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恋心と不穏な陰(三)
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そう言うと、手を伸ばし、手の甲で優しく紫乃の頬を撫であげてくる。
伏せていた目を上げると、優しい目をして紫乃を見つめる源之丞がいた。
このように男に語りかけられることも、こうして男に触れられることも初めてだったが、少しも嫌でなかった。
逆に源之丞の胸に縋りたいという熱のようなものがふつふつと沸いてきた。
だが、冷静さを保とうと必死に自分を律した。
このお人は役者だ。
どのおなごにもこうした振る舞いをするに決まっている。
こんなことで舞いあがってはいけない。
でも……
そのとき、座敷の外から大きな声が聞こえてきた。
「紫乃! あれほど、離れに行ってはならん、と言ったじゃろ!」
鬼のような形相の祖母が戸口に立っていた。
老体のどこにそれほどの力があるのか、紫乃の腕をつかむと、座敷の外に引っぱりだした。
「ばば様、痛い、離して!」
紫乃が訴えても、辰はねじりあげる手を離さない。
玄関先で用事をしていた楓を見つけ、「紫乃をよく見張っておくのじゃ、くれぐれも離れに行かせてはならん。わかったな」と言いつけると、ようやく奥に入っていった。
伏せていた目を上げると、優しい目をして紫乃を見つめる源之丞がいた。
このように男に語りかけられることも、こうして男に触れられることも初めてだったが、少しも嫌でなかった。
逆に源之丞の胸に縋りたいという熱のようなものがふつふつと沸いてきた。
だが、冷静さを保とうと必死に自分を律した。
このお人は役者だ。
どのおなごにもこうした振る舞いをするに決まっている。
こんなことで舞いあがってはいけない。
でも……
そのとき、座敷の外から大きな声が聞こえてきた。
「紫乃! あれほど、離れに行ってはならん、と言ったじゃろ!」
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「ばば様、痛い、離して!」
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