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幕開き(一)
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村中が待ちに待った芝居の初日を迎えた。
木戸の前には、櫓太鼓が芝居開始を告げるのを待ちきれず、夜明け前から村人たちが大勢、詰めかけていた。
これから三日間、『仮名手本忠臣蔵』などの演目が上演されることになっている。
座頭、尾上竹次郎の演じる大星由良之助もさることながら、観客のお目当ては源之丞の早野勘平だ。
その役者振りでの人気はもちろんのこと、村人たちは皆、源之丞が雲助に襲われ、一時は命も危ぶまれたことを知っていたので、無事、不運を乗り切ったありがたい役者であると、その運にあやかろうという者もまた多かった。
紫乃はどうやって芝居を観にいこうかと、頭をひねっていた。
離れ座敷で源之丞とふたりでいたところを見つかって以来、祖母の辰の監視はさらに厳しくなった。
いつもは味方のはずの楓も、主人の幸右衛門でさえ頭が上がらぬ辰の命令には、とてもじゃないが背けない。
さりげなく装ってはいるが、辰に命じられて紫乃を見張っているようだ。
でも紫乃は、なんとしても源之丞の芝居が観たかった。
そして、源之丞に会わねばならなかった。
「楓。おれはどうしても、源之丞殿の芝居が観たい」
祖母の姿が見えなくなった隙に、紫乃は楓をつかまえて話を切り出した。
木戸の前には、櫓太鼓が芝居開始を告げるのを待ちきれず、夜明け前から村人たちが大勢、詰めかけていた。
これから三日間、『仮名手本忠臣蔵』などの演目が上演されることになっている。
座頭、尾上竹次郎の演じる大星由良之助もさることながら、観客のお目当ては源之丞の早野勘平だ。
その役者振りでの人気はもちろんのこと、村人たちは皆、源之丞が雲助に襲われ、一時は命も危ぶまれたことを知っていたので、無事、不運を乗り切ったありがたい役者であると、その運にあやかろうという者もまた多かった。
紫乃はどうやって芝居を観にいこうかと、頭をひねっていた。
離れ座敷で源之丞とふたりでいたところを見つかって以来、祖母の辰の監視はさらに厳しくなった。
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さりげなく装ってはいるが、辰に命じられて紫乃を見張っているようだ。
でも紫乃は、なんとしても源之丞の芝居が観たかった。
そして、源之丞に会わねばならなかった。
「楓。おれはどうしても、源之丞殿の芝居が観たい」
祖母の姿が見えなくなった隙に、紫乃は楓をつかまえて話を切り出した。
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