、ヒロインには関係ない。けれど、綺麗事ばかりのヒロインに怒りの矛先を向けてしまう。
ヒロインの仕事や恋路の邪魔をし、悪行を重ね、最後にはお父様と一緒に処刑されてしまう。ヒロインがどのルートを選んでも、私のお父様とお兄様の結果は同じ。ちなみにモブな私は一切関わりがなかったと判断され、恩情から修道院へ行く事になる。まぁそこはどうでもいい。
最期、処刑される時にお兄様は気付くのだ。自分は、本当は綺麗事ばかりのヒロインに、恋心を抱いていたのだと―――……
絶対に死なせません!!!
私がお兄様を助けてみせるわ!!
お母様とお兄様の親友が死んでしまうのは、お兄様が騎士団に入団してから二年後。
頭の悪い私は、一人で難しい作戦とか立てられない。だから……
お兄様と同じ騎士団に入団して、私が皆を助けてみせるわ!!!
お父様もお兄様も、悪の道になんか進ませない!!!誰も処刑になんてさせないんだから!!!
* * *
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