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最終章 さよならダンジョン
09 戦士たちよ、正々堂々戦うがいい!
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「ワーーーーーッ!」
耳をつんざく様な大歓声が桃旗隊を襲った。
夜が明けて、体力も回復した桃旗隊のメンバーは、しっかり朝食を食べた後、全員で気勢をあげて第4層へとなだれ込んだ。
その時、そんな彼らの勢いなど吹き飛ぶくらいの大歓声が、その場に沸き起こったのだ。
「わーーーー」「いいぞー、お前ら」「遅せーぞ、早くしろー」
「ピーーピーー」「頑張れよー」「パチパチパチパチ」
前に上がって来た時には草を刈りこんで相撲の土俵のように土を盛って固めたリングがあるだけだった闘技場に、その周りを半分だけ囲むように、階段状になった石造りの観客席が出来上がっている。しかもその観客席は500人を超える人々で埋まっているのだ。
そして今までは第4層の奥に行けるようになっていた通路に龍王のハイパージャンケン用のリングが移動され、今は司会と解説の為の放送席になっている。もちろんその手にはマイクが……
観客席からの割れんばかりの拍手とマイクからのファンファーレに迎えられ、空から一人の美しい男が真っ白い4枚の羽を羽ばたかせて、リングの中央に舞い降りてきた。
「よくぞここまで登ってきました、挑戦者たちよ。今一度問おう。
ここより第4層
命が惜しいものは引き返せ
魔物の魔石は手に入らない
第4層は冒険者を歓迎しない
しかし愚直に強さを求める者
名乗りを上げ、対戦相手を求めよ
報酬はただ、名誉のみ」
「ウォーーーーーーっ!」
観客席から冒険者たちの野太い声が上がる。
それに混じって、人数は男たちよりも少ないが声量では負けていない女性の甲高い声も聞こえた。
「キャーーーー、秋瞑さまあーーーー」
桃旗隊は呆然と入り口に立ちすくんでいたが、はっと我に返りリーダーが叫び返した。
「何の真似だ!人質のつもりか?!」
それを聞いて観客が一斉にブーイングだ。
「人質などとんでもない。彼らはこの闘技場の常連の皆さまです。武を極め、強さを追い求める冒険者達」
「ウォーー!」「そうだそうだー」
「今日はあなた方桃旗隊と我等ダンジョンの魔獣たちの戦いを存分に観戦していただきたいと思い、常連の皆様をご招待したのですよ。さあ、このリング上で1対1で戦うか、それとも団体戦をご希望か」
「ふざけるなっ!みんなも乗せられるんじゃないぞ!俺たちの目標はこのダンジョンの攻略だ。それにはこの階を突破しなければならない。こんなところで遊んでいる暇はない!」
「そうですか、分かりました。我々としても易々とここを通す訳にはまいりません。40人程ならば……そうですね、里駆、ココ、フェン、残雪、あとは」
「あ、俺、俺!俺様入れろよな」
「チッ。では龍王、リング上へ。5人もいれば充分でしょう。では桃旗隊のみなさん、向こう側に行きたいなら、全力でかかって来なさい!」
ダンジョン側の5体が人化してリングに上がると、桃旗隊も観客もざわめいた。
「おい、あれって……」「マジか」
「死神じゃねえの?」「え、あの……」「千人切りだ」
ふふんと自慢げに笑って龍王を見下ろすフェン。
「見たか、これが知名度ってやつだ。山に籠ってるジジイは持ってねえよな」
「ふん。俺様だってほら、女はみんなこっち見てるだろう」
「ばーか、ありゃあ残雪のファンのグループだよ」
暫くざわめいた後、いち早く気を取り直した放送席の司会が、マイクを手に叫び始めた。
「さあ、大変お待たせいたしました。いよいよ世紀の対決!リングの上にはダンジョン最強を競う魔獣が5人、対するは全国各地から集まった上級冒険者のチーム桃旗隊!
本日実況はもうおなじみですね、私コタロウと」
「解説のダンカンでございます」
「そして本日はリングまで少し距離がありますので、リング下で命がけの中継をしていただくのはーーーー」
「はーーい!メルでーーす!みなさーん、分かりますかーーーー?」
リングと観客席の間で、女冒険者のメルが大きく手を振っている。
「今日は、ここから汗と血の飛び散る熱い男の、そして女の戦いを命がけで実況しようと思います。ヨッロシクゥー!」
ワーーーーーッと観客席に沸き起こる歓声と拍手。
呆然と見ていた桃旗隊のメンバーが、ようやく再起動した。それを見て、すかさず放送席から声がかかる。
「おっと、桃旗隊も動き出したようだ。さあ観客席の野郎ども!みんな声を合わせて!せーのっ」
マイクを観客席に向ける。
「戦士たちよ、正々堂々戦うがいい!レディーーーーーッ、ファイトォッ!」
耳をつんざく様な大歓声が桃旗隊を襲った。
夜が明けて、体力も回復した桃旗隊のメンバーは、しっかり朝食を食べた後、全員で気勢をあげて第4層へとなだれ込んだ。
その時、そんな彼らの勢いなど吹き飛ぶくらいの大歓声が、その場に沸き起こったのだ。
「わーーーー」「いいぞー、お前ら」「遅せーぞ、早くしろー」
「ピーーピーー」「頑張れよー」「パチパチパチパチ」
前に上がって来た時には草を刈りこんで相撲の土俵のように土を盛って固めたリングがあるだけだった闘技場に、その周りを半分だけ囲むように、階段状になった石造りの観客席が出来上がっている。しかもその観客席は500人を超える人々で埋まっているのだ。
そして今までは第4層の奥に行けるようになっていた通路に龍王のハイパージャンケン用のリングが移動され、今は司会と解説の為の放送席になっている。もちろんその手にはマイクが……
観客席からの割れんばかりの拍手とマイクからのファンファーレに迎えられ、空から一人の美しい男が真っ白い4枚の羽を羽ばたかせて、リングの中央に舞い降りてきた。
「よくぞここまで登ってきました、挑戦者たちよ。今一度問おう。
ここより第4層
命が惜しいものは引き返せ
魔物の魔石は手に入らない
第4層は冒険者を歓迎しない
しかし愚直に強さを求める者
名乗りを上げ、対戦相手を求めよ
報酬はただ、名誉のみ」
「ウォーーーーーーっ!」
観客席から冒険者たちの野太い声が上がる。
それに混じって、人数は男たちよりも少ないが声量では負けていない女性の甲高い声も聞こえた。
「キャーーーー、秋瞑さまあーーーー」
桃旗隊は呆然と入り口に立ちすくんでいたが、はっと我に返りリーダーが叫び返した。
「何の真似だ!人質のつもりか?!」
それを聞いて観客が一斉にブーイングだ。
「人質などとんでもない。彼らはこの闘技場の常連の皆さまです。武を極め、強さを追い求める冒険者達」
「ウォーー!」「そうだそうだー」
「今日はあなた方桃旗隊と我等ダンジョンの魔獣たちの戦いを存分に観戦していただきたいと思い、常連の皆様をご招待したのですよ。さあ、このリング上で1対1で戦うか、それとも団体戦をご希望か」
「ふざけるなっ!みんなも乗せられるんじゃないぞ!俺たちの目標はこのダンジョンの攻略だ。それにはこの階を突破しなければならない。こんなところで遊んでいる暇はない!」
「そうですか、分かりました。我々としても易々とここを通す訳にはまいりません。40人程ならば……そうですね、里駆、ココ、フェン、残雪、あとは」
「あ、俺、俺!俺様入れろよな」
「チッ。では龍王、リング上へ。5人もいれば充分でしょう。では桃旗隊のみなさん、向こう側に行きたいなら、全力でかかって来なさい!」
ダンジョン側の5体が人化してリングに上がると、桃旗隊も観客もざわめいた。
「おい、あれって……」「マジか」
「死神じゃねえの?」「え、あの……」「千人切りだ」
ふふんと自慢げに笑って龍王を見下ろすフェン。
「見たか、これが知名度ってやつだ。山に籠ってるジジイは持ってねえよな」
「ふん。俺様だってほら、女はみんなこっち見てるだろう」
「ばーか、ありゃあ残雪のファンのグループだよ」
暫くざわめいた後、いち早く気を取り直した放送席の司会が、マイクを手に叫び始めた。
「さあ、大変お待たせいたしました。いよいよ世紀の対決!リングの上にはダンジョン最強を競う魔獣が5人、対するは全国各地から集まった上級冒険者のチーム桃旗隊!
本日実況はもうおなじみですね、私コタロウと」
「解説のダンカンでございます」
「そして本日はリングまで少し距離がありますので、リング下で命がけの中継をしていただくのはーーーー」
「はーーい!メルでーーす!みなさーん、分かりますかーーーー?」
リングと観客席の間で、女冒険者のメルが大きく手を振っている。
「今日は、ここから汗と血の飛び散る熱い男の、そして女の戦いを命がけで実況しようと思います。ヨッロシクゥー!」
ワーーーーーッと観客席に沸き起こる歓声と拍手。
呆然と見ていた桃旗隊のメンバーが、ようやく再起動した。それを見て、すかさず放送席から声がかかる。
「おっと、桃旗隊も動き出したようだ。さあ観客席の野郎ども!みんな声を合わせて!せーのっ」
マイクを観客席に向ける。
「戦士たちよ、正々堂々戦うがいい!レディーーーーーッ、ファイトォッ!」
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