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第3章 森から村へ
07 楽しい!
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「コイルくん、トイレは別名「はばかり」とも言います。つまり、人目をはばかってこっそり行く場所ということです。せめて壁は……野原に便器がドンって置いてあるって、どうなんですか。
……解放感?ダメです君ももう成人でしょう。これから自分の家を持とうと思っているなら、一人前の大人として、、、」
大人しそうなレイガンに、正座で向かい合って怒られた。
あ、それはミノルさんが……あ、はい。そうですね。
いや、でも森の中だし……あ、いえ。なるほど。
女子はいないから良かっ……あ、はい。ごもっとです。
「今回の契約は家ひとつと倉庫ふたつを建てるということで、請け負っています」
説教は終わったが、続けて口下手な棟梁さんの代わりに、レイガンが説明してくれる。
レイガンは真面目で大人しそうな20代前半くらいの青年だ。さっきまではあきれ顔でトイレについてコイルに説教していたが、今は柔らかく笑いながら、家になるデルフの木を指さしながら丁寧に説明してくれる。
なお、説明はレイガンに任せて、棟梁は紙にサラサラと絵を描いていて、ケンジはこっちをニヤニヤ笑いながら見ている。ケンジはレイガンよりは年上のようだが、軽そうな青年で、出会ったとき手を振ってくれた人だ。
なお、正座は止めて、昨日切り出した丸太の椅子に座って大きい丸太をテーブル代わりにしてお茶を出した。場所はかまどの横、つまりバーベキューテラスである。多分?
「コイルさんには、内装は壁を貼るだけ、外装や設備に特にこだわりはないと聞いていますので、こちらに全部お任せということで良いですね?水回りも家の設備の一部ですから、キッチンや風呂、トイレもこちらで……どうにかします」
「え、あ、はい」
「ねえねえ、そこの木の下の壁って、きみが塗ったの?」
「え?うん。僕が塗りました」
「あはは、そんな、かしこまらなくていいからさ、普通に喋ってよ。言いたいことちゃんと言わないと、思ったのと全然違う家になっちゃうよ?」
「……うん、わかった」
「でさあ、あの壁って、塗るの大変だったでしょ?」
「そう!大変だったんだ!」
「でも、面白かった?」
「うん。何でわかるの?ミノルさんと二人で塗ったんだけど、すっごい楽しかったよ!」
「あはは。わかるわかる!だって俺も、家作るの楽しいもん。そこのお風呂だってトイレだって、全部楽しく作ったんだよね」
「……うん……すっごく楽しかったよ」
「でしょ。だから、俺たち、きみの作品を、プロの技でもっと活かしたいんだ。ほら、棟梁の書いた絵、見てみて」
「こんな感じでどうだ?」
棟梁の手元の紙には、コイルの家の完成予想図が書かれていた。
デルフの木はその形を生かして、階段とドアが付いた立派なツリーハウスに見える。コイルの作った倉庫はそのままで、倉庫のドアだけ作り変えるようだ。
川沿いのトイレと風呂とキッチンの上には屋根が付き、東屋になっている。トイレには竹を組んだ壁を付けて目隠しに。風呂の周りにも、大きな石を置いたり背の低い木を植えて、露天の雰囲気をさらに盛り上げるようなさりげない目隠しが描かれている。
「……すごい!」
少し俯き加減になりかけていたコイルの顔が、ぱあっと輝いた。
「そう。こんな家に住みたかったんだ!」
「でしょ、でしょ。棟梁もこういう物件、実は好きなんだよ。街中じゃあ無理だからね」
ケンジさんが笑いながらバシバシとコイルとレイガンを叩いてくる。
「それに、レイガンも少し言い方を考えないとね」
「はい。すみません。ちょっと衝撃的過ぎて、つい。いえ、コイルくん、ごめんなさい」
「あ、いえ、いいです。僕もトイレはどうにかしないとなあって思ってたので。ははっ」
「二人とも、固ーい。俺たちたいして年も違わないんだから、ケンジとレイガンで良いよ。コイルって呼んでいいかな?」
「……っ!もちろん!改めてよろしくね、ケンジ、レイガン」
「こちらこそよろしくお願いします、コイル」
「よろしくな、コイル。で、ここなんだけどさ、コイルはどう?ちょっとさ、こうしたら……こうじゃない?」
「あ、えっと、この辺をこう……こんな感じで」
「良いんじゃないか?」
「だったら此処はこうしたらどうでしょう?」
「ええ?ああ、そっか。それもありか。じゃあこんなのは?」
「……それは難しいな、住み始めたらほら、ここがこうで、困るだろう?」
「あ、ほんとだ!じゃあ……」
「ここは?何に使うんだ?」
「あ、そこは畑にしようと思っててね、えっと、ここからここまでくらい」
「畑かあ、いいな。だったら此処にこんなの……んー、まだ棟梁のように描けないな」
「修行しろ。……ほら、こんな感じだろう?」
「あ、そうそう!」
「でねー……」
ようやく本格的に理想の家づくりが始まった。
……解放感?ダメです君ももう成人でしょう。これから自分の家を持とうと思っているなら、一人前の大人として、、、」
大人しそうなレイガンに、正座で向かい合って怒られた。
あ、それはミノルさんが……あ、はい。そうですね。
いや、でも森の中だし……あ、いえ。なるほど。
女子はいないから良かっ……あ、はい。ごもっとです。
「今回の契約は家ひとつと倉庫ふたつを建てるということで、請け負っています」
説教は終わったが、続けて口下手な棟梁さんの代わりに、レイガンが説明してくれる。
レイガンは真面目で大人しそうな20代前半くらいの青年だ。さっきまではあきれ顔でトイレについてコイルに説教していたが、今は柔らかく笑いながら、家になるデルフの木を指さしながら丁寧に説明してくれる。
なお、説明はレイガンに任せて、棟梁は紙にサラサラと絵を描いていて、ケンジはこっちをニヤニヤ笑いながら見ている。ケンジはレイガンよりは年上のようだが、軽そうな青年で、出会ったとき手を振ってくれた人だ。
なお、正座は止めて、昨日切り出した丸太の椅子に座って大きい丸太をテーブル代わりにしてお茶を出した。場所はかまどの横、つまりバーベキューテラスである。多分?
「コイルさんには、内装は壁を貼るだけ、外装や設備に特にこだわりはないと聞いていますので、こちらに全部お任せということで良いですね?水回りも家の設備の一部ですから、キッチンや風呂、トイレもこちらで……どうにかします」
「え、あ、はい」
「ねえねえ、そこの木の下の壁って、きみが塗ったの?」
「え?うん。僕が塗りました」
「あはは、そんな、かしこまらなくていいからさ、普通に喋ってよ。言いたいことちゃんと言わないと、思ったのと全然違う家になっちゃうよ?」
「……うん、わかった」
「でさあ、あの壁って、塗るの大変だったでしょ?」
「そう!大変だったんだ!」
「でも、面白かった?」
「うん。何でわかるの?ミノルさんと二人で塗ったんだけど、すっごい楽しかったよ!」
「あはは。わかるわかる!だって俺も、家作るの楽しいもん。そこのお風呂だってトイレだって、全部楽しく作ったんだよね」
「……うん……すっごく楽しかったよ」
「でしょ。だから、俺たち、きみの作品を、プロの技でもっと活かしたいんだ。ほら、棟梁の書いた絵、見てみて」
「こんな感じでどうだ?」
棟梁の手元の紙には、コイルの家の完成予想図が書かれていた。
デルフの木はその形を生かして、階段とドアが付いた立派なツリーハウスに見える。コイルの作った倉庫はそのままで、倉庫のドアだけ作り変えるようだ。
川沿いのトイレと風呂とキッチンの上には屋根が付き、東屋になっている。トイレには竹を組んだ壁を付けて目隠しに。風呂の周りにも、大きな石を置いたり背の低い木を植えて、露天の雰囲気をさらに盛り上げるようなさりげない目隠しが描かれている。
「……すごい!」
少し俯き加減になりかけていたコイルの顔が、ぱあっと輝いた。
「そう。こんな家に住みたかったんだ!」
「でしょ、でしょ。棟梁もこういう物件、実は好きなんだよ。街中じゃあ無理だからね」
ケンジさんが笑いながらバシバシとコイルとレイガンを叩いてくる。
「それに、レイガンも少し言い方を考えないとね」
「はい。すみません。ちょっと衝撃的過ぎて、つい。いえ、コイルくん、ごめんなさい」
「あ、いえ、いいです。僕もトイレはどうにかしないとなあって思ってたので。ははっ」
「二人とも、固ーい。俺たちたいして年も違わないんだから、ケンジとレイガンで良いよ。コイルって呼んでいいかな?」
「……っ!もちろん!改めてよろしくね、ケンジ、レイガン」
「こちらこそよろしくお願いします、コイル」
「よろしくな、コイル。で、ここなんだけどさ、コイルはどう?ちょっとさ、こうしたら……こうじゃない?」
「あ、えっと、この辺をこう……こんな感じで」
「良いんじゃないか?」
「だったら此処はこうしたらどうでしょう?」
「ええ?ああ、そっか。それもありか。じゃあこんなのは?」
「……それは難しいな、住み始めたらほら、ここがこうで、困るだろう?」
「あ、ほんとだ!じゃあ……」
「ここは?何に使うんだ?」
「あ、そこは畑にしようと思っててね、えっと、ここからここまでくらい」
「畑かあ、いいな。だったら此処にこんなの……んー、まだ棟梁のように描けないな」
「修行しろ。……ほら、こんな感じだろう?」
「あ、そうそう!」
「でねー……」
ようやく本格的に理想の家づくりが始まった。
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