43 / 117
第3章 とまどい? ときめき? ルームシェア
11
しおりを挟む
間接照明が落ち着いた空間を演出している超高級レジデンスのリビング。
窓から見えるのは、ライトアップされた東京タワー。
手にしているのはよく冷えた白ワイン。
そして、なんと言っても、わたしのそばに坐っているのは、日本中のイケメンが束になっても敵わないような、最強イケメン御曹司の副社長。
女子なら誰でも一度は憧れる、最高にロマンチックなシチュエーションじゃない、これって。
それなのに、今のわたしは、言いづらいことをどう切り出そうか、そのことばかりに気を取られて、この奇跡のような瞬間を楽しむ余裕は、残念なことにまったくなかった。
「お酒は強いほう?」
「いえ、まったく。すぐ赤くなるし」
「へえ、そう。実はぼくもあまり強くはないけどね」
「そうなんですか」
そんなことを言いながら、芹澤さんはグラスを手にした。
その姿を横目で盗み見る。
とにかく、文句のつけどころがない。
〝ワイングラスが似合う人選手権〟があれば、上位入賞間違いなし。
ああ、もうこの場でのたうちまわりたいほど素敵……
こんな姿を目にしてしまうと、つい決心が鈍りそうになる。
でも、この間も彼の笑顔のせいで断りそびれたんだ。
今日はちゃんと言わなきゃ。
わたしは意を決して、口を開いた。
「あの……いまさら、こんなこと言っていいのかわからないんですけど」
「うん?」
芹澤さんは顔を少し傾けて、わたしのほうを見た。
磨きあげられた黒曜石のような瞳に見つめられると、催眠術にかかったようにぼーっとしてしまう。
こら、負けちゃだめ!
ありったけの理性を総動員して、彼の魅力に対抗した。
「やっぱり、今回のお話、なかったことにしていただけませんか」
ふー、言えた……
窓から見えるのは、ライトアップされた東京タワー。
手にしているのはよく冷えた白ワイン。
そして、なんと言っても、わたしのそばに坐っているのは、日本中のイケメンが束になっても敵わないような、最強イケメン御曹司の副社長。
女子なら誰でも一度は憧れる、最高にロマンチックなシチュエーションじゃない、これって。
それなのに、今のわたしは、言いづらいことをどう切り出そうか、そのことばかりに気を取られて、この奇跡のような瞬間を楽しむ余裕は、残念なことにまったくなかった。
「お酒は強いほう?」
「いえ、まったく。すぐ赤くなるし」
「へえ、そう。実はぼくもあまり強くはないけどね」
「そうなんですか」
そんなことを言いながら、芹澤さんはグラスを手にした。
その姿を横目で盗み見る。
とにかく、文句のつけどころがない。
〝ワイングラスが似合う人選手権〟があれば、上位入賞間違いなし。
ああ、もうこの場でのたうちまわりたいほど素敵……
こんな姿を目にしてしまうと、つい決心が鈍りそうになる。
でも、この間も彼の笑顔のせいで断りそびれたんだ。
今日はちゃんと言わなきゃ。
わたしは意を決して、口を開いた。
「あの……いまさら、こんなこと言っていいのかわからないんですけど」
「うん?」
芹澤さんは顔を少し傾けて、わたしのほうを見た。
磨きあげられた黒曜石のような瞳に見つめられると、催眠術にかかったようにぼーっとしてしまう。
こら、負けちゃだめ!
ありったけの理性を総動員して、彼の魅力に対抗した。
「やっぱり、今回のお話、なかったことにしていただけませんか」
ふー、言えた……
3
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
可愛がっても美形吸血鬼には懐きません!~だからペットじゃないってば!
ミドリ
恋愛
文明がほぼ滅び、希少種となってしまったヒト。『神の庭』があると言われるネクロポリスに向かう自称うら若き乙女・小町は、環境に対応する為に進化した亜人に襲われる。
亜人はヒトを食らう種族。食べられそうになった小町を助けてくれたのは、超絶美形の吸血鬼の亜人、シスだった。
小町の血の匂いに惹かれ、護衛を名乗り出るシス。どうしたってドキドキしてしまう小町と、小町を喋る家畜としか見ていなそうなシスの明るいドタバタ恋愛ストーリーです。
『神の庭』とは。小町の目的とは一体。そして亜人とヒトの運命や如何にーー。


お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる