苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~

泉南佳那

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第3章 とまどい? ときめき? ルームシェア

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 間接照明が落ち着いた空間を演出している超高級レジデンスのリビング。
 窓から見えるのは、ライトアップされた東京タワー。
 手にしているのはよく冷えた白ワイン。

 そして、なんと言っても、わたしのそばに坐っているのは、日本中のイケメンが束になっても敵わないような、最強イケメン御曹司の副社長。

 女子なら誰でも一度は憧れる、最高にロマンチックなシチュエーションじゃない、これって。

 それなのに、今のわたしは、言いづらいことをどう切り出そうか、そのことばかりに気を取られて、この奇跡のような瞬間を楽しむ余裕は、残念なことにまったくなかった。

「お酒は強いほう?」
「いえ、まったく。すぐ赤くなるし」
「へえ、そう。実はぼくもあまり強くはないけどね」
「そうなんですか」

 そんなことを言いながら、芹澤さんはグラスを手にした。

 その姿を横目で盗み見る。

 とにかく、文句のつけどころがない。
〝ワイングラスが似合う人選手権〟があれば、上位入賞間違いなし。

 ああ、もうこの場でのたうちまわりたいほど素敵……
 こんな姿を目にしてしまうと、つい決心が鈍りそうになる。

 でも、この間も彼の笑顔のせいで断りそびれたんだ。
 今日はちゃんと言わなきゃ。

 わたしは意を決して、口を開いた。

「あの……いまさら、こんなこと言っていいのかわからないんですけど」

「うん?」
 芹澤さんは顔を少し傾けて、わたしのほうを見た。
 磨きあげられた黒曜石のような瞳に見つめられると、催眠術にかかったようにぼーっとしてしまう。

 こら、負けちゃだめ!
 
 ありったけの理性を総動員して、彼の魅力に対抗した。

「やっぱり、今回のお話、なかったことにしていただけませんか」
 
 ふー、言えた……
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