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第2章 自分の居場所

33 二人で始める開拓計画

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 そのまま明日の予定を話し合う二人。一日一杯だけの贅沢のつもりで買ったビールはすでに三杯目だ。

「俺の明日の予定はトイレだ。あれは穴を掘って設置するだけでいい浄化タンク付きだから、排水は風呂の排水管につなげればいいだろう。床をセメントの木の粉で舗装したらいいな」

 トイレは水洗でお尻まで洗って乾燥してくれる。流した先の浄化タンクではウォーターの魔法で水分だけ抽出して排水管に流した後、残りを土魔法で分解して地下に排出する。
 長年使っていると地下の土壌がとても上質な培養土になってしまう。つまり草が茂りやすいのが難点だ。そこで田舎ではトイレの傍にギシギシやアジサイを植える。どちらもトイレットペーパーの代わりにするためだ。洗って乾かしてくれるとはいえ、なんとなく拭きたくなるものだろう?

「トイレは良いね。穴を掘って埋めるのも今日までだー」

「コイルは何をする予定だ?」

「僕はメルの木を植えるよ。向こうのダンジョン入り口のほうはエドワード様にお任せすることになると思うけど、こっちは僕が使うから、境界線は大事だよね」

「あの数のメルの木を植えるのは、ずいぶん魔力を使うはずだ。まあ、出来ないことはないが。魔力が異常に底上げされていることを隠したいなら、使い方や使う場所は考えたほうが良いぞ」

「なるほど。そうだね。気を付けてはいたつもりなんだけど、怪しかった?」

「いや、コイルは魔道具好きだから、案外自分の魔力使ってないな。俺はギフトで見て分かっていたが、大丈夫だと思う」

 そう。コイルは魔道具好きなのだ。
 誰でも簡単に使える着火やウォーターですら魔道具を持っているほど。

「ただ、メルの木を何百本も植えるほど穴を掘るのに、自分の土魔法を使うと、さすがに疑問に思われるな。明後日には大工たちが来るから、明日中に済ませておくといいだろう」

「分かった」

 素直に頷くコイルに、まっすぐに均等にメルの木を植えるコツを教えるミノル。流石の年の功だ。


「そういえば、コイルは知っているかもしれないが、攻略隊が撤退するぞ」

「……知らないよ?」

「そうか。リアルタイムでダンジョンの情報が入るわけじゃないんだな。第4層で魔獣に襲われたメンバーが20人前後、入り口まで転送されたそうだ。残りは即座に第3層まで退いた。さっき本部が騒がしかったので寄ってみたが、そんな状況だった」

「……ごめんなさい」

 コイルが俯いて、小さな声で呟くと、ミノルの大きな手がガシガシとコイルの頭をかきまぜた。

「謝ることはない。お前はスタンピードが起きないように頑張っているんだろう?お前が望んだとおり、今回の遠征で死者は出なかった」

 ほっと息をつくコイル。まだガシガシと頭をなで続けられ、髪は鳥の巣だ。

「痛っ。もう、痛いよ。でも、ミノルさんは、本部に、えっと本部、大変なんじゃないの?帰らなくていいの?」

「ああ、幸い死者はいないので、対応は出来ている。コイルは分からないかもしれないが、新しいダンジョンの調査で死者がいないというのは快挙だ。撤退中の攻略隊には怪我人もいるようだが今回は薬草の森ということで薬師や医師ギルドのメンバーも数人ずついたので大丈夫だろう。
 エドワード様も撤退を指示した後は、本部の指揮を領軍の左将軍に任せて、もうすでに館まで帰っている。
 俺は今は騎士としてコイルの護衛に回されているのでここにいて問題はないが、これから退職して、そうだな、傭兵ギルドに所属するか。明日一度岡山村に帰ることにしよう」

 それが良い、と自分で頷いたミノル。コイルもミノルにダンジョンに対する嫌悪などは見えないので、ようやく笑顔が出た。

「だから明日はコイル、お前……ブッ、ブフッ!……何お前、あはは、すごい頭だな!わははは」

 猫毛のコイルの髪は、本当に鳥の巣のようにぐしゃぐしゃに縺れて爆発していた。
 ……これ、やったのはミノルさんなんだけど。
 けれど大爆笑のミノルについ釣られて一緒に笑い始めてしまい、この日の話し合いはここで終了。


 明日から、ついにボッチでなくなったコイルの活躍が始まる…………のか?

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