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第五章 逃避行
十二
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天音は身体を起こし、服を脱ぎはじめた。
その裸身は、泰西名画のギリシャ神のように美しい。
桜子は心臓を直接つかまれたかのように、胸が苦しくなった。
天音が愛おしい。
たとえ天音が悪魔で、このまま魂を吸い取られてしまうとしても後悔はしない。
その彼と愛を交わすことに、何をためらうことがあるのだろう。
こわばっていた桜子の身体から力が抜けていった。
彼女の変化を敏感に悟った天音は、掌で脚を優しくなで上げながら、ゆっくりと左右に開いた。
脚に口づけを施してゆく。
そこにも、いくつか跡を残しながら。
そして、彼女の中心にそっと触れた。
それから、天音は丹念に愛撫を続けた。
「天音……ああ……」
桜子はただ身体を震わせ、たえだえな声を漏らし、潤んだ目で天音を見つめつづけた。
「桜子、いいかい?」
天音の意図を察して、桜子は頷いた。
天音は唇を重ねながら、少しずつ、自身を彼女のなかに進めていった。
「ああ……あ、天音」
桜子は息もたえだえに喘いだ。
いくら、指や舌で丁寧な愛撫をほどこされていたとはいえ、彼を受け入れるのは、桜子の想像を超える感覚だった。
「つらいのか……我慢できない?」
天音の言葉に、桜子は首を振った。
つらくないわけではなかった。
けれど、天音とひとつになれた喜びのほうが何倍も勝っていた。
身体の奥で、直接的に天音を感じることがこんなにも悦びを与えてくれるなんて、想像もしていなかった。
「……わたくし……貴方の、本当の妻になれたのね」
「ああ、そうだ。俺の愛しい妻だ」
「嬉しい……」
「桜子……さくら……こ」
天音の動きが激しくなり、そして、彼女のなかで果てた。
***
並んで横たわったまま、天音は腕を回し、桜子を抱き寄せた。
桜子も天音の胸に頬を寄せた。
二人はそのまま先程までの愛の行為の余韻に浸っていた。
そのうち、桜子は静かな寝息をたてはじめた。
起こさないように、そっと腕を外し、天音は肘をつき、桜子の横顔をあかずに眺めた。
心のなかでは、初めての夜を反芻していた。
桜子の初々しい反応は、天音を魅了してやまなかった。
触れるたびに愛おしさが募って、狂おしいほどの欲望が突き上げてきた。
この先……
もし、離れ離れになったとしても、俺の妻は生涯彼女ただ一人だ。
天音はその想いを新たにしていた。
いつ戻ってきたのか、通りからまた、哀感のこもった三味線の音が聞こえてきた。
その音色に耳を傾けているうちに、天音もいつのまにか、眠りについた。
その裸身は、泰西名画のギリシャ神のように美しい。
桜子は心臓を直接つかまれたかのように、胸が苦しくなった。
天音が愛おしい。
たとえ天音が悪魔で、このまま魂を吸い取られてしまうとしても後悔はしない。
その彼と愛を交わすことに、何をためらうことがあるのだろう。
こわばっていた桜子の身体から力が抜けていった。
彼女の変化を敏感に悟った天音は、掌で脚を優しくなで上げながら、ゆっくりと左右に開いた。
脚に口づけを施してゆく。
そこにも、いくつか跡を残しながら。
そして、彼女の中心にそっと触れた。
それから、天音は丹念に愛撫を続けた。
「天音……ああ……」
桜子はただ身体を震わせ、たえだえな声を漏らし、潤んだ目で天音を見つめつづけた。
「桜子、いいかい?」
天音の意図を察して、桜子は頷いた。
天音は唇を重ねながら、少しずつ、自身を彼女のなかに進めていった。
「ああ……あ、天音」
桜子は息もたえだえに喘いだ。
いくら、指や舌で丁寧な愛撫をほどこされていたとはいえ、彼を受け入れるのは、桜子の想像を超える感覚だった。
「つらいのか……我慢できない?」
天音の言葉に、桜子は首を振った。
つらくないわけではなかった。
けれど、天音とひとつになれた喜びのほうが何倍も勝っていた。
身体の奥で、直接的に天音を感じることがこんなにも悦びを与えてくれるなんて、想像もしていなかった。
「……わたくし……貴方の、本当の妻になれたのね」
「ああ、そうだ。俺の愛しい妻だ」
「嬉しい……」
「桜子……さくら……こ」
天音の動きが激しくなり、そして、彼女のなかで果てた。
***
並んで横たわったまま、天音は腕を回し、桜子を抱き寄せた。
桜子も天音の胸に頬を寄せた。
二人はそのまま先程までの愛の行為の余韻に浸っていた。
そのうち、桜子は静かな寝息をたてはじめた。
起こさないように、そっと腕を外し、天音は肘をつき、桜子の横顔をあかずに眺めた。
心のなかでは、初めての夜を反芻していた。
桜子の初々しい反応は、天音を魅了してやまなかった。
触れるたびに愛おしさが募って、狂おしいほどの欲望が突き上げてきた。
この先……
もし、離れ離れになったとしても、俺の妻は生涯彼女ただ一人だ。
天音はその想いを新たにしていた。
いつ戻ってきたのか、通りからまた、哀感のこもった三味線の音が聞こえてきた。
その音色に耳を傾けているうちに、天音もいつのまにか、眠りについた。
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