狐松明妖夜 ~きつねのたいまつあやかしのよる~

泉南佳那

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妖かしの夜(六)

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 辺りがにわかに明るくなった。

 それまで群雲に隠れていた満月が、雲の切れ間から顔をのぞかせた。
 月が、妖しいまでに白銀色に輝いている。

 それを目にした男たちは、我先に屋敷内に逃げ込んだ。

「だ、旦那様も、早く中へ」
 八重も祟りを恐れ、震え声で幸右衛門を呼ぶ。

「いや、狐の祟りなど迷信。誰か、誰かおらぬか?」
 幸右衛門が呼べど叫べど、皆、屋敷のなかで震え上がっているばかりであった。
「くそっ」
 屋敷中があたふたとしているのを後目に、狐火の行列は高木家の門前で止まった。

 そうして、被衣を翻す白狐と、裏庭から表に回っていた黒衣姿のふたりを招じ入れ、また悠々と村はずれを目指して出発した。

「まったく、腰抜け連中ばかりじゃ」

 幸右衛門は伴を連れず、おっとりがたなで一人、追いかけようとしたが、
「旦那様、どうぞおやめください!」と妻に必死に止められた。それでも、幸右衛門はその手を振りはらい、表に出た。

 狐火は整然とあぜ道を進んでゆく。まだ、それほど離れていない。

「待てぇ!」
 追いかけようとした幸右衛門の目の前に、突如、青い炎が現れた。

 ひとつ、ふたつ、みっつ……あとからあとから増えていく

「うわあ」
 冷たく燃える炎に取り囲まれた幸右衛門は金縛りにあったように、その場から一歩も動けなくなった。
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