狐松明妖夜 ~きつねのたいまつあやかしのよる~

泉南佳那

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引き離されて(三)

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***

 それから二晩が過ぎた。
 今日は芝居の千秋楽。
 幕が引けたら、源之丞の一行は違う村へと旅立ってしまうだろう。

 もう二度と、源之丞殿と会うことは叶わぬのか……

 絶望が紫乃を襲った。
 この三日間、何も食わず、一睡もしていない。
 身体は辛いのに、頭が冴えわたっていて、横になっても眠りは訪れなかった。

 小さな明かり取りから日が差し込んできたころ、祖母の辰が膳を手に蔵を訪れた。
「もういい加減、強情を張るのはやめにしなされ。飢え死にする気か?」

「ばば様、どうかここから出してくれるように、伯父上にお取次ぎください。お願いします」紫乃は祖母に縋りついて懇願した。

「ならん」
「やはりばば様も、おれが家のために太十のところに嫁にいけばいい、と思っているのか?」

「お前は、あの役者のところに行くつもりだろう」

「……」
 源之丞とのことを話せば、芝居嫌いの辰に何を言われるかわからない。紫乃は口を噤んでいた。

「だから、役者と関わりになるのは嫌だった。いつか、お前に話さねばと思っていたが――」祖母は語りはじめた。

「お前の母、咲江も、芝居者と情を通じおって、この村から出て行ったのじゃ」

 えっ? 母様も役者と?
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