可愛がってあげたい、強がりなきみを。 ~国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます~

泉南佳那

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第3章 気持ち、あふれて

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 こうして、はじめてのふたりきりの食事は和やかに終わり、いつものようにエレベーターで1階まで降りた。

「じゃあ、おやすみなさい」

 別れ際、そう言って後ろを向いて歩き出そうとしたとき「橋本さん」と呼びとめられた。

「はい?」
 振り返ると、彼はいつもよりもさらに強い眼差しでわたしを見つめていた。

 ばくん、と心臓がはねる。
 視線が強力な磁力のように感じられて、吸い寄せられそうになる。

「あのさ……」

 そう言ったきり、彼の唇は動きを止めた。

 目を伏せて、ためらうような表情を見せ、言葉を詰まらせている。
 緊張した面持ちで。

 何を言いたいの……

 わたしはじっと、彼の次の言葉を待った。

 でも、彼はふっと表情をゆるめて「なんでもない。じゃあ気をつけて」と手を振った。

「はい。じゃあ」

 わたしが答えている間に、エレベーターのドアは閉まっていった。

***

 駅に向かう道を歩きながら、なんとなくモヤモヤする心を持てあましていた。

 別れ際の宗介さんの、迷いを含んだ緊張した表情が目の前にちらつく。

 そう。実を言えば……
 呼び止められたとき、「部屋に来る?」と誘われるんじゃないかと、一瞬、思ってしまった。
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