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第2章 榊原宗介がふたり?

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「こちらです、どうぞ」
 今度は店員に導かれ、30席ほどの店内を横切り、奥へと進む。
 
 そのとき、ふと、不安になった。
 もし榊原宗介が、何かよからぬことを企んでいたとしたら……
 
 突然、脳裡に週刊誌のセンセーショナルな見出しが駆けめぐった。

「一般女性を喰い物にする○○。もてあそばれてポイ捨てされたわたし」とか。

 まさかね。
 わたしなんか、喰い物にされるほど、色気もないし、若くもない。

 でも、やっぱり、会わずにこのまま回れ右して帰ったほうが無難かも……と思った矢先、個室のドアが開き、背の高い男性が現れた。

 あー、出てきちゃったか。
 ともかく挨拶だけして、できれば部屋に入らずに……あれ、別人?
 いや、本人?
 照明が暗くて判然としない。

 その人は声をかけてきた。
「橋本さん、ですよね?」
 明るい調子の声音。

「は、はい」
 やっぱり別人だ。声が違う。

 ???

 頭のなかがクエスチョン・マークで埋め尽くされる。

 それにしても、よく似ている。

 人目を気にして変装してるのかな。
 俳優だから声質まで変えられるんだろうか。

 わたしがよっぽど奇妙な表情をしていたのだろう。
 その男性は必死で笑いをこらえている。

「とにかく中へどうぞ」
 促されたわたしは歩を進めた。

 謎を解き明かしたかった。
 猜疑心より好奇心が勝った。
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