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第二章 侯爵家の舞踏会と図書室での密会
六
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「申し訳ございません。そろそろお暇しますので」
そう言って、桜子は一礼した。
高志は立ち上がった桜子に目を向け、頭から足元まで値踏みするように見つめた。
桜子の嫌悪感を引き出すような、嫌な視線だった。
もう一秒たりとも、ここにはいたくない。
桜子は「ごきげんよう」とだけ述べて、父母のところに行こうと次の間に向かった。
背中にはまだ高志の視線を感じたが、桜子は無視した。
にぎやかな笑い声を立てている貴婦人のなかに、母はいた。
「お母様、わたくし、とてもくたびれてしまいました。慣れない靴で足も痛くなってしまって。先に帰宅してもよろしゅうございますか」
「あらそう? ではご当主とお父様にお断りしてからお暇なさい」
「はい」
舞踏会が大好きな母は、桜子にそれだけ言うと、すぐにまた貴婦人方の輪に戻っていった。
おそらく、夜中すぎまでご帰宅はないだろう。
父のところに向かうと、立派な髭を蓄えた中年の男性と話しこんでいた。
高志の父、細谷侯爵だ。
「お父様」
「おお、桜子。どうした」
「お先にお暇させていただこうと」
「なんだ、まだ来たばかりじゃないか」
「申し訳ありません。先ほどから頭痛がいたしますので」
「こちらが?」
「はい。次女の桜子です」
細谷侯爵は顎髭を触りながら、桜子をじっと見つめてきた。
やはり血は争えない。
その表情が、先ほどの高志とよく似ていた。
「いや、実に美しいお嬢さんだ」
それには答えず、桜子は深々と一礼して、その場を後にした。
そして表で待っていた吉田家の馬車に乗り、帰途についた。
そう言って、桜子は一礼した。
高志は立ち上がった桜子に目を向け、頭から足元まで値踏みするように見つめた。
桜子の嫌悪感を引き出すような、嫌な視線だった。
もう一秒たりとも、ここにはいたくない。
桜子は「ごきげんよう」とだけ述べて、父母のところに行こうと次の間に向かった。
背中にはまだ高志の視線を感じたが、桜子は無視した。
にぎやかな笑い声を立てている貴婦人のなかに、母はいた。
「お母様、わたくし、とてもくたびれてしまいました。慣れない靴で足も痛くなってしまって。先に帰宅してもよろしゅうございますか」
「あらそう? ではご当主とお父様にお断りしてからお暇なさい」
「はい」
舞踏会が大好きな母は、桜子にそれだけ言うと、すぐにまた貴婦人方の輪に戻っていった。
おそらく、夜中すぎまでご帰宅はないだろう。
父のところに向かうと、立派な髭を蓄えた中年の男性と話しこんでいた。
高志の父、細谷侯爵だ。
「お父様」
「おお、桜子。どうした」
「お先にお暇させていただこうと」
「なんだ、まだ来たばかりじゃないか」
「申し訳ありません。先ほどから頭痛がいたしますので」
「こちらが?」
「はい。次女の桜子です」
細谷侯爵は顎髭を触りながら、桜子をじっと見つめてきた。
やはり血は争えない。
その表情が、先ほどの高志とよく似ていた。
「いや、実に美しいお嬢さんだ」
それには答えず、桜子は深々と一礼して、その場を後にした。
そして表で待っていた吉田家の馬車に乗り、帰途についた。
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