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第4章 嬉しすぎるお誘い

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「悪いね。せっかくの休みに」 

「いえ。休日はどうせ家でだらだらしてるだけなので」

「3、4件回りたいところがあるんだけど、大丈夫? 車にすれば良かったんだけど、都内を走るはあんまり好きじゃなくてさ」

「はい、大丈夫です」

 わあ、1件じゃないんだ。ってことは本当に1日中、一緒にいられる。やった。

「スイーツは好き?」
「はい! 大好きです! 宮沢マネージャーは?」

 そう言うと、宮沢さんはちょっと顔をしかめて、
「ねえ、その『宮沢マネージャー』ってやめない? 会社じゃないんだし」

「えっ、じゃあなんとお呼びすれば?」

「友だちはジュリオって呼ぶけど」
「じゅ、ジュリオですか」
「ほら、その敬語もなし。俺もさ、『ひよりちゃん』って呼んでいい?」

 ひよりちゃん⁈
 一瞬、息が止まるかと思った。
 こうして一緒にいるだけでも有難すぎて涙が出そうなのに、その上、ひよりちゃんだなんて。

「えっとじゃあ、ジュリオさんにします。ため口は……できそうにないです」
 下を向いて小声でつぶやいた。

「まっ、いいか。高橋、おっと、ひよりちゃんらしくて」
 宮沢さんは目を細めて笑った。

 もう、目尻によった笑いじわまで絵になるんですけど。

 最初の目的地は南青山の住宅地にあるカフェ。
 ガラスの引き戸が印象的な、全部で6席ほどの小さな店だった。

 人気店らしく、到着したときには3組の客が外で並んでいた。

「開店してまだ日が浅いはずなのに、もうずいぶん知れ渡っているんだな」

「SNSがあるから、みんな情報早いですよね」
 
 30分ほど待って、店内へ。

 野菜素材のみを扱ったケーキの店で、わたしはホウレンソウのシフォンケーキ、宮沢さんはニンジンのパンケーキを注文した。
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