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第3章 とまどい? ときめき? ルームシェア
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「だから、今回の政略結婚を阻止することは、祖父と叔父に対するぼくの〝反抗ののろし”という意味もあるんだ。もうこれ以上、あなたたちの言うことを聞くだけの存在ではない、と」
芹澤さんの目に力が宿る。
「今の地位にふさわしい力をつけて、その上で会社を改革していきたいと思ってるんだ。それには、今回の政治家の娘との結婚は、将来、ぼくにとっても会社にとっても、絶対に障害になると思うんだよ」
彼は話を続けた。
「どのみち、今みたいな一族経営じゃあ、いずれ限界が来る。祖父と叔父のやり方は時代遅れが目立つんだ。これからの時代、セリザワほどの大企業と言えども、過去の栄光に頼っているだけでは、とても生き残っていけないのに」
すごいな、芹澤さん。
わたしとたった1歳しか違わないのに。
しっかり将来を見据えているんだ。
自分は操り人形なんて言ってたけど、こうして会社の未来を憂いている横顔は、まさに重責を担う男の顔だ。
「改めてお願いしたい。頼む。どうしてもきみの協力が必要なんだ。どうか、ぼくのために一肌脱いでくれないか」
一肌脱いでくれ……か。
こういう正攻法のお願いに、極端に弱いんだよな、わたしは。
いつもの人助け体質がひょっこりと顔を出してしまう。
もしかして……事務所の裏プロフィールに、「来栖エリカは頼まれると嫌とは言えない性格」と書いてあったりして。
「あの……本当にわたしでいいんですか?」
芹澤さんはすばやく視線をこっちに向けた。
「もちろん。あの日、きみが副社長室に入ってきた瞬間から、この人ならいけるって確信してたんだ。だいたい、きみは自分を過少評価しすぎている。ほんの少し磨けば、きみなら、どんな女性にも引けを取らないよ。ぼくが保証する」
うーん。
そこまで言われてしっぽを巻いて逃げ出したら、女がすたるか。
「わかりました。そこまでおっしゃるなら。乗りかかった舟です。最大限努力してみます」
芹澤さんは嬉しそうな顔で頷いた。
芹澤さんの目に力が宿る。
「今の地位にふさわしい力をつけて、その上で会社を改革していきたいと思ってるんだ。それには、今回の政治家の娘との結婚は、将来、ぼくにとっても会社にとっても、絶対に障害になると思うんだよ」
彼は話を続けた。
「どのみち、今みたいな一族経営じゃあ、いずれ限界が来る。祖父と叔父のやり方は時代遅れが目立つんだ。これからの時代、セリザワほどの大企業と言えども、過去の栄光に頼っているだけでは、とても生き残っていけないのに」
すごいな、芹澤さん。
わたしとたった1歳しか違わないのに。
しっかり将来を見据えているんだ。
自分は操り人形なんて言ってたけど、こうして会社の未来を憂いている横顔は、まさに重責を担う男の顔だ。
「改めてお願いしたい。頼む。どうしてもきみの協力が必要なんだ。どうか、ぼくのために一肌脱いでくれないか」
一肌脱いでくれ……か。
こういう正攻法のお願いに、極端に弱いんだよな、わたしは。
いつもの人助け体質がひょっこりと顔を出してしまう。
もしかして……事務所の裏プロフィールに、「来栖エリカは頼まれると嫌とは言えない性格」と書いてあったりして。
「あの……本当にわたしでいいんですか?」
芹澤さんはすばやく視線をこっちに向けた。
「もちろん。あの日、きみが副社長室に入ってきた瞬間から、この人ならいけるって確信してたんだ。だいたい、きみは自分を過少評価しすぎている。ほんの少し磨けば、きみなら、どんな女性にも引けを取らないよ。ぼくが保証する」
うーん。
そこまで言われてしっぽを巻いて逃げ出したら、女がすたるか。
「わかりました。そこまでおっしゃるなら。乗りかかった舟です。最大限努力してみます」
芹澤さんは嬉しそうな顔で頷いた。
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