今度は後悔させません

東野鯉

文字の大きさ
上 下
13 / 24
二人三脚

2.

しおりを挟む
「まぁ、服は鍛えようによってはサイズも変わるし、とりあえずパーソナルジムからね」

 私は前もって目星をつけていた口コミの良いパーソナルジムをいくつか回り、必ず成功させてみせますと自信満々に言い切ったトレーナーがいるジムを速攻で押さえておいた。

「み、南野さんっ……」

 しばらくしてサロンに戻ると、神々しい程に眩しい彼の姿が、私の目にスコーンと飛び込んできた。期待以上の変貌に言葉を失ってしまう。横で満足げにあれこれ話しかけてくるスタイリストの話が全く耳に入ってこないくらい、彼のその姿に見惚れてしまった。

「ど、どうですかね、東屋さん」

 ハニかむ笑顔は今すぐにでもプロマイドにしたい程だ。

「良すぎ……良すぎよ南野さんっ‼︎‼︎ 素敵っ」
「あ、あははは、は、恥ずかしいなそんな、あはは」
「じゃ、次はジムに行ってみましょ」
「えっ、あ、はい。あ、お会計済ませてくるので少しだけ待ってて貰えますか」
「お会計?事前に払ってるわよ」
「え⁉︎ お、おいくらですか⁉︎ お返しします」

 彼は焦りながら財布を出す素振りを見せたが、私は丁重にお断りした。

「これは未来への投資だから。あなたはお金の事は気にしないで。人生を変える事に集中して。光り輝く人生を絶対に取り戻すの」
「あ、東屋さん……なんでこんな僕のために」

 今はまだ言えない。かつて愛した人だから、失って守れなくて後悔した人だから、今度こそは守り切りたいから。そんな事を今話したとしても彼は混乱するだけ。

 いつか彼にも思い出して欲しい。光を生み出すアステリアとして時を共にした事を。

「そうね、それはマネージャーだから。未来のアイドルにお金を落とすのは当たり前の事よ」

 私はサラッと彼の疑問に答えると、また彼の腕を掴みジムへと引っ張って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話

七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。 離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?

処理中です...