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第7章 パーティー、そして
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「お父様はその後、お変わりはございませんか」
「ええ、あの日は問題なかったのだけれどね。昨日、また軽い発作を起こしたものだから、今は入院しているわ」
「ぼくも昨日見舞いに行ったけれど、元気そうだったよ」
「まあ、念のための入院だから。でも、何と言っても高齢なので、大事を取ったほうがいいとお医者様に言われて」
お見舞いに行きたいと申し出たけれど、その必要はないとふたりに言われた。
「会長が退院してから、ちゃんと席を設けるから心配しなくて大丈夫だよ」
「まあ、それにしても、壱子ちゃん、綺麗なお嬢さんになったわね。子供のころもお人形さんみたいに可愛かったけれど」
「すみません。わたしは宗太さんのお母さんのこと、あまり覚えていなくて……」
「あなたはまだ小学生だったものね。でも、なんと言っても、宗太の初恋のお相手ですからね。わたしはよーく覚えているわよ」
宗太さんのお母さんはにっこり笑った。
ああ、この笑顔。
宗太さんの笑顔はお母さん譲りなんだ。
「ごきげんよう、エリカさん」
篠崎先生がソファーから立ち上がって、声をかけてくれた。
神谷先生も手にしていた湯呑を茶托に置き、会釈をしてくれた。
「では、先生方は、今回のこと、ご存知だったんですか」
「ええ、もちろん」
おふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「喜代さんに、宗太さんの花嫁候補のエリカさんのお見立てをお願いされていたの、実は」
篠崎先生は宗太さんのお母さんに話しかけた。
「喜代さん、ご安心なさいな。エリカさんはとても素直で前向きな女性よ。きっと息子さんの素晴らしいパートナーになるわ」
篠崎先生がわたしに優しい眼差しを向けた。
「それにしても、はじめにお会いしたときも綺麗なお嬢さんとは思っていたけれど、ますます美しさに磨きがかかったみたいね」
「ええ、あの日は問題なかったのだけれどね。昨日、また軽い発作を起こしたものだから、今は入院しているわ」
「ぼくも昨日見舞いに行ったけれど、元気そうだったよ」
「まあ、念のための入院だから。でも、何と言っても高齢なので、大事を取ったほうがいいとお医者様に言われて」
お見舞いに行きたいと申し出たけれど、その必要はないとふたりに言われた。
「会長が退院してから、ちゃんと席を設けるから心配しなくて大丈夫だよ」
「まあ、それにしても、壱子ちゃん、綺麗なお嬢さんになったわね。子供のころもお人形さんみたいに可愛かったけれど」
「すみません。わたしは宗太さんのお母さんのこと、あまり覚えていなくて……」
「あなたはまだ小学生だったものね。でも、なんと言っても、宗太の初恋のお相手ですからね。わたしはよーく覚えているわよ」
宗太さんのお母さんはにっこり笑った。
ああ、この笑顔。
宗太さんの笑顔はお母さん譲りなんだ。
「ごきげんよう、エリカさん」
篠崎先生がソファーから立ち上がって、声をかけてくれた。
神谷先生も手にしていた湯呑を茶托に置き、会釈をしてくれた。
「では、先生方は、今回のこと、ご存知だったんですか」
「ええ、もちろん」
おふたりは顔を見合わせて微笑んだ。
「喜代さんに、宗太さんの花嫁候補のエリカさんのお見立てをお願いされていたの、実は」
篠崎先生は宗太さんのお母さんに話しかけた。
「喜代さん、ご安心なさいな。エリカさんはとても素直で前向きな女性よ。きっと息子さんの素晴らしいパートナーになるわ」
篠崎先生がわたしに優しい眼差しを向けた。
「それにしても、はじめにお会いしたときも綺麗なお嬢さんとは思っていたけれど、ますます美しさに磨きがかかったみたいね」
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