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第2章 麗しき副社長

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 よし、決めた。

 前に坐ってる芹澤さんに声をかけようとしたちょうどそのとき、彼のほうが先に振り向いた。

 えっ? まだ、声かけてないけど。

「これ……」
 芹澤さんはシートの隙間から手を伸ばし、わたしの目の前で、ぱっと開いて見せた。
 手のひらの上には、白地にイチゴ模様のついたキャンディがひとつ。

「食べる?」
「わっ、懐かしい。子どものころ、大好きでよく食べましたよ、これ。まだ売ってたんですね」

「湊が買ってきてくれたんだよ。この間、このキャンディの話をしてたから」
「み、湊さんが……ですか。へぇー……」

 あらま。
 この強面の人が、このキャンディを買っているところを想像すると、悪いけど、ちょっと笑える。

「湊は一番信頼のおける部下なんだ。ぼくが不在のとき、何か相談があれば、彼に連絡してくれればいいから」
 そう言って、湊さんの名刺を渡してくれた。

 わたしはよろしくお願いしますと言ってから、包みを開けた。

 イチゴミルク味のキャンディ。
 子どものころ、大好きだった。

 おいしいし、何よりこの包み紙が可愛くて、ほかのものとは違う特別感があった。
 遊びに行くときはいつも持っていって、友だちに配ったものだった。
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