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後朝(二)
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だが、妹同然の可愛い紫乃が不幸になるのを黙って見ているわけにはいかない。
楓の気持ちもまた、揺るぎないものだった。
源之丞の手をそっと外して、紫乃は楓に歩み寄った。
「楓、後生だから見逃してくれないか。でないと、家に帰ったら――」
「いたぞー」
そのとき、神社に続く坂道まで来ていた男衆が、彼らの話し声を聞きつけ、どやどやとやってきた。
「さあ、帰りますよ。紫乃様」
家の男衆のなかでも、特に屈強な連中が、紫乃の周りを取り囲んだ。
「やめろ! 紫乃が嫌がってるじゃァねえか」
源之丞は声を荒げた。
「なにをぅ」
男たちは殺気をこめて睨みつける。
源之丞も怯まない。
一触即発の危うい空気が流れる。
その緊張を破ったのは、紫乃だった。
「源之丞殿、おやめください。もし、けがでもされたら一大事。今日の舞台に障ります」
紫乃は観念した。
その両腕を二人の男がつかむ。
「わかった。逃げはせぬ。放してくれ」
ためらう二人の男に楓が手を放すように命じた。
「源之丞殿、迷惑をかけてしまった。申し訳なかった」
そう言うと紫乃は、二人の男に挟まれるように、家へと連れ戻されていった。
「芝居に差し障りがなきように、紫乃様がそなたと共にいたことは他言しない。他の者にも言っておきます」
そう言い残し、楓は去っていった。
源之丞はその場に立ち尽くし、坂を下っていく人影をいつまでも眺めていた。
楓の気持ちもまた、揺るぎないものだった。
源之丞の手をそっと外して、紫乃は楓に歩み寄った。
「楓、後生だから見逃してくれないか。でないと、家に帰ったら――」
「いたぞー」
そのとき、神社に続く坂道まで来ていた男衆が、彼らの話し声を聞きつけ、どやどやとやってきた。
「さあ、帰りますよ。紫乃様」
家の男衆のなかでも、特に屈強な連中が、紫乃の周りを取り囲んだ。
「やめろ! 紫乃が嫌がってるじゃァねえか」
源之丞は声を荒げた。
「なにをぅ」
男たちは殺気をこめて睨みつける。
源之丞も怯まない。
一触即発の危うい空気が流れる。
その緊張を破ったのは、紫乃だった。
「源之丞殿、おやめください。もし、けがでもされたら一大事。今日の舞台に障ります」
紫乃は観念した。
その両腕を二人の男がつかむ。
「わかった。逃げはせぬ。放してくれ」
ためらう二人の男に楓が手を放すように命じた。
「源之丞殿、迷惑をかけてしまった。申し訳なかった」
そう言うと紫乃は、二人の男に挟まれるように、家へと連れ戻されていった。
「芝居に差し障りがなきように、紫乃様がそなたと共にいたことは他言しない。他の者にも言っておきます」
そう言い残し、楓は去っていった。
源之丞はその場に立ち尽くし、坂を下っていく人影をいつまでも眺めていた。
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